実況!4割打者の新井さん 10

ぎん

開幕戦同様、切り込みは日本人2人の仕事よ。

ビシュッ!!



ギュルルルル!!


カンッ!!


「打ち上げたっ!!バッターはバットを叩きつけて悔しがる!センターへの飛球。飛距離はありますが、センターバーンズが下がりながら掴みました、3アウト!!」


オッケー、オッケー!いきなりのフォアボールきっかけにノーアウト満塁でどうなることかと思いましたけど。いい当たりの打球が平柳君の守備範囲に飛んでくれて大ラッキーでしたわ。


勝ち運のピッチャーにありがちな、スロースターター気質。何はともあれ、初回をゼロで切り抜けましたから、首脳陣はほっと胸を撫で下ろしたことだろう。



「さあ!皆様1回裏、シャーロットの攻撃ということになります。マウンド上は、左のステゴリエス。パナマ代表左腕です。


ボストンに移籍して5年で72勝。今年は、自身開幕7連勝というのがあって、オールスターでも投げましたが、夏以降はケガもありまして11勝。本人も相当悔しかったようで、ポストシーズンは初戦に投げるし、MVPを目指すよと、我々の取材も受けて下さいました」



「真っ直ぐは常に96マイル以上出て、落差のあるカーブが持ち味ですね。まるでスプリットのようだというバッターもいるくらいの威力があるボールの出来ですね」



「なるほど、ありがとうございます。さあ、中橋監督の教え子。共に日本一にもなった平柳がメジャーのポストシーズン初打席です!初球。…………外、速いボール決まりました。97マイル。1ストライクです。初球は見て来ました。最近の平柳は初回の打席からどんどん狙っているバッティングが光っていましたが……」



「確かに打率が最後にグンと上がった時は、初回先頭バッターホームランだったとか、チームを勢いづけるバッティングが多かったですよね。さすがにここは見て来ましたが……」



「2球目。また外だ。打って、ちょこんと合わせたバッティングで三遊間、深いところに飛んだ!ショートのロウが回り込んで捕りますが……投げられません、これは無理でした。ショートへの内野安打です」





イメージはレフト前に落とすようなバッティングだったんだけど、ちょっと抜いたボールだったのか、バットの先でして。


それでも飛んだコースは俊足シフトのショートが回り込まないと追い付かないところでしたから、ある意味完璧。


ショートが捕って送球しようとした時には、もうスリーフィートラインを越えた位置を平柳君が爆走してましたから。



130マイルオーバーの送球でもしない限り無理だった。



悠々と1塁を駆け抜けた平柳君がアームガードを外しながらコーチとグータッチ。



そしてわたくしも初めてのポストシーズン。ファーストアットバットである。



「さあ、北関東の皆さん。お待たせ致しました。日本の4割打者からメジャーの4割打者になった男。今日もピンクのアイテムが眩しい新井の登場です!」



「すごい歓声です!ピンクのリストバンドやタオルを掲げている観客がたくさんいらっしゃいますね」



「今、成績が出ていますが、新井は4割0分5厘6毛の打率をマークしました。メジャー記録という話になると、4割4分台の選手がいたりだとかとんでもない数字の話になりますけども。


現行のシーズン記録という形になると、1941年にテッドウイリアムが記録した、4割0分6厘というのはつい先日までの近代メジャー、最後の打率4割と言われていました」




「ウイリアムは、残り2試合の時点で四捨五入すると打率4割になるから、残りの試合を欠場するように監督から打診されたそうなんです。


彼はこれを拒否してダブルヘッダーに出場して8打数6安打で打率を406まで上げてホームラン王との2冠を達成したという逸話があります」


「新井もそうでしたよね。優勝が決まった段階でも、打率が4割4厘くらいあって、もちろんそれまで全試合出場していましたから、規定打席にも到達していて……」


「ええ。ロレンス監督と何やら2人で話したとか話していないとか色んな噂がありましたけども………2球目です。……打ちました!右打ちだ!1、2塁間!深いところ、セカンドが飛び付く!


止めたがこぼしたすぐに拾って1塁へ!ヘッドスライディング!!セーフ、セーフだ!!新井の執念!ヘッドスライディング炸裂で内野安打をもぎ取りました!」



「低めの恐らくツーシームだと思いますが、しっかりと引き付けて1、2塁間に飛ばしましたね。得意のね。セカンドがよく追い付きましたけども。叩けていますからね。ヒットになる可能性が出てきますよ」



「ノーアウト1、2塁となりましてバーンズです。今シーズンは56本塁打、140打点は共にリーグトップ。打率も新井に次いで2位。実質のトリプルクラウンと言われています」




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