雨のネモフィラ

灯鈴古未

往復半歩

往復半歩

 七月十日、ただの平日、何の変哲もない日曜日。

 私は目を覚ますと、そのままもう一度目を閉じた。理由もなく、呆然とした気まぐれである。

 呆然とした日々の積み重ねで生きてきた私にとって、今日という日はあまりに残酷かもしれない。

 目を瞑り、頭の中の雑念を消去する。

 消えない。消えない。

 何でもない私が一歩進むには、あまりにも勇気が必要で、布団からも出れなくて、そうしていると、いつの間にか、まどろみの中。


 ―――たぶん。

 私の不幸も、感情も葛藤も人並みで、誰にでもあることなのだろう。

 願わくば、このままぬるま湯の中で、人並の不幸に浸らせてください。

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