第42回 後日談

side ミルティア


「遊神……なぜ……アナトさんを……?」

 戯神が非難するような目で見てくるが、言い訳させてほしい。

 だって。だって。だってぇえぇぇえええええ!!!!!!



 あのあと、光神さまと闇神さまと風神さまが冥神さまを捕らえてどこかに連れて行った。

 1級神が問題が起こしたとき用のお仕置き部屋なるものが作られていたことをはじめて知った。

 古代神ってどういう状況を想定していたんだろうか?


 僕は怒りに任せた行動を少しだけ光神さまに注意されたけど、それだけで終わった。

 もし冥神さまを消し去っていたら、ボクがお仕置き部屋行きだったらしいから、アナトに助けられたことになる。


 それにしても、冥神さま、弱くない?

 1級神なのに、本気を出したからと言ってボクがあんなに一方的に攻められるものなのかな?

 火神さまには『反省の心はあったのではないか?』と言われて一応自分を納得させたけども。



 ちなみに、番組終了後にあの映像を流したのは戯神だった。

 どうやら収集した映像の中であの会話を見つけてどこかで使おうとしていたらしい。

 さすがに先に教えてほしかった。

 聞いていたらその時点で企画終了していたかもしれないけど。



 アナトは自分の街に帰って行ったよ。

 最後にアッパーカットを喰らわせたことをからかわれたけど……。


 くそっ、借りができたし……


 アナトのくせにステキじゃないか……。


 ボクの怒りはあのキスで吹っ飛んでしまった。


 伸びるアナトを視界に納めることもできなかったじゃないか。

 アナトめ……。


 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……。

 照れて殴るなんて何やってるんだよボク!

 あそこで感謝の言葉の1つくらい言っていたら、今頃アナトは完全にボクのものだったんじゃないだろうか?(涙)

 


「遊神……完全に……」

 そして同じように驚いたりドキドキしていた戯神がからかってくるのがムカつく。

 ここはガツンと言ってやろう……


 ギィ~

「失礼する……」

 

「あぁそうだよ!堕ちたさ!アナト、カッコよかったもの!ステキだったもの!もともと好きだもの!あんなシチュエーションで抱きしめられて優しくキスなんかされたら好きになるだろ!!!?」

 

「……!?」

「!?!?!?!?」


 首をかしげる戯神は置いておいて……狙ったんじゃないかと思うようなタイミングで部屋に入ってきた雷神さまに全て聞かれた……。


「あいえあんkjげあういlrhぃなkうぇn!!!!!!(涙)」


 そして意味不明なことを叫びながら、泣きながら走り去っていった。

 なにをしているんだろうか?



「アナトさんがステキなことは否定しません……」

「!?」

 走り去る雷神さまの方を見ていたら、いつもの抑揚のない声とは全く違った様子で戯神が宣言しだした。


「まっ……まさか」

「遊神、ずるいですわ。私も行きますわよ?」

 そして無表情を崩して不敵な笑みを浮かべてそうのたまわった。

 キミも普段手放している意識を固定するくらいにはアナトに惚れているということだね……。


 まぁ、戯神とは姉妹だし、2人でアナトを独占するのもありだよね。

 戯神に対して私は変な感情を向けることはない。

 なにせ、もともと1つだった存在だ。




 そして……。



『あのバカは反省していた。次は変な小細工なしに、アナトを主人公にした番組を撮りたいらしい』

 そんなに日も経たないうちに、火神さまがとんでもないことを伝えてきた。


 あんなことがあっても全くへこたれてないのが凄いね、冥神さま。

 もしかしてもう次を考えているから一方的にボクの攻撃を受けたのだろうか?



 手に伝わる感覚は違和感があったのは確かだが、番組に対する思い入れを考えるとありそうな気がするから怖いよね。



「それでまたアナトに酷いことをしたら怒りますよ?」

 火神さま相手に文句を言っても無駄なので、ボクは冷静に言った。


『光神や闇神に加えて風神まで見に来てるから、もうそんなに酷いことはできないだろう。罪滅ぼしのつもりで、アナトの隠されたスキルを全部解放してやるつもりかもしれない』

「なるほど……それならいいですが……」

 そんな反省をするような神さまだろうか?という思いはあるが、アナトにとってプラスになるのなら問題ない。


 しかも、番組にかこつけてまたアナトと一緒に旅ができるかもしれない。







 アナト……受けてくれるかな?♡



 悔しいけど、本気を出した姿にはドキドキしてくれたんじゃないかと思うから、それを見せればきっと……。




 ……っく、アナトのくせに!!!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る