第3話 可愛い私

まずは指先から水を出すイメージをしてみると、本当に出てきたことに驚きつつ、

次は氷を作り出すことを意識しながら魔法を発動してみます。

そうすると今度はコップの中に小さな氷が現れました。

これは凄い発見だと思い、夢中で色々な魔法を試している内に時間が過ぎてしまいましたが、

その間も彼はずっと側にいてくれていました。

それが嬉しかったのと同時に申し訳なくも感じてしまったので謝ると、

気にしないでくださいと言ってくれました。

その後も彼とは毎日のように一緒に過ごしましたが、その中で分かったことがあります。

それは彼の優しさについてです。

私が困っている時はいつでも助けてくれるし、相談にも乗ってくれますし、

何より私のことを第一に考えてくれていることが伝わってきます。

そんな彼に対して私は次第に惹かれていくようになりました。

そんなある日のこと、いつものように部屋で過ごしている時に彼が話しかけてきました。

「リアンシューベレナ」

と名前を呼ばれて振り向くと、そこにはグレオスハルト様が立っていました。

どうしたんだろうと思って首を傾げる私に彼は言いました。

「君に伝えたいことがあるんだ」

そう言って真剣な眼差しを向ける彼に、私は緊張しながら次の言葉を待ちます。

そしてついに彼が口を開きました。

それは意外な言葉でした。

なんと彼は私のことが好きだと言うのです!

最初は驚きましたが、次第に嬉しさが込み上げてきてきました。

私も彼のことが好きだったので、迷わずOKしました。

それからは一緒に過ごす時間が増えましたし、キスやハグをすることもありましたけど、

それ以上に進展することはありませんでした。

というのもお互いに忙しくてなかなか会う機会がなかったからです。

それでも毎日手紙を送り合うことは欠かしませんでしたし、

たまに会える日があれば必ずデートをするようにしていましたので寂しくはなかったです。

むしろ幸せでした。

そんな日々を過ごしていたある日のこと、突然彼が訪ねてきました。

なんでも大事な話があるということでしたが、一体何でしょうか?

不思議に思っていると、彼は私に指輪を差し出してきました。

それは綺麗な青色の宝石がついた指輪でしたが、一体どういう効果があるのかは分かりませんでした。

でも、きっと素敵なものに違いないと思い、早速指にはめてみると、

その瞬間に頭の中に情報が流れ込んでくるような感覚を覚えました。

その情報は私が持っている魔力の使い方や使い方によって生じる効果についてなど多岐に渡っていましたが、

中でも特に気になったのは魔法を使う上で重要な要素であるイメージ力に関するものでした。

つまり魔法の発動には想像力が必要であり、それが不足していると上手く扱えないということなのです。

そこで私は考えた結果、まずは自分自身のイメージ力を鍛えることが必要だと思いましたので

毎日欠かさず練習することにしました。

最初はなかなか上手くいきませんでしたが、根気強く続けるうちに少しずつ上達していき、

今ではある程度自由に扱えるようになったのです。

しかし、まだまだ完璧ではありませんのでこれからも練習を続けるつもりですし、

いつか必ず使いこなせるようにしてみせると心に決めました。

それからは毎日欠かさず魔法の練習をすることにしました。

まずは基本的な使い方から覚えることにしました。

例えば指先に小さな水を出すといった簡単なものですが、これができるようになっただけでも大きな進歩だと思います。

次に手のひらから炎を出したり水を凍らせたりと徐々に難易度を上げていきました。

そして最終的には巨大な竜巻を作り出すまでに至りましたが、

まだ魔力の消費が大きいため長時間の使用は難しいです。

そこで今度は魔力を節約する方法を考えることにしました。

まず、思いついたのは詠唱破棄という方法です。

これはその名の通り詠唱を省略することで、

魔法の発動速度を上げることができるというものです。

実際にやってみると確かにいつもよりもスムーズに魔法が発動するようになっていることがわかりました。

それからというもの、私は毎日練習を重ねていくうちに次第に上達していきました。

今ではかなり長時間の使用が可能になり、魔力の消費量も少なくなりました。

また、最近では新たな技も習得しました。

それは氷を操ることです。

例えば氷の矢を放ったり、氷の盾を作ったりすることができますし、他にも様々な応用が利くようになりましたので、

非常に便利です。

ただしまだ完全に使いこなすまでには至っていないため油断は禁物ですが、

それでも着実に成長している実感がありますのでこれからも頑張っていこうと思います。

そして今日もいつも通りに魔法の鍛錬をしていると突然グレオスハルト様が訪ねてきました。

どうやら何か用事があるようでしたが、一体何の用でしょうか?

疑問に思いつつも部屋に入るように促すと、彼は真剣な表情で私を見つめました。

そして、 私の手を握りながら言いました。

「リアンシューベレナ、君に伝えたいことがあるんだ」

と言って私の手を取ります。

突然のことに驚きましたが、それ以上に嬉しさの方が勝っていました。

その後も彼と一緒に過ごす時間は増えていきましたし、キスやハグもたくさんしましたが、

それ以上のことはありませんでしたし、私も恥ずかしくて自分からは言えませんでしたので

お互いにとって良い機会かもしれません。

そう思って了承すると彼は嬉しそうに微笑んでくれました。

「ありがとう、リアンシューベレナ」

そう言って優しく抱きしめてくれる彼に対して私も抱きつきます。

彼は耳元で囁いてきました。

「好きだよ」

その言葉に私の顔は一瞬で真っ赤に染まりました。

まさか告白されるとは思ってもいませんでしたので動揺していると、

今度は唇を重ねられました。

初めは軽く触れる程度のものでしたが次第に激しくなっていき、

舌を絡ませるような濃厚なものになっていきました。

しばらく続けてから解放されると、私は肩で息をしながら呼吸を整えようとしましたが上手くいきません。

そんな私を見て彼はクスリと笑うと再びキスをしてきました。

今度は先程よりも長く深いものです。

口内に侵入してくる彼の舌に翻弄されながらも必死に応えようとしますが、

やはり上手くできませんでした。

それでも精一杯頑張っているとやがて彼も満足したのか解放してくれました。

その際に銀色の糸を引きながら離れていく彼の唇はとても艶めかしくて

思わず見惚れてしまいましたが、すぐに我に返り慌てて顔を逸らすと、

それを誤魔化すように咳払いをしてから彼に質問を投げかけます。

「それで、話というのは何でしょうか?」

そうすると彼は真剣な眼差しを向けてきました。

その迫力に圧倒されそうになりましたがなんとか堪えつつ見つめ返すと、ゆっくりと口を開きます。

「キスしてくれ」

「え?」

思わず聞き返してしまいましたが、彼はもう一度同じ言葉を繰り返しました。

「キスだよ、わかるだろ」

そう言われてようやく意味を理解した私は戸惑いつつも、恐る恐る顔を近づけていきます。

心臓がバクバク鳴っているのを感じながらゆっくりと近づいていくと、

彼の唇に触れそうになりましたが、そこで止まってしまいます。

これ以上近づく勇気が出ませんでした。

そうすると彼は不満そうな表情を浮かべると強引に唇を重ねてきました。

突然のことに驚きましたが抵抗する暇もなくされるがままになってしまいました。

何度も繰り返されるうちに頭がボーッとしてきたところで解放されたのですが、

その時にはもう完全に蕩けきった状態になっており、まともに思考することも出来なくなっていました。

そんな私に構わず今度は首筋を舐め上げてきましたので思わず声が出てしまい、

慌てて口を塞ぐも間に合わず漏れてしまいました。

恥ずかしさのあまり俯いていると耳元で囁かれます。

「可愛いよ」

「ひゃうっ!?」

不意打ちだったので変な声が出てしまいましたが、

それすらも楽しむかのように続けてきました。

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