第4話 影 前半
ここはどこだろう。
目を開くと、辺り一面にノイズが発生している。数秒目を開いていると、少しずつではあるが光が入って来たので辺りを見渡す。すると、小学4~5年生位の女の子と遊園地へ遊びに来ていた。
女の子ははしゃいでいるのか、かなりテンションが高い。脚も早くて、中々追い付けない。
ぼやけて見えにくいが、奥には大人の男女がこちらに手を振っている。
「ねぇ、待って・・・」
急いで、少女を再び追いかける。
観覧車の入り口辺りに来ると、走っている少女が急に立ち止まり後ろを振り向いた。
一瞬、瞬きをしてしまう。
再び、少女の顔を見て見ると、黒く落書きをしたみたいに顔が滲んでいた。
「あれ? 誰だっけ?」
辺りが、再び真っ黒になってしまった。
すぐ側から騒がしい声が聞こえる。
そっと、目を開けると誠司とミョッチがお菓子を食べながら、テレビゲームをしていた。
この前の傷が綺麗に治っている。あんなに、大怪我していたのに・・・
ミョッチが、治してくれたんだろう。
跡形一つ残らないのは、女性にとって本当にありがたい。
「誠司、そこさっきも行ったじゃん。」
「祠が近くにあるんだよ。」
「なるほどね。」
リンゴジュースを新しくだそうと、ミョッチが立ち上がり冷蔵庫に向かおうとすると、美月が起きている事に気付く。
ミョッチは喜びながら、誠司に飛び着く。
「誠司、美月起きたよ。怪我も大丈夫そう。」
「おー良かった。丸々2日寝てたんだぞ。」
誠司もゲームを一時停止して、美月が寝ているベットの隣に座る。
動揺しながら、美月が口を開いた。
「ここ、どこ?」
「俺の部屋。」
「この、ベッドは?」
「俺のベッド。大丈夫。シーツも枕も来客用の奴に変えているから。」
美月が状況を理解して顔が赤くなった。
そして、思わず誠司の頬を思いっきり平手打ちする。
誠司は、ぐるぐると回転しながら玄関先まで飛んで行った。頬は、赤く腫れ上がっていて目から涙も出ていた。
ミョッチが、突っついてもピクリとも動かない。
「最低。私の初めてのお泊りは、声優の某Tみたいな紳士なイケメンって決めているのに夢ぶち壊された~~~。」
美月が、顔を赤らめながら布団の中に潜る。
出かけていた壮也が、戻って来た。玄関のドアを開けると、誠司が涙を流しながら倒れている事に気付く。
「ただいま。ってそんな所で何しているの?」
「もう、あの女嫌だ・・・」
気を取り直して、誠司の部屋にあるテーブルに全員座る。
テーブルには、スナック菓子やチョコレートの他にコーラ、フルーツジュースなどのジュース類が置かれている。しかし、美月は2日間何も食べていなかった反動から、一人でかなりの量のお菓子やジュースを飲み食いしている。
「あーこれが、僕が思い描いていた女性とのお菓子パーティーなのか・・・ ガサツな食べ方だ・・・」
「理想と現実なんてこんなもんだ。」
「知りたくなかった。こんなに食べているのに、どうして美人でスタイル抜群なんだろう・・・」
「全部、胸に吸収されているんじゃないか。まぁ、こんなガサツな奴を好きになる男の方がレアだぜ。」
「レアってどれ位レアなのかな?」
「モンスターパワードで例えたら、スペシャルモンスターレア位じゃね?」
「それ、結構なレアじゃないか。」
誠司と壮也がぼそぼそと話していると、会話の内容を飲み食いしながら聞いていた美月が二人をフルボッコにした。
誠司と壮也は、身ぐるみをはがされてパンツ一丁で正座させられた。
ミョッチが、その光景を見て少し呆れている。
「大切な話をするから、早く服を着て・・・。」
「美月が、こんなに食欲があるのも含めて説明するから。」
「大切な話は4つ。」
1つ、僕(ミョッチ)について。
・僕は、遠い星から来た宇宙人だ。僕がいた星は滅ぼされた。これは、宇宙人の所で詳しく話す。
・ここに来た目的は、『繋ぎし者』達と共に、宇宙その者を支配しようと企む『支配者』を倒す事。
・僕の能力は、結界の出し入れ、記憶の書き換え、傷の治癒、力の発動、願いこの5つだ。
① 結界の出し入れは、もう見せたから省くね。壮也は、誠司と美月から聞いて。
② 記憶の書き換えは、主に宇宙人との闘いを一般人に見られた時や戦い後の崩壊したビル等の後処理で書き換える。まぁ、事故に見せかけるって事だね。
③ 傷の治癒は、文字通り傷を治す事だ。傷を治すって言うよりは、傷が治った皮膚を未来から持って来て現代の傷に付着させるんだ。付着させるのに、かなりの体力とカロリーを消費するから、寝たきり状態が数日続いたり栄養を必要以上に欲する様になる。今回の美月が爆食するのも、大怪我をしたからその分栄養を吸収しなければならないんだ。
④ 力の発動は、簡単に言えば君達の力を解放する事だ。
⑤ 僕の種族は、かなり特殊でね。条件次第で、パートナーの願いを叶えられるんだ。後で、詳しく説明するね。
2つ、『星座人』と『繋ぎし者』について
・『星座人』とは、星々を繋いだ星座と星の欠片に選ばれた者のこと。それ以前は『繋ぎし者』と呼ばれていたんだ。
・『星座人』と『繋ぎし者』は、同じ存在だ。
違いがあるとしたら『繋ぎし者』は星々を自由に繋げて力を得る。自由さ故に、形は無いが多彩な攻撃が可能だった。
それに対して『星座人』は形ある物を星々に繋げたことにより、より強力で安定した力を得た。
・元々僕の星にあった星の欠片が、大昔に地球に飛来してそれを受け取った人々が譲渡しながら、今も君達に伝承されているんだと思う。なんで、星の欠片が星座の形となって誠司達の体内で健在しているのかは僕も分からない。1つ言えることがあるとしたら、大昔の人間と星の欠片が何かしらの契約を結んで、『繋ぎし者』が『星座人』となって強大な敵を倒したんじゃないかな。
・星座人は、星の欠片の数と同様に12人いる。
・星座の力を解放すると、空を飛んだり、体が通常の100倍頑丈になったり、自分の思い通りに体が動かせる。
・星座人は、火、水、雷、風、氷、霧、地、光、闇、これらの属性が自由に使える。
それは、星座に選ばれた星座人が生命が宿る地球で育ったからこそ扱える力だ。
3つ、願いについて
・契約を交わす前に、願いを1つ叶えるって言っただろう。この世界のルールに沿っている願いなら、大体の事は叶えられる。でも、ルールがいくつかある。
①すぐに、願いを叶えることは基本的に出来ない。だけど、例外はある。
例えば、誠司みたいに宇宙飛行士の夢があるとするだろう。これは、段階を踏んで叶える夢だから確実に叶えられるけど、本人の努力も必要となる。まぁ、知識や実力を確実に身に着けるれるって考えて良いかな。
例外は、お金関係かな。宝くじやギャンブル関係の夢は、運を引き寄せるだけだから簡単に叶えられるし一生遊んで暮らせる。
②人を生き返らせる、何かを元に戻す、時間を遡るとかは出来ない。特に、過去を戻す行為と未来を直接見植える行為は、全宇宙に影響するから絶対ダメなんだ。宇宙の唯一の弱点は、時間だからね。
③ 絶対に後悔しない為に自分の願いを叶える事。壮也みたいに、弟の病気を治す願いも出来るけど、心の底から本当に大切な人にしか発動しない。
4つ、宇宙人と『支配者』について
支配者
・僕の星を滅ぼしたのは『支配者』のボス『創生神』。奴の目的は、全宇宙を我が物にして新たな神になること。だから、その目的を邪魔しようとする者が現れたらその星を丸ごと滅ぼし、全てを根絶やしにする。
・『支配者』は、『創生神』と直属の配下に位置する『六創龍』を中心にまとめられている。
・僕が知っているだけで、500の銀河と100万の星が消滅している。
宇宙人
・『六創龍』の配下にいるのが、君達が戦っている宇宙人だ。
・宇宙人のタイプにも色々ある。
寄生型、生物型、植物型、怪物型、未確認 型、その他様々だ。
・宇宙人の目的は、様々だけど主に人間の脳を回収したり栄養源にしている事が多い。
・宇宙人は、人間の私生活にも溶け込んんでいる者もいる。
・人間の脳みそは、宇宙人にとってかなり高価で美味しいみたい。でも、色んな宇宙人が挙って特定の脳みそを食べるなんてありえないはずだ。噂では、この地球のどこかで人間を解体して売買している施設があるみたいだけど、何も情報がない。
『星座人』は『支配者』を倒せる唯一無二の存在なんだ。星座は、いくつもの星々を繋げて1つの力を宿した言わば星々の線路だ。
再び星々を繋げる者達が現れた事で、新しい道しるべとなり星の欠片に力を宿したに違いない。
これは、宇宙全体の奇跡と言っても良いだろう。
ミョッチの説明が終わったが、情報量が多く壮也の頭がパンクしている。
その姿を見た誠司が提案する。
「後で、紙に書いてやってくれ。」
「それがいいよ。正直、私も何度か同じ事聞いているけど100%は理解していないもん。」
ミョッチが少し困り果てた顔をしながら、再び口を開く。
「君達が、どれ位理解しているのか不安だよ。」
「要は、ドラゴンが出るボールを7つ集めてなんでも願いを叶えたり、13人のヒーローがバトルロワイアルして勝ち残って願いを叶える様な、万能な機能はないってことは分かった。」
「酷過ぎる・・・」
頑張って説明したのに、理解し切れていない誠司達に絶望しながらお菓子をやけ食いする。お菓子を、喉に詰まらせてしまい心配した誠司がオレンジジュースを渡す。ミョッチがオレンジジュースを飲み干すと、ミョッチの背中をさすりながら誠司が口を開いた。
「スケールでかすぎて実感湧かないし難しいことは分からないけどさ、ミョッチの母星を滅ぼした親玉が現れたら、手厚くおもてなししてやろうよ。」
誠司が、ニコッとした笑顔を浮かべる。
ふと、誠司の左手を見て見ると拳を強く握っているのが見えた。誠司も戦う敵が明白に見えて来たのだろう。
壮也が我に返るとコーラを飲みながら、ミョッチに問いかける。
「他の星座人には会えないの?」
「ごめん。ごめん。言い忘れていたよ。明日の夜、会いに行こう。」
「急だね。」
東京都品川区。立会川駅周辺。
ここは、昭和時代から現代まで長く愛され続けているレトロな街並みが広がっている。昔から人々の活気が溢れて、商店街周辺は毎日の様に人で賑わっていた。今日の午前中までは。
昼時になると同時に、突然日陰から影の様な物が一瞬で商店街周辺に広がり人々を飲み込んだ。
買い物に来た住人から警察に連絡が入り、周辺を操作するが手がかりが1つもない。店内を捜査するが、金品や貴重品が盗まれてはいない。
しかし、1つ不可解な点があった。消えた人達の衣類や装飾品は、そのまま脱ぎ捨てられていたのだ。
警察官の会話だけが、静かになった商店街から聞こえて来る。
「この状況、3日前にもありましたよね・・・」
「あぁ、近所の高級住宅街で200人程が行方不明だ。しかも、別件で殺人事件が発生している。」
「確か、近くのラブホテルで起こった奴ですよね? 頭を貫通して即死だったらしいですけど、銃で撃たれたんですかね。」
「さぁな。」
警察官が話していると、突如影が現れ一瞬で警察官が消え去った。
P.M8:00
品川駅を出て、北品川方向の国道15号沿いにある脇道を入り、人通りが過ぎた住宅街のすぐ近くにそのBARがあった。
外観は、プラネタリウムの様な水平型の形となっていて、青い照明が外観全体を照らしている。
「なんか、かなりロマンティックっと言うか・・・」
「完全に、女の子を落としたい時に使いたいお店っぽいよな・・・」
BARの壁を見て見ると、様々な海の生き物が小さく描かれて、上を見渡すとうす暗くなった夜空に星が描かれていた。
住宅街のすぐ近くにあるのもあって、外観の照明は暗めになっている。しかし、その暗めの照明が夜の青い海と夜空に光る星を彷彿させる。
「なに突っ立ているのよ。入るわよ。」
美月とミョッチは、何事もなくBARに入っていった。それを、追いかけるかの様に誠司と壮也も慌てて中に入る。
入り口に入ってすぐ、薄暗い円形の空間にアマクサクラゲが出迎えてくれる。もう一つのドアを開けた瞬間、外とは違う空間が広がっていた。
BARの空間は、まるで、夜の海に入ったと思わせる空間が広がっている。
天井を、見渡すと星空が無数に広がっている。いくつか黄緑色に光っている星があるが何なのか分からない。
カウンターには、強化ガラスで出来た水槽のテーブルが広がって様々な海の生き物が泳いでおり、10人程が座れる。
円形のテーブル席も10席程用意されていて、カップルや友人同士で気投げなくお酒を楽しむ事が出来る。テーブル席もカウンターと同様で、強化ガラスで出来た水槽のテーブルが並んでいて、席ごとに違う海の生き物を楽しめる様になっている。
しかし、毎日賑わっているはずのBARなのに誰もいない。
誠司達がカウンター席に座ると、奥から髪の長いクリーム髪で焦茶色の肌をしたイケメンが現た。
見た目は、女性の様な整った顔立ちと茶黒に近い肌をしていて、髪は胸辺りまで髪が伸びている。おっとりとした優しそうな目元は、水色の様な美しい色をして、女性だけではなく男性すらも虜にしてしまうルックスをしている。
「ミョッチ、美月ちゃん。いらっしゃい。」
「ヤッホー。昴さん久しぶり。」
「昴、久しぶり。」
「この2人が新しい星座人かい?」
「そうだよ。」
「力谷昴だ。よろしく。」
「こ、こちらこそ。」
昴は、誠司と壮也に握手するとニコッと爽やかな笑顔を見せた。
ミョッチは、カウンター席の椅子を回しながら口を開く。
「それより昴。お店に誰もいないけど、ついに女たらしってお客の女の子達にばれて閉店に追い込まれた?」
「人聞きの悪い事言わないでくれよ。3日程ここを開けて戻って来たらこの有様さ。」
「なにそれ、どゆうこと?」
「分からないけど、俺が品川を出てその日に近所の高級住宅街で集団疾走があったんだ。そして、今日の正午頃に近くの商店街でも同様の事件が起きた。」
「やばいじゃん。早く調査しないと。」
「タイミングよく、美月ちゃん達が来てくれて良かったよ。多分、まだ商店街にいるはずだから二手に分かれて行動しよう。」
「久しぶりに昴の生絞りジュースが飲みたかったけどお預けだね。」
ミョッチは、昴が作るジュースが大好きで半分それ目当てで品川に来たのだが、状況が一変してしまい凹んでしまう。すると、昴が冷蔵庫からキンキンに冷えた飲み物と4人分のコップを用意する。
コップに注がれたのは、ミョッチが飲みたがっていた生絞りのフルーツジュースだ。
しかも、一番お気に入りのオレンジジュースでミョッチの目は輝いている。
誠司達は、少しずつ口の中にオレンジジュースを入れる。なんだこれ。めちゃくちゃ美味い。オレンジ果汁と共に粒々が口に入り、粒々を噛むと果汁が口の中に広がり、甘味が引き立ちよりフレッシュ感が増す。
「これから調査するのに、何も食べなかったら力入らないからね。5分で作るからそれ飲んで待ってて。」
フランスパン1つを8等分に分けると、チーズを多めにかけてオーブンレンジで2分半程焼く。その間に昴は予め作っておいた、まかないのカルパッチョを冷蔵庫から取り出すと4人分の皿に分ける。
香ばしいいい香りがするのを待っていると、入り口から誰かが入って来た。
高身長でかなりチャラそうな男性だ。天然パーマのたれ目で、それに合うお洒落眼鏡をかけている。服装はストリート系で右手にスケートボードを持っている。そして、その見た目に似合わない棒キャンディーを口に加えている。
「ったく、のんびりしているんじゃねぇよ。」
「おぉー、流馬じゃん。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます