第4話 不可思議な概念

「うぅ…。うー。はっ!!」


何か嫌な夢でも見たのかこの日は最悪の目覚めだった。


「何ここ…。明らかに僕には似合わない場所なんだけど。」


成金でも住んでんのかってぐらいゴテゴテに装飾された部屋は質素な小屋で生活していた僕には刺激が強過ぎた。全く落ち着かない。混乱する頭を冷静にするため窓を開けて風に当たる。


「ふう。知らない景色だ。建物多くね?」


先程ベッドから目覚めたばかりだが一応の夢かの確認のため頬を抓ろうとするが抓れない…。


「マジか。夢じゃ無い…。腕落ちた事も夢じゃない。どうしよう。コレからどうやって生計を立てていけば良いの?」


僕の家庭は狩猟で生計を立てていたため片腕が無いのは致命的である。流石に猟銃を片手で扱う事は出来ないし、当然弓もグロスボーも使えない。出来るとしたら草食獣を捕まえるための罠などの設置だろう。かと言って捕まえられても鹿とかを近距離で仕留められる程人は頑丈じゃ無い。狩猟以外出来ないしどうしろと?


「とは言え無いモノを嘆いた所で現実は変わらない。残った腕と足でどうにか技術磨くしか無いよなぁ。」


悲しいが僕には同胞以外頼れるツテ無いし、そもそもここはどこなのかも分からない。未来に目を向けると不安しかない。

そうしているとコツコツと言う足音が聞こえ反射的に臨戦体制に入る。少なくとも今居る国はコスプレした変な人が急に殺しにくる場所だし僕が人を殺しても咎められないだろう。ドアの形状的に内開きタイプなのでドアの横幅から見てギリギリぶつからない位置にたまたま目についた羽ペンを持って陣取る。

ドアが開いた瞬間相手の首筋に羽ペンを突きつける。ここがどこの国ではたまたどの時代かも知らないが人である以上弱点は共通の筈だ。羽ペンであろうと少々尖っていれば普通に刺さる。首の太い血管を傷つけて仕舞えば即死はしないが死ぬのは確実。


「まぁ、当然の反応ですね。」


「うん?日本語分かる?」


想定外の事に少々驚いたが話が通じるならば交渉を先にしよう。


「日本語と言う言語は存じ上げません。コレはただの遺物の効果で御座います。今まで観測された国々の言語は共通なので物置で肥やしになっていたのですがお客人はどうやら言語が違う様なので物置より引っ張り出してきました。」


「なるほど、言葉が通じるなら幾つか質問したい。」


「どうぞ。私に答えられる事ならばお答えします。」


「まずここは何処かな?」


「ここはナトリ皇国のカミール家の客室です。」


うん、全く知らない国だよ。そりゃあ言語が違う訳だ。ナトリ皇国なんて僕の生きている時代には僕の知る限り存在していない。これはタイムスリップ説が濃厚かな。タイムスリップしているのであれば元の時代に戻る方法を探さないと…。


「次、なんで僕は急に襲われて死んだと思ったら生きてたの?あの変な鎧の行動から見て僕が生き残る筈無かったんだけど。仮にあの鎧があそこで僕にトドメを刺さずとも出血量から見て普通に死ぬ筈だし一体どう言う事?」


「それはお嬢様のおかげです。お嬢様はこの国で唯一神聖魔法を使える魔法使いなんですよ。」


魔法って何?

ここでは高度な治療の技術を魔法と呼称しているのかな?

ここをつっつくと多分絶対面倒臭いのでここはスルーしとく。


「へぇー、それは凄い。きっと習得するには苦労が絶えなかったでしょう。では、最後の質問です。貴方達の目的は何ですか?」

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