第9話 女神とアリス

天界で、ワタクシファンティはグリーンの様子を眺めていた。


「大変!グリーンがこのままでは・・そうだわ。あの子に手伝ってもらいましょう」


神は地上に直接干渉できない為、ある人物を使ってグリーンを助けることにする。

あの子なら、ワタクシから近いから伝えやすい。きっと信じて動いてくれるはずだ。

ワタクシは遠隔であの教会に思念を飛ばすことにした。



****



ボタムの森に私はたどり着いていた。


「ここにグリーンがいるのかしら」


見えないものに導かれてやってきたものの、少し不安だ。


「「グリーン!いる?」」


私は大きい声で呼んでみた。返事は無い。しばらく森の中を進むと、人が倒れているのが見えた。


まさか!


私は、慌てて走り出した。

人が・・グリーンがうつ伏せで倒れていた。背中から血が流れている。このままでは死んでしまうかもしれない。


「どうしてこんな事に・・」


何で一緒に行かなかったのだろう。私はひどく後悔した。

気絶しているみたいで・・意識があれば自分で治療できるのだろうか?


私を包む空気が、グリーンに手を当ててと言っているようだった。

まさか私が魔法を使えるわけないのに。


体の奥から熱い物が流れてくる。これ、魔力?

私の体が無意識に動いて、両腕を大きく広げていた。

グリーンを包むように。



****



『ごめんなさいね。体を使わせてもらうわ』


ワタクシファンティはアリスの体に入る。

さすがにアリスでは魔法が使えないから。


『完全回復魔法』パーフェクトヒール


グリーンの体をまばゆい光が包む。背中の深い刺し傷は直ぐに塞がった。


『グリーン、助けるのは一回だけよ。次からは気を付けなさいね』


グリーンの頭を撫でて、ワタクシは頬にキスをした。


『貴方には、特別に加護を与えるわ。よっぽどじゃないかぎり死なないように』



****



「はっ!」


あ、あれ私どうしたんだろ。何だか記憶が飛んでいる気が・・。


「グリーン!生きてるの?」


目の前には倒れているグリーンがいて、私は必死に彼の肩を揺さぶった。

彼の優しい瞳が開いた。


「・・ん?アリスどうしたの。何で泣いてるの」


私は言われて気が付いた。あ、あれ?私泣いてる?


「生きてた・・よかった・・・」


私はグリーンに抱きついてしばらく泣いていた。


グリーンは少し混乱していたみたいだった。

森に入ったところから、記憶が少し抜けているらしい。

体調が悪いようなので、今日の午後の予約の人たちには謝って後日にしてもらう事にした。


教会に帰ってからグリーンは何か思い出したみたいで、怖い顔をして何か考え込んでいた。


一体何を思い出したのだろう。

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