第6話 余命

訳が分からない野郎に次から次に接している気がする。

だけどまあそれが悪い事かどうかは分からないが。

思いながら俺は下校していると...「はろー」と声がした。

俺は顔を上げて見る。


「ああ。お前か」

「美海ちゃんです~」

「...お前は何か。...坂本斗真というやつと知り合いなんだってな。俺のクラスメイトの」

「あれ?それを良く知ってるね」

「...そうだな。坂本から聞いたよ」

「...そっか」


渋谷はそう言いながら苦笑する。

俺はその姿を見ながら「で。何の用事だ」と聞いてみる。

すると渋谷は「うん。...えっとね。今日、友人になったじゃん?」と言ってくる。

俺は「?」を浮かべた。


「そうだな。それがどうした」

「まあでも聞いたんだよね?私が...天水さんと知り合いなの」

「そうだな。全て聞いたぞ。...お前が...天水を助けている事も」

「あはは。そうなんだね」

「...自らを省みずそれは偉いと思うぞ」


俺はそう言いながら渋谷を見る。

渋谷は赤くなりながら「うん」と笑顔になる。

その恥じらう姿に俺は「...お前は坂本が好きなのか」とつい聞いてしまった。

すると渋谷は目を丸くしてから更に赤くなる。


「...でも私にとっては斗真は高貴な存在だから」

「好きに高貴もクソも無いだろう。...そうか。お前みたいな美少女に好かれて坂本も幸せだな」

「うん。...でも私は決して告白とかはしないけどね」

「それはまた何でだ?」

「彼は...天水家と深い存在だから」


俺は「!!!!!」と思いながら渋谷を見る。

渋谷は「天水家は本当に複雑な礼儀正しい家だよ。...その分、マイナスもいっぱいあるからね」と複雑な顔をする。

成程な。

それでコイツも天水も坂本も複雑なんだな。


「...具体的に深いってのは」

「...それは言えないな。...ゴメンね。私の口から言えるものじゃない」

「そうか」

「うん」


「でもそれは置いておいて。とにかく遊びに行かないかい友人」と言う渋谷。

俺は「いきなりどうした」と苦笑いを浮かべる。

渋谷は笑みを浮かべる。

それから「いや。その関係で話もしたかったしね」と言う。


「そうか」

「...それも関係して一緒にファミレスとか行かないかな」

「ファミレスか。良いよ」

「...君は本当に優しいね。...やっぱり友人になって正解だったよ」


渋谷はニコッとする。

それから俺の手を握った。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

そして駆け出して行く渋谷。


「...それはそうとお前確か...病気があるんじゃ」

「まあ確かにそうだね。病気もあるよ」

「なら無理はするなよ」

「まあ今日ぐらいはね」

「...」


俺はそんな太陽みたいな姿に苦笑いをまた浮かべる。

それから駆け出して行く渋谷。

そして少しだけ走って疲れたのか渋谷は歩いた。

その調子でファミレスまでやって来た。



「ドリンクバー2つ」

「はい。かしこまりました」


俺と渋谷は椅子に腰掛けてからテーブル挟んで向かい合う。

渋谷はメニューを見ながらルンルンな感じを見せる。

正直言って子供の様だ。

俺は水を飲みながら考える。

すると渋谷はメニューを静かに置いた。


「...その。さっき言った事だけど」

「ああ。さっきの...恋の話か」

「そうだね。...それだけじゃないんだ」

「...ああ。どんな話なんだ」

「私、実は長生きが出来ないの」


渋谷は複雑な顔をする。

まさかの言葉に「は」としか声が出ない。

それから俺は驚愕してから渋谷を見る。

周りの音が聞こえなくなる。


「待て。どういう意味だ」

「...私、実は遺伝病なの。それで...長生きが出来ない。...赤ちゃんが作れない」

「...」

「...子宮も同時に関係する病気でね」

「いやいや。だったら尚の事伝えないと...」

「でも斗真ももう察しているじゃ無いかな」

「...察しているのと本人の口から言うのは...」


俺はそう強く言う。

そして直ぐにハッとして黙る。

イラッとしてしまったら駄目だ。

この子とアイツを比べたらいけない。

そう思いながら俺は深呼吸をする。


「...すまない」

「...ううん。有難う。そう強く言ってくれて」

「...後悔するなら革命を起こすべきだ。告白も全て後悔しない様にしないと」

「でも赤ちゃんも作れない。だから...」

「そういうのはどうでも良いんだ。...伝えたい事を今伝える事が大切だから。それに...この世の中、赤ちゃんを作る事が全てじゃないぞ」


優しくも強く言う。

そして俺は水を飲みながら「何か飲もう」と提案する。

すると「そうだね。友人」と言いながら立ち上がる渋谷。

それから俺達はドリンクを取る。


俺達はミルクティーを飲む事にした。

何だか知らないが飲むものが一緒だな。

俺はそう思いながら渋谷と見合い苦笑しつつ席に戻る。

それから俺は改めて渋谷を見た。

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