嫌なことは早朝に
第15話 そして、翌朝
或作家氏は、その日外で軽く飲み、ビールなどの買出しも行った。
一方の大学教員の女性は、ホテルの自室で自らの仕事を行っていた。
作家氏は、早めに帰ってシャワーを浴びて早いうちに横になった。大学教員の女性も、この日は割に早くベッドに入ったという。
朝の5時過ぎ。
この時期のこの街は、徐々に明るくなる時間帯。
この頃になると二人とも起きている。
作家氏は、執筆の仕事中。実は酒類だけでなく、この日の朝飲むコーヒーも前日のうちに仕入れている。ペットボトルの珈琲を飲むための氷を取りに廊下に出たところで、近くに泊っている女性と鉢合わせた。
「せーくん、あなたもう起きてお仕事?」
「せやねんメル姉。いやなことは早朝にやるに限るからね」
彼女もまた、氷を取りに出てきていたのである。
「それじゃあ、こうしない? 6時くらいから2時間か3時間を目途に、そちらに行くからそこで動画撮影しましょうよ」
「いいな、それ。それで、いやなことを早朝に片づけられるときたものや」
「それ、どういうこと?」
「某園が移転してから先が、次の話につながっていくからね。正直、そういう話は酒飲んでやるのも馬鹿らしいからな」
「なるほど、さっきの「いやなことは早朝」を地で行きたいわけ?」
「まあね。ほな、少し休んで、6時から始めよう。6時ピッタリにうちに来てよ」
「わかった。じゃあ、私も身だしなみ整えていくから」
「わしも、着替えて仕事する。この格好でやるわけにもいくまい」
かくして2名の紳士淑女は各自の部屋に戻り、準備を始めた。
そして、朝6時。
大学教員を務める青い目の女性が、作家氏の部屋を訪れた。
「メル姉、ほな、始めよう」
作家氏、いつになく「仕事」を前面に出している様子。
「いつものせーくんとかなり違うね」
「こういう話だから、余計にそうしないと荒れかねないからよ」
「わかった。じゃ、始めよ」
彼女はそう言って、パソコンの動画スイッチを入れた。
話は、某園が郊外の丘の上に移転した時から始まった。
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