6️⃣
「……一応、アタシで良ければ出来ることをします。ただ先に言っておくと、アタシは医者じゃないし医学の知識も無い。それでもよければ……——」
「なんでもいい! 妻を楽にさせてやってくれ!!」
それ殺してないか? というツッコミはぐっと堪えた。マリアは常に腰から提げているカードケースの中から必要なカードを選ぶと、宙に放る。
「“{献身の白澤}よ、
マリアの呼び声に呼応して現れたのは、二足歩行で立つ白い牛に似た生き物だった。これが魔神。カードに眠る魔神は姿も形も皆それぞれ違うが、基本的に美しい姿をしている者が殆どだった。
{
「“{夢煙の貘}よ、
次に現れたのは煙を纏った貘のような魔神であり、その煙を吸い込んだ淑女の苦しげな表情が和らいでいく。
ぽかんとした顔で一連のやり取りを見ていた紳士は、ハッとすると妻の顔色が随分と良くなっていることにまた驚愕していた。
「うん、ただの風邪みたい……少しすれば良くなりますよ。良い夢を見れるように魔法をかけたので、風邪の間特有の悪夢も見ずに済むかと……他にご要望は?
あぁ、洋服の変えはメイドが行います。アナタの服は執事が用意しますので、そちらにお着替えお願いしますね。このままではアナタも風邪をひいてしまうでしょうから」
「いや、驚いた……君は随分上手く魔法を使うね……うちの生徒にも見習って欲しいぐらいだ……どの魔法をどう使えば効率的に問題を解決できるか、君はよく分かっている……」
「それはどーも、ありがとうございます。お疲れでしょう? 客間を用意させていただきました。今晩は父も母も居らずこの屋敷にはアタシだけなので、ゆっくりしていってくださいませ」
「そういえば、君のご両親はどちらに?」
「姉を含めて
たっぷり含みを持たせて言えば、紳士は顔を曇らせた。どうやら奥方のことで取り乱していなければ相当に慈悲深く優しい方らしい。
「——私はあまり、そういう話が好ましくは無いね」
「気を悪くされたら申し訳ございません。こういうのが好ましくないのは同感ですわ。でも本当にお気になさらないで、アタシの可愛い侍女はアタシと居てくれますので」
「……まさか、先程の魔法は独学で!?」
そして、賢い方らしい。親に愛されていないことを鑑みて、親が魔法の使い方を教える家庭教師を新たに雇うとは考えにくいと考えたらしい彼は、故にマリアは誰からも魔法に関して師事を受けていないという可能性に気付いたようだ。
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