私の友人の話

八月朔 凛

第1話 呪いをやった友人の話

ええ、私が小学生だった頃の話です。

私の友人が藁人形を作って呪いの儀式をやったんですよ。


藁人形っていっても、本格的なものじゃなくて、雑草で適当に作ったものなのですが……


それでですね。

私の友人はそれを忠霊塔の敷地内でやってしまったんです。



私の小学校は忠霊塔が敷地内にあります。

鬱蒼としてることもあり、やれ、敷地内に10秒以上いると呪われるやら、ここで少女が自殺したやらそんな噂が何時でも飛び交っていました。今思えば、小学生によくある戯言なのですが……


ただ、当時小学生だった私はそれを真に受けて、その敷地には10秒以上滞在しないように、そして忠霊塔に繋がってる階段も10秒以内に降りていました。そして10秒以内に降りれなかったら、手を合わせて呪わないでくださいと祈りました。


その友人とは幼稚園からの付き合いです。何度もお互いの家に行ってDS(ポケモンのプラチナやどう森)で遊んだり、ままごとをしてました。


その日も昼休みにいつものようにままごとを忠霊塔の近くの森でしてました。


スギ花粉の実を石でゴリゴリ削ってお薬(という設定の何か)を作っていたのですが、やがて友人は飽きたのか忠霊塔の敷地に入りました。


「ねえ、鴨井のこと嫌い?」


鴨井とは友人の近所に住む女の子のことです。

好きな子や上の人先生には媚びを売って、嫌いな人は徹底的に声を高くして罵倒するようなヒステリックな人間でした。


私は鴨井から好かれてなかったので、彼女のことは嫌いでした。正直、官舎に住む子なのでさっさと引っ越してもらいたかったです。


「私も嫌い。うるさいし……ねえ、だから呪おう!」


私は必死に首を振りました。

嫌いだからって呪ってはいけないと思いますし、何よりも親から降霊術、呪術、印契を結ぶことをしてはいけないと幼い頃から口を酸っぱくして言われていたこらです。


当時、親の言うことは全て正しいと思っていた私は親との約束を破りたくなくて、必死に首を振りましたが、友人がそれを聞くことはありませんでした。


「あはは、死んじまえ!鴨井なんて死んじまえ!」


友人はそこら辺で摘んだ雑草を木に打ち付けながら、笑いながらそう言いました。


「ついでに教頭先生もウザイからやろうよ!」


教頭先生は怖い人です。持ち授業の音楽の時間にふざけたら、もうその日の音楽の授業は終わりです。ひたすら説教されて終わります。


だけど、私には音楽の才能があるといって可愛がってくれた上に、自分が運営してる合唱団に入らないか?と誘ってくれた人でした。


私はもう嫌すぎて泣きながら止めましたが、友人はケタケタ笑ってました。

そして、再び鴨井の時と同じように草の中央に部分に尖った石を打ち付けていました。


「呪いはね!まず心臓部分を打つんだよ ♡そしたら死んじゃうの〜」


友人はさっきやっていた、ままごとより楽しそうにそう言ってました。


それから数ヶ月後。

鴨井は引っ越しました。

教頭先生は階段から滑って体の一部を骨折しました。そして次の春には転任しました。


私は一瞬、あの時の呪いだと思いましたが、それを立証することは出来ないので、考えることを辞めました。

6年近くここにいること自体自衛隊では比較的珍しいですし、教頭先生も2~3年くらいはいたので転任すること自体は決しておかしくはないです。


私と友人はその後中学校に入るまで仲良くしてました。


中学校は彼女は私立(寄宿学校)に、私は地区の公立学校へ進学して、お互い連絡をほとんど取らなくなりました。

また、連絡しても私が一方的に喋るだけで、彼女の私生活を聞いてもぼかされるだけでした。



数年後。

友人のお母さんから連絡がありました。

友人はある時発狂したそうです。

夜中に見回りしてる警察官の元に近寄っては、「私は両親から虐待を受けて、可哀想な子で助けて欲しいです」と騒ぎ立てたそうです。

(寄宿学校にいるので、両親とは離れてる)

またある時は、お金を盗もうとしたり、夜中に出歩いていたそうです。




今はまともに話せなくて、精神病院の檻の中にいるそうです。


それを聞いてふと思ったのは、『人呪えば穴二つ』という言葉です。


母が言ってました。

呪いとは、負の感情を込めれば儀式が無くても成立してしまうと

そして、呪いは必ず代償があると……


友人がやったあの儀式はきっと成立してしまって、友人はその代償を払ったのでしょうか?




どちらにせよ友人の回復を願うばかりです。

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