第37話 王女の恋

王女様は純粋にぼくに会いに来てくれただけのようだった。ちゃんと相手してあげられなくて悪いけど。


「グリーン様、わたくしもここに置いて頂けませんか?」


「「はいいい?」」


突然何を言い出すんだ。王女様は。


「レーベン王からの手紙を預かっています」


ぼくはロイドから、手紙を受け取った。早速封を開ける。内容は、王女がどうしてもぼくの近くに居たいので、少しの間住まわせてやって欲しいとの事だった。迷惑をかけてすまないとも書いてあった。


「ここは城と比べて狭いですし、汚いですよ?こんな所に住まわせられないと思うのですが・・」


「覚悟の上です!将来、夫になる人の生活を知っておくのは良い事ですわ」


あれあれあれ?王女様?大丈夫かな・・。かなり、いやだいぶ思い込みが激しい方らしい。


「「だめーーーーっつ!」」


アリスがぼくにしがみついてきた。


「グリーンは私の旦那様になる人なの!王女様だからって勝手に決めないで!」


王女は目をばちくりさせていた。


「・・・そういうことでしたの?是非グリーン様の意見を聞かせて頂きたいですわ」


はぁ~とぼくは息を吐いた。


「申し訳ないけど、ぼくはアリスが大好きだからアリスと結婚するつもりです。ごめんなさい」


頭を深く下げる。




「そう・・でしたのね。急に来て悪かったですわね・・ロイドもう帰りますわよ」


王女は席を立った。


「は、はい!」


慌てて後を追いかけるロイド。王女とロイドは店を出て行った。



**



「何だったんだ・・嵐みたいだったな」


どっと疲れた。今日はもう休もう。


「さっきの話、本当?」


「え?」


そういえば、さっき凄い事言っちゃった気がする。


「結婚するつもりだって・・・」


「・・うん。まだ若いし早いかなって思っていて、もう少ししたら言おうと思っていたのだけど」


「嬉しかった。大好きよ。グリーン」


ぼくたちはのんびり家で過ごすことにした。まだ15歳だし、生活基盤が安定したらプロポーズするつもりだったんだけど。まいっか。



*****



「ぐすぐす・・・」


馬車の中でパトリシアは泣いていた。何となく結末は分かってはいたが、泣いているのを見るのは辛い。


「・・なんで、貴方か辛そうな顔をしているのよ・・」


「え・・いや・・その・・」


咄嗟とっさに言い訳が思いつかない。だって、好きな人が悲しんでいたら辛いじゃないか。でもそんな事言えやしないし。


「断られてしまって、お辛そうなので・・俺もそう思ったのですよ」


「ロイドが感情を見せるなんて珍しい・・雪でも降るんじゃないかしら」


「・・・・・」


「嫌な思いさせてごめんなさい。しばらく泣かせてもらえるかしら・・」


「沢山泣いて良いですよ。ここには俺しかいませんからね」


俺はパトリシアの隣に座り彼女の頭を撫でた。しばらく馬車の旅が続くのだ。沢山泣いておくと良い。辛い気持ちは貯めこまないで、涙で洗い流してしまった方がスッキリするからな。

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