第6話 閑話・エリカ=オッサのとある未来
エリカ=オッサ。
魔石鉱山を持つ地区で領主代理をしている、領主はいないのか? といわれるとちゃんといる。
オージィ=オッサ伯爵が私の義父だ。
16歳でオージィ伯爵に買われ娘として育ててもらった。
お義父様。
最初は気に入れられるために話し方を変えた。
落ち着くように訓練もした。
食事の量は、その減らなかったけど……それでも伯爵の娘。それを裏切るわけにはと努力はしたつもりだ。
でも、無意味だったかもしれない。
あの人は人が嫌いなのだろう。
いいえ、人に興味がないのね。
そう思っていた……でも7年前に起きた災害、崩れる橋にいたエリカを救ってくれたのはお義父様だった。
下半身が麻痺したお義父様は、消えそうなロウソクになりはてた。
私は一つの望みをかけて当時王国に流通しはじめた魔法や魔道具の力を頼った、私一人では無理なので、若い時に知り合ったクラリス様の力も借りてだ。
クラリス様はお義父様……いえオージィ伯爵と旧知の仲であり、なおかつ第二王女で部隊長という異例の肩書を持つ優しい女性。
私の事を心配してくれていつも背中を支えてくれた人。
そのころは王国と帝国も正式に友好国となり魔法使いや魔術の技術も上がったからだ。
怪我が治りなんとか人の温かさを感じてもらいたかったのに、オージィ伯爵の趣味は魔道具。魔法に興味が移っただけだった。
鉱山の地下から魔物があふれ出ると、オージィ伯爵は領民の事を考えずに領民を巻き込む討伐命令をだした。
すでに何度も同じ事をしてる、と平然というオージィ伯爵。それはエリカも覚えている、娘になった時に行われた作戦で、町に行くとエリカにでさえ憎悪として恨みの目が向けられた。
今度こそそんな作戦は決行しないで欲しい。反対する私は王都にいきクラリス様を頼って鉱山地域に戻って来た時は領民の半分以上が魔物と一緒に居なくなっていた。
そこからだろう、鉱山ではなく魔石鉱山になったのは。
私が22歳の時に執事のマーケティさんが屋敷から出ていった。
手助けをしたのは私であり、その後の結末をしると涙が出た。
27歳……二年前にはそれまで一緒だったメイドであり親友、お姉さんであったメリファさんが屋敷からいなくなった。
私は泣きながらオージィ伯爵に詰め寄ったが、伯爵は私を見ていない。自分の好きなように生きるしか興味がないのだ。
森で泣いていると私の前に大きな卵が転がっていた。
上空を見ると大きな鳥型の魔物がぐるぐると回っていて卵を狙っている。私は必死に卵を守り、毎日その卵を見に行った。
半年も過ぎた頃だろう、卵から可愛い鳥が生まれ私は思わず抱きついた。鳥の名前はニールと言って、なんと喋るドラゴンさんだったのだ。
私はニールに色々と話、ニールも私に色々と話してくれた。なんでもニールによると、私からは暖かい匂いがすると言う事、なんでだろう?
そういえば小さい頃にニールに似た鳥……? を見たかもしれない。その話をしにニールの所にいくと、見た事もない人達がニールの体を切り開いていた。
倒れそうになる私、その集団の中に杖をつきながら魔石へ顔をつけるオージィ伯爵を見たときには思わず吐いた。
もうだめかもしれない。
何年も前からこれだけは使っては駄目、と思いつつ反オージィ伯爵の人達から押し付けられた毒薬。
私は毒を使った。
普段から食事を一緒にしないオージィ伯爵に毒を盛るのは普通では難しい。
新しく入った執事やメイドを信用しなく自分の食事は自分で作るようになったオージィ伯爵に私はたまには健康に。と作ってあげたのだ。
昼過ぎに様子を見るとオージィ伯爵はピンピンしていた。調合を間違えたのだろうか? そう思っていると血を吐きだした。
やった。
これで敵が討てる。
クラリスさんはこの事を知ったら悲しむかもしれない、でもごめんなさい。
最後にオージィ伯爵が集めていた魔導書に火をつける。
急いで屋敷からでると繋いであった馬へと乗る。
最後に崩れ落ちる屋敷を見て、自然にお義父様……と呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます