君と過ごした時間は嘘じゃない。(仮)
ほしレモン
第0話 君の衝撃発言。
あれって、涼じゃない?
涼というのは幼馴染で、小さい頃はよく二人で遊んだりしていた。
何度見ても、あれは幼馴染である。
中学が離れてしまい、最近は話もしていなかったが……。
まさか、同じ高校で再会するなんて。
周りは友達と一緒にいるのに、一人で、昇降口に向かって歩く姿。
昔から不愛想なことは知っていたが、私が知らない間になんというか……雰囲気が変わった。
その姿を見てドクンと心臓が大きくなる。
そう、私は涼のことが好きだ。
もともと私の両親が仕事で忙しく、家にいないことも多かった。
そのため、家にいないときの寂しさというものは、全て涼が埋めてくれた。
ときには、散歩に出かけて。
ときには、絵本を持ってきてくれて。
あるときは、おすすめだというお菓子を持ってきてくれて。
その時はまだ子供で、恋とかよくわからなかったけど、とても特別な人ということは分かっていた。
「ねえ、涼!」
一人でいるその姿に、久しぶりに話せるかな、という期待を込めて、自ら話しかけに行く。
駆け寄ると、涼はわたしのことを見て驚き、固まった。
「もしかして、分かんない?私、加奈だよ!」
久しぶりで名前を忘れたのかと思い、改めて名乗るも、返事がない。
「涼……?」
彼の瞳を見つめると、その目がかすかに揺れる。
「なんでここに」。驚きを含むその目が、そう物語っていた。
「お前が、なんで……」
久しぶりに聞いた彼の声が、耳に心地いい。
「私も○○高校なんだ!一緒だね!」
よろしくね、と微笑む私に、涼が冷たく言った。
「……お前とは関わりたくない。もう幼馴染でも何でもないからな」
「……っ、え?」
今、なんて……?
びっくりして固まっていると、彼はすたすたと歩いていってしまう。
――お前とは関わりたくない。もう幼馴染でも何でもないからな。
さっき感じたはずの心地よさが消えて、代わりに、背筋が冷たくなる。
ねえ、どうして……。
彼の、私を見下ろすあの目が、目に焼き付いて離れない。
あんな目で、私を見たことなんて、絶対になかったはずなのに……。
絶対に、何かある。
長年、彼と一緒にいたから、そんなことは分かっている。
それでも。
分かっていても。
――寂しいよ……。
私の高校生活は、最悪なスタートを切ることになった。
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