だから君は

天塚春夏

プロローグ

 それは、語り継がれた物語の一端。

 忘れることは許されない、優しき愚者の物語。

 報われない彼と救いたかった彼らが紡いだ世界の物語。

 あるものは、彼のことを最も慕う男の子だと答えた。

 あるものは、彼のことを底抜けのお人好しと呼んだ。

 あるものは、彼のことを己の価値の分からぬ愚か者と呼んだ。

 あるものは、彼のことを慎ましやかな男だと言った。

 そしてあるものは・・・、

 あそこまで我を通し、回りの見えていない哀れで私の愛した人間は始めて見た。と、そう言った。

 これは失敗した物語。彼らが彼を失うまでの物語。

 そして・・・、彼ら彼女らが望むのならば、彼を取り戻すための前日談である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る