第4話 友人


本当に良く分からない感情だ。

俺の感情が、である。

天水の事は正直確かに可愛い存在だと思う。

だけどそんなに大きな存在とは感じてない...筈なのだが。

夕食を作りに来るかもしれないという事に心臓が高鳴った。


「...俺も大概だな」


そんな気持ち悪い感情を抱いてどうする。

思いながら俺は手を動かす。

因みに俺には趣味がある。


その趣味は...本を読む事だが。

まあその芥川とかその方面も色々読むけど何方かといえばライトノベルが好きだ。

息抜きになる。


「...やはりか」


この結末になるだろうと予測していた異世界転生ものがその結末になった。

ちょっとばかり微妙な感じだった。

何というか予想を裏切る感じじゃないとな。

そのスパイスが足りなかった気がする。


「...ふう」


俺はそう溜息を吐きながら天井を見上げる。

しかしまあ...何というか。

つまらない日常に少しだけスパイスが加わった感じだな。


学校で...少しだけ浮いた感じを覚えているし。

その灰色の日常が少しだけ色づいた感じだ。

天水によってだ。


「...俺も相当キモいな」


そんな事を呟きつつ俺は立ち上がる。

それから風呂に入ってから寝る準備をしてから眠りにつく。

そして翌日になり準備をして登校する為に家を出て...からの話だ。



「ハロー!」

「...お前は...誰だ?」

「初めまして。私は渋谷美海といいます」

「...?」


マンションから出る時。

いきなり女子に待ち伏せされていた。

白髪っぽい髪の毛にとても元気な性格の女の子。

渋谷美海?

そんな女子は初めて聞いた。


「その制服...磯崎高校の制服だな」

「だねだね。良く知ってるね」

「...本来行く予定だった高校だ。頭が良い高校だろう」

「そうだね。ちょっとばかり成績が高いかな」

「...都合で行けなくなったけど。その生徒さんが何の用だ」


そう聞いてみると渋谷は「そだね」と言い出す。

それから俺を真っ直ぐに見てきた。

そしてニコッとする。

ん?


「友達になってくださーい」

「あ?」

「私、貴方の事を知っているから。いつも見ていたので友達になって下さい」

「何で?」

「な、何でと言われても。友達になってほしい」


いきなり何故怪しい女子と友人に。

そう思いながら渋谷を見る。

渋谷は考え込んでいた。

俺は友人を作るのは得意では無いのだが。


「...分かった。何か事情もある様だ。こうして話し掛けてもらったし友達ぐらいにならなってやるよ」

「本当に!!!!?じゃあレイン交換して!」

「いや。それは断る...」

「ぇ!?」


何でメッセージアプリなんぞを交換しなくてはならない。

思いながら俺は渋谷を見る。

渋谷は「うーん」と悩んでから顎に手を添える。

それから「ツンデレ?」と言ってくる。

何でそうなる。


「...ツンデレっていうかお前の素性が分からない」

「それって友人とは言えないよ?」

「レイン交換をしなくても友人だ。もう少しだけ様子を見てからな」

「うーん。ケチ」

「ケチでも何でもいい。...じゃあな」


正直、友人とは言ったけど。

これぐらいの関係性で終わるだろう。

そう思いながら俺達は途中の分かれ道で別れてから俺は登校した。

すると学校でかなり噂になっていた。

何がといえば。

俺が...天使に傘をやったのが見られていた様で。



ヒソヒソ話が煩いな。

まあ仕方が無いとは言えるが。

正直、俺も詰めが甘かった。

そう考えながら俺は天水をチラ見する。

そんな天水は何も気にする事無く勉強していた。


俺もあんな根性があればな。

そう思いながら俺は頬杖をついて窓から外を見る。

すると「横田」と声がした。

顔を上げるとリア充の様なチャラい男が立っていた。

確かコイツは坂本斗真(さかもととうま)だったっけ?


「坂本。何の用事だ」

「...いや。...すまない。声をいきなりかけて」


どうせコイツも周りに当てられて興味本位で聞いてきたのだろう。

チャラいし何よりもウザい感じだ。

思いながら俺は警戒心をマックスで見ていると坂本は「渋谷美海って奴に会わなかったか」と聞いてくる。


「...待て。何故それを知っている」

「いや。朝早くにアイツがなんか出て行ったらしくて。それでお前の特徴によく似た奴に会うっていうから」

「...その通りだが...」

「...そうか」


そう言いながら坂本は「...美海はまあ見た目的に病弱でな。...まあそれを言っても仕方が無いんだけどさ。興味を持った奴とは誰とでも友人になりたがるから。何か多分お前と友人になりたいんだろうけど...もし良かったら友人になってくれるか」と言葉を発する。

俺はその言葉に「...」となりながら坂本を見る。

一瞬だけ天水が反応したが気のせいか?


「...まあ用件はそれだけだ。すまない」


そして坂本は頭を律儀に下げてリア充っぽい奴らの所に戻る。

俺はそんな姿を見送ってから目線を天水に向ける。

天水は俺を見てから前を見た。

特に何もない感じだが。

今のは何だ。


「...」


坂本にそこまでする義務はない。

だけどそれで終わらせたら何か...後味が悪い。

俺はどうするべきか考える。

ただ...友人というのが何だか嬉しかった。

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