Count 5.1 Girl meets boy so wonder.(巫子芝安里)

 

 あのあと、ボクの爪が割れてるのに気がついた円東寺クンに連れられて、化学室で消毒して手当てしてもらってる(←今ここ)。あ、化学の芹沢先生とは昔からの知り合いなんだって。


 円東寺クンのひんやりした手が気持ちいい。それに意外と大きいんだね。ボクの手がスッポリ収まっちゃう。

 円東寺クンのきれいな手や指を見ているうちに、拳ダコで硬くなったボクの手が違いすぎて恥ずかしくなる。

 円東寺クンも嫌だよね? ケガばっかしてる女の子なんて……ついそんな言葉が口から出てしまった。

 な、何言ってるの、ボクのバカッ! 円東寺クンだってビックリしてるじゃない!

「急にどうした? 誰かにそんなふうに言われたのか?」

 円東寺クンの動きが止まる。ご、ゴメンね、急に変なこと言っちゃって!


 でも考えるより先に体が動いちゃうのは直らない。誰にも言えないけどボクだって自己嫌悪に陥ることも、落ち込むことだって……え、意外? 失礼しちゃう!

 ママにはもう危ないコトは止めてって言われて、その度にため息つかれてる。

 空手のことなら、パパやあっくんに任せておけばいいでしょ、って。

 迷惑かけっぱなしなのは謝るけど、どうしてママは分かってくれないのかな。

 ボクがいちばんやりたいコトは空手なのに……。

 もっと普通に女の子らしいことしてなさい、だって。そんなに大事かな? 普通って。

「気にする事ないぞ。普通の女の子? オレはそんなの・・・・に興味がないし、それ普通につまんないって事だからな」

 え、今なんて言ったの? 普通の女の子・・・・・・に興味がない? ほ、本当に? 本当にそう思ってる?

「好きな事を好きなだけ好きなようにやればいいんだよ。普通なんてのはあきらめた奴、足を引っ張りたい奴の常套句だ。……まあ、ぼっちのオレが言っても何だけどな」

 で、でも! それにボク、【三なし】なんて変なあだ名で呼ばれてるし……

「そうか? オレは中学の時、【ジ・エンド】って呼ばれてたんだぜ」

 え、そうなの? な、何かカッコい……

「すげえダメダメだろ? 気づいた時にはもう手遅れ。ショッピングモールの店内放送で【ジ・エンド】様~なんて呼ばれたりなんかしたら、その場で全力で床に叩頭礼する勢いだよ」

 ヤダその動き! うぷぷっ、笑っちゃダメッ! ダメなんだけど!

「今更どう見られたって構わないだろ? 世の中やったもん勝ちだよ。歴史は常識じゃなく勝者が創作つくっていくんだからな。……まあそれに、好きなことに打ち込んでるやつは、オレは嫌いじゃない・・・・・・から」

 え、嫌いじゃない? てことは……す、好き? わ、わんもあぷりーず!

 ほ、本当に? ウソじゃないよね、円東寺クン! 

「嘘つく必要はないんじゃないか? オレの今の率直な気持ちだ、信用してくれ・・・・・・

 え、円東寺クン! ありがとう、キミは……キミって人は! キミは心の友、ううん! それ以上だよ! ボクも……大好き!

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