第3話  断る。

 或る日の、求人広告の営業。当時、まだネットが普及していなくて、求人広告は紙媒体だった。


「今回は、このサイズで1回」

「このスペースでは、御社の良さを書ききれませんが」

「そんなこともないだろう?」

「今回の求人は、ハッキリ言って不人気求人です。不人気となるイメージを払拭する内容にしないと、きっと、お金をドブに捨てることになりますよ。要するに、御社や仕事の良さを書ききるのに、もっとスペースが必要なんです」

「そうはいっても、今回は急な求人で予算が無いんだ」

「それでは、今回、僕はお手伝い出来ません」

「断るというのかね?」

「はい、お客様に損をさせる仕事はしたくありません。今回は、どこか他所の会社にでも頼んでください。では、失礼します」


 時には、断る勇気も必要だ。そして、電話が鳴る。


「予算をとったから、もう一度来てくれないか?」



 勇気が伝わることもある。







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