男装令嬢物語

ゼロ

それが全てのはじまり

最悪の出会い

ep:1-1

 父は厳格な人だった。

 その頭のキレ具合から、いくつもの事業と策を練って貴族社会では一際有名な人だった。

 それをそばで共にする兄二人も同じで、自分はそんな父親達が誇らしかった。


 そんな父だからか、周りに敵も多く、女だと嫁に出せなどとばれるのが煩わしかったのか、それともリオン家の財政を他人に渡したくなかったのか真意は知らないが、男として育てられて、乗馬や剣術、槍術など紳士としての教養を学んだ。

 こっそりと興味のある本を片っ端から読んで化学だけでなく様々な知識にも精通した。


 反対に母は、とてもお淑やかな人だった。

 柔らかい笑みを浮かべて、伯爵家の令嬢としての立ち居振る舞いやマナーを教えてくれた。


 リオン家の幻の三男として周りからは噂され、屋敷の外に出ることは余り許されなかった。

 それを不憫に思ったのか兄達からは、よく外の話を聞いたり珍しいお菓子などのお土産をもらった。


 父も兄も母も皆優しかった。

 中でも、一緒に過ごす時間が長い母のことが大好きだった。

 そんな母が病気で亡くなり、ハメられたかのように屋敷が没落し、父も兄も連れて行かれた。

 一人身を隠していた自分だけは免れ、そして……独りになった。


 これは……そんな、哀れな生き方をするおれ、ユーリ・リオンの話。


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