第22話 新しい魔法

「うわぁ~これは一体どうしたんだ?こんなに怪我人がいるものなのか?」


教会の外は人であふれかえっていた。確かに今日から通常営業と書いておいたのだけど。見た所2、30人くらいだろうか。


「ミルドスの治療院が閉鎖されたからね。ここが一番近かったから来たんじゃないかな?」


マリリアさんが説明をしてくれた。流石ギルド職員、情報が早い。今日は私服を着ていて胸の開いたワンピースを着ている。


「今日、お休みで来たんだけど・・凄い人ねぇ。いつもこんな感じなの?」




教会の扉を開けて、開放して営業中の看板を立てた。


「あの、よろしいでしょうか」


赤い髪の女性が遠慮しがちに、声をかけてきた。歳は20代だろうか。茶色い眼鏡をかけていて、手には杖を持っている。どうやら、治療目的で来たのではないようだ。


「あたし、シルビアと申します。よろしければこちらで雇って頂きたいのですが・・」


ぼくに向かって、頭を深々と下げている。


「回復魔法使えます!何でも致しますから、お掃除でもこき使ってもらって構いません!」


「え?ちょっと待って・・ごめんなさい、後で良いかな。今は治療する人がいるからね」


ぼくはシルビアさんに答える。今は取り合えず、今日治療に来た人たちを何とかしないといけない。さてどうしようか。取り合えず、治療に来た人たちを教会内に招き入れた。



グリーン 15歳 回復魔法士

スキル 回復魔法 上級レベル3

    防御魔法 障壁 レベルS (女神の加護により消費0)

魔法 ヒール(5)エクストラヒール(30)エリアヒール(100)

   キュア(20)ディスペル(10)

*女神の加護

HP999/999

MP999/999



ステータスを見ると、ヒールは一回に付き5消費するから、30人で魔力量は150消費するみたいだ。女神さまに言われた通り、新しい魔法も増えている。折角だから、ちょっと試してみようかな。大勢いるときは・・この魔法か。


「「『エリアヒール』」」


両方の手のひらを上に向けて魔法を発動する。広い教会の室内が温かい光に包まれた。魔力を使うと体が一気にだるくなる。100も使うのだから、体への負担が大きいのだろう。余裕があるときじゃないと使えないな。


「お、おお?あれ、痛くない」

「ええ?」

「何だなんだ?」


教会内がざわざわと騒がしくなる。どうやら上手く言ったみたいだった。



「グリーン?今、一体何をしたの?」


「「エリアヒール??えええええ!あたし初めてみました!伝説の魔法ですよね。何だか凄すぎるんですけど!」」


「やばくない?グリーンあんた一体何者??」



「えっと。実はエリアヒールってやつを試してみたんだ。大勢いる場合、便利みたいだからね」


僕は右手で頬を掻いた。一人一人に声をかけてみると、予想通りの怪我は治っているようだった。みなキョトンとしていて、何が起こったのか全く理解していなかったようだけど。



*****



昨日、ぼくは久しぶりに夢を見た。あれ、これって見覚えがある。霧がかかったような明るい場所。最初に教会に来た時の夢。ぼくは空中に座っていた。


「お久しぶりですね」


女神ファンティが純白のドレスを着て微笑んでいた。金色の髪が揺れている。


「貴方には感動いたしました。姫を捨て身で助けるとは、全く予想していませんでしたよ・・新たに魔法を使えるようにしておいたので、役に立ててくださいね」


「どうしてぼくにこんなに良くしてくれるのですか?」


「そうですね・・最初は同情でしたけど、ワタクシも貴方を気に入ってしまったのですよ。深い意味は無いから安心してください」


深い意味は無いと言っていたけど、どうしても勘ぐってしまう。何か別の目的があるのではないかと。


女神さまは、ただ微笑んでいた。

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