第20話小学校高学年編 小学4年生 くみちゃん

 春休みが終わって、姉は小学5年生・私は4年生へ進級。妹も保育園へ入園した。私は1組になった。

 始業式が終わって、しんちゃんのところに遊びに行くと、いつも外に出ていたくみちゃんの姿がなかった。その理由をしんちゃんに聞くと、

「風邪をひいて体が弱っていて、入院している」

ということであった。私は

「早うようなったらええなぁ」

と言ってくみちゃんのいないアパートの部屋でしんちゃんと遊んだ。それからしばらくたった4月の中頃、私の母からくみちゃんが亡くなったという知らせを聞いた。もともと体が弱く、風邪をこじらせてしまって、肺炎を引き起こしたらしい。私はいつも一緒に遊ばせてもらっていたので、お通夜に参列させてもらった。よく見てみると体が小さく、私より4歳年上であったが、体の大きさは私の同級生の女子と変わらなかったのではないかと思う。くみちゃんはこうして13年の人生を終えたが、私に「世の中にはいろんな人がいるんだよ」

という、人間が人間らしく生きていくうえで、とても大切なメッセージを残してくれた。物心がついたころから身近にくみちゃんがいて、私にとって障碍のある人がすぐ身近にいるというのは当たり前であり、普通であった。いろんなことを教えてくれたくみちゃんとの思い出は、私にとってとても大切な宝物である。

 季節は巡って春本番。4月に入るとゴンも、冬の間は寒さのために、散歩はあまり行きたがらなかったが、暖かくなってくるとやはり外で運動したいのか、散歩をせがむようになってきた。この当時はまだ、少し歩くと畑があって、あぜ道にはレンゲが咲いていた。春の日差しを思いっきり浴びながらの散歩は、ゴンにとっても、私にとっても気持ちのいいものであった。くみちゃんを亡くしてからしんちゃんのアパートに行くとしんちゃんが出てきて、一緒に散歩に行くことになった。そしていつもの空き地でボール投げを始めると、しんちゃんも笑顔を見せるようになっていた。少し安心した私である。

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