第2話:魚住 ポワレ。

彼女は僕「指輪」と長く離れてると、そのうち自分の存在自体消えちゃう

んだそうだ。

だから、一緒にいなくちゃいけないわけらしい。


それにしても、今の世の中そんな信じられないような出来事あるのか?

常識のある人なら、まず信じないだろう?


信じないないから知らんからと言って、この子を無視もできないわけで、

警察に届けるか、児童福祉施設に連れていくか・・・でもそれは犬や猫を

保健所に連れて行くみたいで、そんな可哀想なことはできない。


まあ、事実はどうあれ、この子が現実にここにいることには違いないわけで、

家族会議の結果、満場一致で一時的に、うちでその子を預かることにした。

とりあえずね・・・フランスに問い合わせるか?このまま僕んちで預かるか、

勝手にそんなことしていいのか?決めなくちゃいけないし・・・。


そして一番驚いたこと。

それは彼女はなんと魔女だってこと。

これが一番驚いた・・・今時魔法使いって・・・もっとも彼女は長い間

指輪の中で暮らしてたみたいだから昔なら魔法使いだっていたかもしれない。


「私は指輪の精で、魔法使いでもあるの」


そう彼女は言った。


「魔法使い?・・・って、あの魔法使い?」


僕は自分の鼻を持って伸ばすジェスチャーをした。


「わしっ鼻のおばあちゃん、想像してるでしょ?」

「ああ言うのは絵本や童話の中にしか出てこないの」


「そうなんだ・・・魔法使いね・・・ちょっとイメージ違うって言うか、

信じられないって言うか・・・」


「そう思いたかったら、ご好きにどうぞ」


「いやいやバカにしてるわけじゃないから・・・」

「でもさ、それにしたって、ひとつ疑問があるんだけど・・・」


「なに?」


「君さ、フランス人だよね・・・なんで日本語がそんなに上手なの?」


「だから〜魔法使いだって言ってるでしょ」

「魔法使いに不可能はないの」


「・・・・・・って言われたら言い返す言葉ないよね」


ってことで、今や彼女は僕の家で家族のように暮らしている。


その魔法使いの名前は「ポワレ」


魚住うおずみポワレ」


「僕の名前が「魚住 かごめ」だからね。


ポワレ・・・ただのポワレ・・・苗字が分からないから彼女は「魚住 ポワレ」

になった。


今のところ彼女は消えてないから、僕と指輪とはうまくバランスが取れてる

んだろう。

そして僕はポワレを連れて、とって置きの風景を見せてやった。

僕の家の屋根の上から見る夕日。


それ以来ポワレは僕の家の屋根の上で夕日を眺めるのが好きになった。

部屋にいないなって思ったら、いつの間にか屋根の上にいる。


屋根の上から眺める夕日はまじで綺麗だからね、嫌なことがあっても

夕日を眺めてると心が癒されるから・・・。


魔女ってヨーロッパの人たちに比べて知識が疎いから僕にはよく分からない

んだけど、魔女ってのは今でいう超能力者みたいなもんだろ・・・。


ポワレとの生活ははじまったばかり・・・彼女についてまだまだ知らない

ことが多すぎる。

ポワレがどんな魔法を使うのかもまだ分からない、でも僕は興味津々・・・

彼女が魔法を使うところを見てみたいよね。


今日も夕方、ポワレは僕の家の屋根の上で夕日を眺めている。

そして時間がある時は僕もポワレと一緒に夕日を眺める。


で、夕日と一緒にドサクサに紛れてポワレの顔を眺めながら思う。

あどけない顔して何百歳も歳喰ってるなんて・・・僕より歳上ってどうしても

思えない。

おばあちゃんなんて言ったら、怒るだろうな。


「私の顔になにかついてる?」


「あ・・・あの・・・その玉ねぎ頭、可愛いなって思って・・・」


とぅ〜び〜こんて乳。

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