第11話 酒におぼれる

私は喫煙者だし毎日飲酒している。

一日に一箱は吸うし、500ミリリットルの酎ハイを三本は飲んでいる。

三十年前からほぼ欠かさずタバコも酒もやってきて、現在の喫煙本数と酒量が確立してから十年以上になるだろうか。


これが健康的な生活で決してなく、体に悪影響を及ぼしていることくらい分かっている。

現に健康診断で肺に血腫ができていたのと肝臓の数値が壊滅的に高いことが指摘され、再検査と生活改善を勧告されている。


だが、私はこれからもタバコを吸い続けるし、酒も飲み続けるつもりだ。

これは私にとって薬なのである。

受け入れがたい現実とふがいなさすぎる自分を生きるための麻酔なのである。

麻酔なしにこの痛みに耐えて立ち向かうつもりはない。

薬や麻酔に副作用があるのは当然だから体が悪くなるのも仕方ないだろう。


それに私のような者が健康で長生きして何になる?

60代や70代になった自分など考えたくもない。

貧困に苦しみ、孤独に生涯を閉じるであろうことは目に見えている。


私は昔から健康だけには恵まれていた。

学校を病気で休んだことはほとんどないし、これまで入院したこともないし、今世紀に入ってから熱を出したこともない。

帰省した折、弟の妻である義妹が持ち込んだコロナで両親含め一家全員がコロナに感染したのに私だけが平気だったくらいだ。


だが、体が健康なだけでは幸福にはなれない。

私はそのぶん平均以下で使い勝手の悪い頭と体に苦しめられて心の健康を害し、体の健康も失われ始めている。


それでいいのだ。

みじめな老後を迎えないようにするには、老後になる前に死ねばよいのである。

無意味に健康な体は今のうちにつぶしておく。

嫌でも長生きできない体にしなければならない。


体に悪いことをして、自分の体を蝕んでいる時こそ心安らぐ。

この生きづらいことこの上ないみじめな人生の終わりをより早く迎えられるであろうことを実感し、心地よくトリップできる。


私などとっとと死んでしまえ。


葬式は両親にやってもらうことになるかもしれない。

親より早く死ぬのは親不孝らしいが、50歳くらいまで生きたんだから御の字じゃないか。

育ててくれた恩よりも、こんな自分に生んだ恨みの方がやや大きいというのが本音なんだ。

子供の時や20歳くらいで死んだり、自殺されたりするよりましだろう。

十分じゃないか。


私は今日もうまい酒を思う存分飲めればそれでいい。

今夜はカツオの刺身をアテに、いつものように『こだわり酒場レモンサワー』を三本といこうか。

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