中心点:ミンちゃんの1次元探求〜完全版

白鷺(楓賢)

第1話 孤独な点

4畳半の部屋の隅、ミンちゃんは床に腰を下ろし、前に広がる真っ白な紙を見つめていた。この部屋は狭く、壁は古びていて、窓から差し込む光はわずかだったが、彼女にとっては無限の可能性を秘めた宇宙そのものだった。紙の上にペンを置き、彼女は一点を打つ。ただそれだけの行為だが、ミンちゃんの全存在はその一点に集中していた。


外の世界では、彼女のこの情熱は理解されない。学校では他の子供たちが彼女を「変わり者」と囁く。しかし、ミンちゃんは気にしない。彼女には、ペンと紙さえあればいい。点を打つことが、彼女にとってのすべてだった。


毎日、ミンちゃんは同じ試みを繰り返す。紙の中央に、できるだけ完璧な点を打つこと。何度も何度も練習を重ねる中で、彼女は気づく。この行為は、ただの技術の向上を超えたものだと。それは、自己と宇宙との対話だった。


点を追求することは、ミンちゃんにとって一種の瞑想のようなものだった。それぞれの点には、彼女の心の動きが反映されている。安定している日もあれば、不安定な日もある。しかし、どんな日でも、彼女は点を追求し続けた。その一点の中に、彼女は自分自身を見つけ、そして失うことができたのだ。


ある日、学校から帰ると、ミンちゃんは隣の部屋からピアノの音が聞こえてくるのに気づいた。新しい隣人が引っ越してきたようだ。初めは、その音楽が彼女の集中を乱すと感じた。だが、次第に、そのメロディが彼女の内面に響き、点を打つ行為に新たなリズムをもたらすことに気づく。


ピアノの音色を背景に、ミンちゃんは再びペンを手に取る。今度は何かが違った。点はただの点ではなく、彼女自身の一部のように感じられた。彼女は理解する。完璧な点とは、紙の上の単なるマークではない。それは、自分の内なる中心を見つけること。自分自身と調和することだった。


ミンちゃんは、もう外の世界の声に耳を傾けなくなった。彼女は自分の内なる声に従う。点を打つ行為を通じて、彼女は自分自身を理解し始める。そして、自分の世界が他人に理解されなくても、それでいいと受け入れる。

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