アメリカに降り立ったら、空港で武装した警官達に銃を突きつけられた話②

 無事、ロサンゼルス国際空港に到着したN子は、隣に座っていた白人女性に「また会えると良いですね!」と挨拶をしてから飛行機から降りた。


 N子はアメリカ人の後をついて歩いていたが、途中で日本人観光客が入国審査の列に並んでいるのを見て、大変そうだなぁ……と思いながら歩く。


 N子はアメリカのパスポートも持っているので、手続きはとても楽だった。あの列に並んで厳しい入国審査を受けるなんて想像しただけで胸焼けしそうだった。


 諸々の手続きを終え、大きな荷物を持って父親の遺骨を引き取り、父方の親戚が待つロビーで合流する――そのはずだった。


「freeze‼︎」


 一緒の飛行機に乗っていたアメリカ人達が先に出口に出た瞬間、何人もの警官達に銃を突き付けられた。


 到着ロビーでは恋人とキスをしている人や家族との再会を喜んで抱擁をしている者達が大勢いたが、何が起こったのか分からず、全員が警官達に戸惑いの視線を向けている。


 N子も何が起きているのか分からず、恐怖で立ちすくんでしまった。すぐ隣にいた白人女性も顔面蒼白になっており、近くにいた中国人も強張った表情になっている。空港内は異常な緊張感に包まれていた。


「Get down on your knees‼︎」


 銃口を向けられたまま、床に膝を着けと命令された。乗客達は互いに顔を見合わせて、警官の指示通りに次々と膝を着き始める。勿論、N子もそれに従った。


 それから暫くの間、睨み合いが続いていた。だが、厳しい表情をしていた警官達が何の前触れもなく銃を下ろし、いきなり満点の笑みを浮かべた。


「this is training‼︎」


 警官隊の言葉を聞いて皆が目を丸くする。警官隊達の話を聞くに、ハイジャック犯達を制圧する為に行われた特別訓練らしい。


 ワールドトレードセンターのような悲惨なテロを二度と引き起こさない為に行われた訓練だったようだが、乗客達やその場に居合わせた人達に何の説明もないまま訓練を行うだなんて、さすが自由の国アメリカである。


 後にN子はこう語っていた。


「あれさー。私が英語を聞き取れるから良かったけど、慣れてない人だとパニックを起こしちゃうよ。それくらい心臓に悪かった」


 あんな経験は二度とごめんだと語っていたN子なのでした。

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