Another -1 星辰の魔王 02(ユビキタス)

 ひたひたと迫り来る平民の時代に貴族が危機感を募らせる中で、ユビキタスが魔法技術庁に登用される。彼はたちまちのうちに頭角を現し、そしてついに【魔方陣スクエア】を完成させる。それは膨大な魔力で権力をほしいままにしてきた特権階級の胆を冷やした。


 はじめに【魔方陣スクエア】は平民の魔法使いの魔臓庫の容量で劣るという先天的なハンデを補うものとして生まれた。本来なら体内に貯めることでしか利用できない魔子マミを代わりに集めることができる。簡単に言えば外付けされた増量タンクのようなものだ。これにより大規模な魔法も容量を気にせず単独で使えるようになった。


 次の段階で【魔方陣スクエア】は新たな側面を見せる。それは無詠唱魔法への転換だった。

 きっかけは橋梁を作る土木現場で作業を補助していた魔法使いによるものだった。納期に忙殺されていた彼は頭に肉体強化ブーストの【魔法陣サークル】をイメージすることで詠唱無しに魔法を発動させた。そしてこのとき魔臓庫の魔子マミは消費されていないことも分かった。代わりに【魔方陣スクエア】にプールされた魔子マミが直接それを負担していたのだ。

 これにより小規模な魔法は無詠唱で使うのが主流になり、生活魔法として広まっていく。


 さらにこのことは新たな可能性を人々に気付かせることになる。『【魔方陣スクエア】があれば誰でも、それこそ魔法使いでなくても魔法が使えるのではないか?』と。

 それを目指してユビキタスを中心とした平民チームが【魔方陣スクエア】の改良に着手した。そこでユビキタスは発想の転換で【魔方陣スクエア】自体に魔法の効果そのものを組み込んで自動化することを考えた。使い捨てではあるがより簡便なもの、【魔法陣サークル】を必要としない形を目指して開発は進んでいく。そしてその熱はさらなる革命をもたらすはずだった。


 しかし平民の開放を畏れた旧態派の貴族連中がそれ許すはずも無かった。【魔法陣サークル】を必要としないということは、貴族の存在意義を否定するものだと国王に訴えたのだ。

 そのためにユビキタスは謀略に嵌められ【魔方陣スクエア】の功績を取り上げられ、平民を扇動し国を乗っ取ろうとした大罪人として辺境に追われることになる……。

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