第19話

「いや~これはこれで楽しい夏休みになりそうだな!」


「そうですね。しかし、あちこちに移動する分交通費がかなりかかります。召喚できる魔物を増やすだけじゃ無くて、お金を稼ぐことも考えなくちゃですよ」


大幅な計画変更を余儀なくされたが。

それはそれで楽しい夏休みになりそうだと話しながらご飯屋さんから出てくる二人。


因みに、今回のような失敗をしないように下調べはしっかりしている。


今日に関してはホテルも取っちゃってるし。

妖華町を観光しようということになり、ダンジョンから離れた観光地に向かう。


観光地を堪能しホテルに向かっている最中。

突然乗っている電車が停止した。

当然、駅に到着したから停止したわけじゃない。


誰かが車内の緊急停止ボタンでも押したか?


(只今。ダンジョンで緊急事態が発生したと情報が入りました。安全確認の為、緊急停止しております。安全確認が出来るまで──)


「なぁ、ダンジョンで緊急事態が起きて電車が止まる事ってあるか?」


「外まで危険が及ぶような緊急事態となるとデスパレードぐらいですが……スキルが使えないって事は違いますね」


デスパレードが発生中はダンジョンから大量の魔力が放出され地上にも魔力が存在する状態になるので覚醒者でも地上でスキルが使えるようになる。


魔力を感じないし。実際にスキルを発動させようと試して不発に終わったので、それはないだろうと結論づける。


「あっ!!そう言えば、フグレナードでダンジョンからイレギュラーが出てきたってニュースが…」


そう言えば観光している間の移動時間にチラッと見ただけだけど。そんな記事があった気が…


「なっ何だ!?」


乗っている電車の前方車両から爆発音がなり

電車が揺れる。


一瞬で電車の中はパニックに包まれた。

時間は夕方、満員とはいかないが仕事終わりの人、学生、観光客と結構な人が乗車している。

乗車している人達は爆発音を聞きパニックになっているせいで既に電車内が地獄絵図だ。


恵太と晋平は我先にこの場から逃げようとする人の波に逆らわないように動き電車から脱出する事に成功する。



そのタイミングでさっきまで乗っていた車両に複数の魔弾が飛んできてヒット。


電車の窓が真っ赤に染まる。

それを見た、運良く脱出出来ていた人達のパニックは更に加速。一目散にこの場から離れようと誰もが考えているだろう。

だが、誰一人動く事が出来なかった。


「イレギュラーの魅了か」


「ダンジョンの中じゃなきゃ対策装備だってただのガラクタですからね……」


イレギュラーの広範囲の魅了攻撃に全員対抗できず。動くなと命令された結果のようだ。


何故、わざわざそんな事をと思った瞬間。

近くの人が一瞬でミイラのような姿になり絶命する。


「サキュバスのライフドレイン……それにしても。どうして普通に喋れるんだろう?」


「人が恐怖しているのを見ながらライフドレインをするのが好きだからとかですかね……」


最悪だけど。確かにその通りなら初手から魅了を使わず。わざわざ魔弾で攻撃してきた理由にもなる。

恐怖し叫ぶ人間の声を肴に人間を食べる。


狂ってやがる。と二人は更に恐怖をしてしまったわけだが。食事を最高に美味しくしてくれる音楽のようなもの。イレギュラーを更に喜ばせるだけだ。


一人づつライフドレインで殺されていくのを見ながら、みじめに死にたくないと泣き叫ぶことしか出来なくなっていた二人だったが。


どこからともなく氷柱が飛んできて、イレギュラーの胴体に突き刺さる。


「間に合ったとはとても言える状態じゃないな」


顔を動かす事ができないので直接見ることは出来ないが。

氷柱が飛んできた方角からとても聞き慣れた声が聞こえてきた。



━━━━━白鹿駿サイド━━━━━



「酷いな……」


友人二人が無事だったのは嬉しいが……周囲の被害を見ると良かっただなんて絶対に言えない。


「あぁ?もしかして俺を魅了で操ろうとしてる?淫魔と戦うことが分かってるのに対策しない理由がないだろう?」


尸解仙というか仙人が使う技術の中に魂を魔力で保護して精神系の状態異常から守るというものがある。


事前にそれを使っていたので、魅了は効かない。


いつまでもイレギュラーを生かしておく意味がない。


人が多くいる遠距離攻撃だと避けられた時のリスクが高いので、接近して倒そう。


初手で遠距離攻撃したけど。アレはこっちにヘイトを向けるためだからノーカンって事で……


嘘です。正直、あのときはそこまで考えて無かったです。


「そうじゃん。敵の攻撃も避けられないじゃん」


イレギュラーが魅了が効かないと判断して魔弾での遠距離攻撃に切り替えてきたので避けながら接近しようとしたが、避けると流れ弾が巻き込まれた人に当たる可能性があることに気づき

氷の盾を作り出してガードする。


「クソっアイツ巻き込まれた人を狙い始めやがった」


俺を直接狙うより巻き込まれた人を狙うほうが効果的と判断したのだろう。


魔弾をランダムにばら撒き始めやがった。

何とか巻き込まれた人に当たらないように出来てるけど。防戦一方でジリ貧か?


ここは多少リスクを追ってでも攻勢に出るか?


いや、他の到達者だって此処に向かってきてるはずだし。俺が完全に俺の敵ってわけでもないはずだ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



読んでいただきありがとうございます。










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