第13話ちゃんと休んでるよ、魔王ちゃん



俺はレイナとそれからグリ子と共に王都までやってきた。


移動に使うのはテレポートなどではない、レイナたちに倣って馬車である。


新しく生まれ変わった狂犬グリムだけど前の狂犬の生まれ変わりと言われても頭に疑問符が浮かぶので俺はグリ子と呼ぶことにした。


そんなグリ子が馬車の窓から外を見ていた。


「わ〜。タクト様。見てください。人間さんたちがこんなにいますー」


そんなことを言いながら人間を見ていたグリ子。


狂犬も丸くなってしまったようだ。


それから俺はレイナにもう一度聞いておくことにした。


「日程の確認をもう一度行いたいのだが」

「はい。明日父上に挨拶をしにいきたいと考えております、結婚相手のご紹介、ということです」


ポッと顔を赤らめて頬を両手で挟んでた。


「もちろん、話は通してあるんだよね?」

「はい。通してありますよ」


それなら話は速いだろう。


予定通りなら3日もあれば魔王城へ帰れるはずだ。


「今日はこれからどうするつもり?」

「デートしましょう」


「まぁいいよ」


というわけで、今日はレイナとデートすることになった。


「タクトさん。これおいしいんですよ」


レイナの案内でこの王都の名物料理を食べたりしていた。


「どうですか?」


「うん、美味い」


俺がそうやってデートを楽しんでいたところだった。


(見られてるか?)


さっきから視線を感じていた。


人混みに紛れて、何人かのヤツらが俺たちを見ているような視線。


(一応。友好関係を築かないといけないし、先手を打てないのは残念だが)


まぁ、見られているということは念頭に置いて俺は引き続き買い食いなんかを楽しむことにした。


「レイナ。いつもこういうふうにこの王都は賑やかなのか?」


「いえ、今日は特別ですよ。人と魔王軍の友好関係が結ばれる記念すべき日なので王都を挙げてちょっとしたパーティみたいになっているのです」


どうやら俺たちの事は既に王都全体に知れ渡っているらしい。


と、なるとだ。


(なるほど。俺たちのことをよく思わない奴がいるかもってことか)


正直言っていつまでも見られているのはあまり気分が良くない。


(どうせこいつらも俺たちの結婚式を邪魔しに来た、みたいな奴らだろう)


「なぁ、レイナ。あっちの方にもなにかあるのか?」


俺は細い道の方を指さした。


「ありますけど、いわゆる裏路地になっていてたまーに事件があったりするのですよ」

「たまにでしょ?」


俺はレイナを連れて裏路地に入っていくことにした。


細い道だった。


今まで歩いていたのが大通りで人が何十人も横に広がって歩けるくらい道幅があったのに、こちらは3人がせいぜい、と言ったところだ。


その道を進んでいると、やがて予想していたように声をかけられた。


「よう。おふたりさん」



「用件だけを簡潔に話すといい。さきほどから俺たちを尾行しているのは知っている」



「?!」

「なっ……?!」


男たちは驚いていた。


だが、それも一瞬のことだった。


「このガキッ!」


「始末してくれる!クソ魔王軍共が!」



バキッ!



俺は2人の男たちを速攻で床に寝転がした。


「すごいです。さすがタクトさん!」


(どうせ下っ端だろうけど一応聞いてみるか)


俺は男たちに聞いた。


「誰から指示を受けた?」


「黒い仮面のやつだ」


「黒い仮面?」


まったく身に覚えがないが。


「魔王軍のやつが人間の娘と結婚する。成立すれば友好関係が築かれる。それを阻止しろって金を積まれて頼まれたんだよ」


なるほど。


俺たちの結婚を止めたい奴らの陰謀か。


「それ以上の情報は?」


「分からねぇ」


「そう。なら行っていいよ」


「いいのか?」


「俺の気が変わらないうちにな。一応友好関係を結んでるからな。これ以上痛めつけるとまずいだろう」


「感謝するぜ。もう二度と手は出さねぇよ」


そう言って男たちはずらかっていった。


俺はレイナに目を向けた。


「このままもう少しくらいはブラブラしたかったが、どうやら狙われているらしいね。さっさと王城まで向かってしまおう」


俺達は念の為人通りの多い場所に移動してからレイナの伝手で馬車を呼び付けることにした。


すぐに馬車はやってきた。


馬車に乗ると王城まで向かった。


王城と聞いてすぐに思い浮かぶような城の形をしていた。


一応そこで立ってるとすぐに声をかけられた。


声をかけたのは騎士だった。


「レイナ様とタクト様でございますね?どうぞこちらへ。案内いたします」


俺は騎士の案内で王城の中へと入っていくことになった。



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