0−3

「やけに静かだと思ったら、理由はお前か?」



2階から俺よりもおっさんが降りて来た。



「いや……お前か…………」



この状態を何とかしてくれそうなおっさん。

それが出来るおっさん。

天使に見える。マジで。

めっちゃ目ぇ見開いて凝視してるけど、



「…………子育てって難しいな…………」


「…………お前の子じゃねーけどな……それに、慕われてんのは良いことだろ?…………慕われ過ぎてて、親離れ出来無くなってても…………」



目ぇ逸らすなよおっさん。子育て頼んだのお前だろおっさん。



「………………………………」ジトー


「………………………………分ーってる分ーってるから、んな目で見んな」



本当かよ。



「手続きだろ?脱退の」


「えっ!?」



ひっつき虫共が騒ぐ前に可愛らしい声が上がった。ありがたい。そろそろ堪忍袋がなそろそろな悲鳴上げかけてるからな。



「辞めてしまわれるんですか!!??」


ザワッ!!!



……何か空気まで驚かなかったか?気の所為か?

てか、そんな驚くことかね?



「まぁな。元々決めてたことだし、50手前よ?俺。そろそろ引退してもいー頃合いでしょーよ」



もう、この後はガタがくるだろうし。そうなって足引っ張る前に辞めたほうが身の為、周りの為。



「まだまだ全っっっ然若いですよっっっ!!!」


ウン!!!ウン!!!


「………………………………」


「それに!まだまだ全っっっ然お強いじゃないですか!!!!!」


ウン!!!!!ウン!!!!!ウン!!!!!


「………………………………」


……嬢ちゃんの発言に何故か周りの空気(ひっつき虫共を含む)が同意した気がするが……気の所為か?



「気の所為じゃねーぞ」



……心の声を聞くなよおっさん。恥ずかしーだろ?



「いい加減認めろ。てか、諦めろ。気付いてんだろ?」



……知らねーよ。あと、諦めたら辞めれねーだろーが。



「気付いてんじゃねーか」



…………………………。



「慕われてんのは良いことだろ?」 



…………前言撤回。ニィと意地の悪ぃ笑顔で強面がパワーアップしたおっさんはやっぱ天使には見えねーわ。



(…………………………んなの分ーってんだよ。けど……)



それでも、





「けじめは必要だろ?」






パーティーメンバーのガキ共ひっつき虫共を引き剥がす。


「嫌じゃねーよ」


そう嫌じゃない。


「嫌じゃやんねーよ」


俺はそーいう性格だ。


「けど、『これから』には持っていけねぇ」


大事だからこそ。余計に。


「俺の『これから』は真っ白だ」


引き剥がされて尻餅を着いたガキ共と視線を合わす。

大事だろ?目を見て話すって。


「それにお前等は巻き込めねぇ」


だって、


「お前等は『これから』じゃねーだろう?」


知ってるからな。


「もうすでに『進んでる』だろ?」


もう色づいてることを。真っ白させられねぇってことを。


「俺が『これから』の為にすることは一旦終わることだ」


捨てねぇし、置いてもいかねぇ。それでも終わることにはかわらねぇ。


「真っ白な『これから』を始めるのに」


だってこれ『これから』は、


『第二の人生』『これから』を始めるのには必要だろう?」




ただの我儘に過ぎねぇからな。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る