源義経黄金伝説■第5回

源義経黄金伝説■第5回Manga Agency山田企画事務所


■■5


 京都・鞍馬堂宇で鬼一法眼が、西行を待っていた。

「おお、ここだ、西行殿」


「おお鬼一法眼殿、息災であられるか」


「西行殿も、歌名ますます上がられる。うれしい限りだ。それにあの遮那

王、教えがいがある。よい弟子を送り込んでくれたものだ」

「牛若、いや遮那王はそれほどまでに」

「そうじゃ、仏法など、とんと興味がないわ。俺が教える武法のみ。さすがは

源氏の頭領、源義朝殿が和子だな」

「いや、やはり清盛殿の願いどおりにはならぬか」


「それでは、やはり奥州、藤原秀衡殿の手にお渡しするか」

「そうじゃのう。がその前に、武術の腕どれくらいのできあがりかを確かめて

みるかな」


「よい考えだ。さすがは武名高い北面の武士であられた西行殿。して、

相手は」

「近ごろ京で評判の、あの法師はどうだ」

西行は手を打って、

「弁慶か、よかろう」


五条を中心とした平清盛、六波羅政権は、170の大きな屋策をほこり、5200余の

家々をしたがえている。

六条河原と京の葬送地鳥辺野の間を埋め尽くしている。


この北域には、山門武装の資源つまり弓矢を生産する弓矢町を抱合している。


弓矢町はつまり武器工廠である。また、300名からなる「赤かむろ」なる幼年探索第養育所も含んでいる。


この年、「太郎焼亡」と呼ばれる大火事がおこっていて、西の京はまだ焼け跡が

広がっている。京の人間は乱世の始まりを感じ始めていた。


その京都・五条にある松原橋たもとに のっそりと、その大男の僧兵は立ち

塞がっている。

大男にして、筋肉質で敏捷な動きをしている。


「お主が牛若殿か」

 月の光が鴨川の川面に映えている。


牛若が押し入ろうとしていた平家の公達の家屋敷あたりからは、光とさざめきが漏れている。

庶民が住んでいる辺りはもうすでに闇の中に沈んでいる。

東山の辺りも、夜空に飲み込まれていて、遠く比叡の山からのわずかな光が、星のひとつのように霞んでいた。


「私が牛若とすれば、どうする」

 ゆっくりと、牛若は答える。


「そうなればー」

 急に大きな弁慶が、牛若の顔を隠していた布を捲る。


「ふふっ、なかなかよい顔をしている。稚児にするにちょうどよい…」

 少しばかり、沈黙が二人の間に流れ、視線が素早く交わった。


「やはりな、命をもらわねばならぬな」

続く

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