第5話 謎の女 前半
P.M23:46 品川駅改札口。
ミョッチ、美月、昴は仲間の帰りを待っていた。
駅は、いつもより物静かではあるが、人の出入りは多い。
「皆~~~ ただいま~~~。」
改札口から、ミョッチ達に向かって大きな声を出しながら思いっきり手を振っている綺麗な女性が小走りで来た。
通り過ぎる人も、その女性の美貌に思わず頬を赤らめて振り向いてしまう。
金髪ショートが似合う、目元はパッチリ二重、ぷくっとした綺麗な形をした唇。すらっとした体系に加えて、胸もかなり大きく、スベスベで透き通った白い肌。丸で、韓国アイドルやグラビアアイドルの様な美しい女性だ。体系が協調されたタイトワンピースが、彼女の魅力を更に引き立出せる。
「美来さん、お帰り~~~。」
美月が美来に抱き着くと、顔を胸に捺し付けながらほんのり香る美来の香水の匂いを嗅いでいる。
「なんだ、このカワイ子ちゃんめ~~~ たくさん、お姉さんに甘えなさい。」
「もう、美来さん本当に大好き。それより、またおっぱい大きくなった?」
「あははは~~~ 気付いたら、Hになっていたみたい・・・。」
「なにがどうしたら、こうなるんだ・・・。」
「美月ちゃんも一般から見たら、充分大きいじゃない。」
不思議そうに美来の胸をずっと触っている美月。
美来は、少し恥ずかしそうになりながらも美月の頭を撫でた。
「公共の場で君達は・・・」
「まぁまぁ。久しぶりなんだし。ほら、これあげる。」
困り果てたミョッチだが、昴にソーダ味の飴をもらい口の中に入れる。
昴は、美味しそうに飴を舐めるミョッチの姿を微笑ましく見ている。
「騒がしいのがいると思ったら、ミョッチ達じゃないか。」
続いて、クールな声でツンツン頭の男が改札に出て来た。
ツンツン頭の短髪、たれ目、ムキムキ筋肉で細マッチョ、穏やかで明るい笑顔が素敵な男性だ。
「オッスオッス、達滉。」
「オッスオッス、ミョッチ。」
「男同士の」
「男同士の」
「腕組にらめっこ~~~。」
ミョッチは、達滉と再会した途端にらめっこを始めた。
両者どちらも引けを取らない良い勝負が繰り広げられる。
「はははははは~~~!! 腕は鈍っていないようだな。ミョッチ。」
「達滉こそ。相変わらずだ。」
昴は、「お前らもか~~~」と思いながら困った様子を見せる。
西商店街跡地
謎の少女が電柱の上から、誠司達を見下ろす。
夜風が、彼女のさらさらとした綺麗な髪をなびかせている。
「思っていたより、弱そうだな。」
「誰だ?」
「まぁまぁ。今、降りて来るから。」
電柱の上からゆっくりと飛び降りて瓦礫に着地すると、周囲を見渡す。
「ふ~~~ん。影如きでこんなに苦戦してたんだ。」
「誠司、気を付けろ。こいつ、人間だが人間じゃない何かだ。」
「見破るの早過ぎでしょ。でも、私チャラ男嫌いなんだよね。」
謎の少女は、鋭い目つきをしてこちらを鋭く睨み付ける。
流馬が素早く動いて、鎌を振り回して謎の少女の首に切りつける。しかし、鎌は首に届いていない。
動揺する流馬。
ニヤニヤ不気味に笑う謎の少女が、流馬に囁く。
「いきなり、か弱い少女に襲い掛かるとか結構大胆だね。ちょっと、びっくりしたにゃん。」
「か弱い? どす黒いの間違いだろ。」
「はぁ? 見た目で女の子決めつけんなよ。チャラ男風情がよ。」
謎の少女が、首を右側に曲げながら、静かに怒る。
次の瞬間、流馬の右手が乱雑に切られた。急いで、流馬は謎の少女と距離を取るが何がどうなっているか理解が出来ない。
謎の少女を見て見ると、爪に付いている血を美味しそうに舐めている。血が付いている、右手の人差し指の爪と中指の爪を見ると爪の長さが先程とは違い、縦に大きくなっている。
「やっぱ、物足りない味だな~~~。 もっと、こう自然に涙が出る様な血には出会えないもんかな。」
「相変わらず、悪趣味な女だ。」
流馬は、大きく荒らい声を出す。再び、走り飛びながら謎の少女に鎌を振り下ろした。
「お前、しつこい。もう、飽きた。」
流馬の後ろから、長い爪が持ち主の所に戻るかの様に現れ、流馬の両肩と脇腹を一瞬で切り付けられた。
痛みに耐えながら、流馬は諦めずに鎌を振り下ろそうとするが、謎の少女に体を数ヶ所刺されてしまう。口から血を吐くと、謎の少女は流馬を思いっきり蹴り飛ばし、瓦礫の山に叩き付ける。
謎の少女は、即座に5本の指の爪を伸ばして切り離すと、流馬の手首、足首、首を切り離した爪で固定する。
「良い子だから、そこで大人しくしていてね。動いた瞬間、その喉仏を切って一生喋れない様にしてあげるから。」
清々しい笑顔をしながら、ウィンクをする謎の少女。
左手に少し痛みを感じたので自分の手を見て見ると、流馬に切り傷を付けられていた。
切り傷から出た血を舐めながら、誠司の所に近づいて来る。
「そういえば、自己紹介がまだだったよね?」
「メシア。よろしく、誠司君。」
一瞬、瞬きをしただけなのにメシアはすぐ目の前まで近づいていた。
誠司は咄嗟の判断で、後ろに飛んで距離を取る。
「なんで逃げるの? 夜は、長いんだよ。私の体自由にしていいんだから、楽しもうよ。」
「中坊の体見て興奮する程、ロリコンじゃないんでね。まだ、おてんば娘の谷間の方がましなんだわ。」
「ひっっっど~~~い。せっかく、新しいノースリーブのへそ出しの服着て来たのにさ。」
この女、人間なのか? 宇宙人と似たような気配はあるのに見た目は、人間そっくり所か人間その物だ。サイコパスとは、また違う。何か、別の人種みたいな感じだ。
近くから、パトカーのサイレンが聞こえる。
徐々に、パトカー2台がこちらに近づいて警察官が計4人降りて来る。
「なんだこれ・・・。」
「酷い有様だ。」
「そこの君達、何をしている。こっちに来なさい。」
警察官が、メガホンを使いながらこちらを呼んでいる。
「うるさい連中だ。目障りなんだよ。」
機嫌を損ねたのか、メシアの声のトーンが一気に小さくなった。
指の爪を4本、警察官の元に伸ばす。
次の瞬間、伸びた爪が警察官全員の首を強く絞めて圧迫させる。警察官は、苦しみながら全員気絶をしてしまう。
「お前、今何をした?」
「そう、怒らないでよ。殺していないんだから。私はね、無駄な殺しはしないの。楽しみが減るからね。」
「どうゆうことだ?」
「女の子に質問ばかりしていると、うざがられるよ。」
メシアのニコニコしていた顔が一瞬だけ、狂気の目に変わった。
誠司は、殺気を感じたのか心臓の鼓動が早くなった。
次の瞬間、メシアは爪を伸ばして誠司の体を縄の様に縛り、誠司を連れて飛んで行った。
「おい、どこ連れて行くんだ?」
「また、邪魔者が入らない様に広い所へ移動するのさ。もっと、楽しもうよ。二人っきりで。」
誠司は、地面へと叩き付けられた。どうやら、広めな公園に落とされた様だ。
辺りを見て見ると、虹色の滑り台やクジラやイルカのスプリングなど様々な遊具が設置されている。
メシアが、近くにあるロープスライダーで楽しそうに遊んでいる。
「夜の公園大好きなんだよね。誰もいない薄暗い空間が、若い男女の関係を一層麻痺させるみたいでさ。」
「私達もさ、麻痺しちゃおうよ。」
「絶対、嫌だね。」
「こんな可愛い女の子の誘いを断るなんて、悲しいなぁ・・・。」
ロープスライダーから降りて、誠司の前に現れる。
誠司は、先程の狂気の目に驚いたのかメシアに、すぐさま攻撃を仕掛ける。矢を9発放ち、メシアに近づいた所で矢が爆発する。
こいつ、本当にやばいかもしれない。なんでか分からないけど、今のうちにけりをつけておかないと後々厄介になりそうな気がする。
「今、私が厄介な敵になりそうって思ったでしょ?」
煙の中から、メシアが出て来たが無傷だった。
指の爪を3本伸ばして、誠司に襲い掛かる。
それを構えてる誠司だが、爪が目の前から消えた。
動揺している誠司に、上から3本の爪が現れ、左肩から誠司の体を深く切った。まるで、日本刀で切られた様な感じだ。
切られた体から、血が溢れ出している。
「どぉ? 切れ味抜群でしょ。」
「くそ・・・」
「あたしの爪、気になるでしょ? この長くて綺麗な爪はね、自由自在に動かしたり好きなだけ伸ばせるのよ。おまけに、さっきみたいに爪を切り離したり、刀みたいな切れ味になる優れもの。」
メシアは、嬉しそうに自慢げに語っている。
自分の爪に付いている誠司の血を眺めながら頬が赤くなっている。
「誠司君の血って、美味しそうだよね。」
メシアが舌を出すと、自分の爪に付いている誠司の血を舐め始めた。次の瞬間、メシアの脳内の何かが騒ぎ出した感覚が走った。
思わず指を頬に触りながら、涎を垂らして膝から倒れてしまう。
「はぁぁぁん、、、 本当に、美味しくてほっぺがとろけて落ちてしまいそうだよ。それに、めちゃくちゃ濡れちゃった。」
「もっと、頂戴よ。一滴残らず吸い尽くしてあげるからさ。」
興奮が抑えられないメシアは、誠司に飛び掛かる。
誠司はそれを避けようとするが傷口が深く、上手く体が動かない。
メシアが誠司の首を掴み、軽く宙に投げると爪は出さずに拳で、誠司の体を何十回も殴りつける。傷口から更に出血が広がり、返り血がメシアに付着する。
口から血を吐きそうになる誠司。誠司の胸倉を掴み、口から出る血をキスをして、自分の体内に取り込む。
プルっとしたメシアの唇に、誠司は感触を思わず覚えてしまう。メシアは自分の舌を無理矢理、誠司の舌に絡ませて残りの血をも舐め尽くす。
「あぁぁぁぅぅぅん、本当に、美味しい。」
「誠司君、ごちそうさま。」
口の血を吸い尽くしたのか、誠司を投げて蹴り飛ばす。
メシアは舌を出しながら、体外に出た血を起用に口に入れる。
近くにあるアートの絵が展示されているトンネルまで蹴り飛ばされた誠司は、満身創痍になりながらも少しずつ立ち上がろうとする。
メシアは満足気な表情をして、返り血を舐めながらトンネルに向かって歩いて来る。
「凄い、まだ立てるんだ。」
「こんな変態、見過ごせるかよ。」
「その変態にベロチューされて、感じていたのはどこの誰だっけ?」
「無理矢理、やって来たんだろうが。」
「人間、皆変態なんだから素直に喜びなよ。そういうの、本当にダサイよ。」
メシアが軽蔑した目をしながら、トンネルに入った瞬間だった。天井が突如、閃光を放ちトンネル全体が眩しい光に包まれた。
流石のメシアも、目を開けることが出来ない。片目を頑張って少しでも開けようとするが、光が眩しすぎてすぐに閉じてしまう。
次の瞬間、爆弾の矢がメシアを襲う。
トンネルの中が見渡せる様になると、誠司はトンネルの外へ出ていた。
メシアは、頭や肩から血を流しながらトンネルの中から現れた。
「誠司君、やってくれたね。完全に油断しちゃったよ。」
ケラケラ笑いながら、メシアは喜んでいる。
血塗れなのに、笑っていやがる・・・ だけど、先程の戦いで流馬が閃光弾を使ってくれたおかげだ。閃光弾をイメージした矢が出来た。これが無かったら、俺は死んでいた。
「鼻血は稀に出すけど、こんなに血を流したのはいつ振りだろうね。」
「嬉しいよ。特別に良い物を見せて・・・あ、げ、る。」
メシアは、近くにある電柱の上まで飛ぶ。可愛らしい笑顔を浮かべながら、小声で一言何かを唱えた。
「星装」
辺りの空気が突如、突風となってメシアを包み込み始めた。
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