第7話 ひめゆりの塔

 映画『ひめゆりのとう』(1982年6月12日公開・142分)で、さだまさしさんは主題歌を担当いたしました。

 主題歌は『しあわせについて』(1982年5月25日発売)です。


 映画『ひめゆりの塔』のあらすじです。

 第二次世界大戦の戦争中、敗戦の日がくることを市井において知る由もないでしょう。各国が悪魔の武器を磨く中、日本も海の彼方の激戦地を退くしかなく、敵は「沖縄おきなわ」へ乗り込んできました。昭和二十年三月、二百名の女学生で編成され、病院の壕を掘り、看護婦として働きました。深刻な戦局の中、せめてもの卒業式を行います。しかし、その最中にも傷付いた兵が運ばれてきました。退避を決め、南へと薬と人を抱え歩き続けます。摩文仁まぶにの先は崖しかありませんでした。六月十八日、解散の指示が出たときは既に遅く、先生とまるでひめゆりのような彼女達には、残酷な結末しかありませんでした。


 この『ひめゆりの塔』は、本当にあったできごとです。


 さて、主題歌の『しあわせについて』です。

 前出の『二百三高地』も戦争映画でもありましたが、主題歌を「やれ戦え」と追い立てるような軍隊のマーチにいたしませんでした。日露戦争と第二次世界大戦では異なりますが、愚かな人災、戦争に変わりありません。「従軍した乙女たちは偉かった」と謳いますでしょうか。いえ、そうはなりません。まだ、未来の長かった筈の彼女らが懸命な看護をして友と繋がり、この一瞬を逃さずに生きたことを誰が哀しまないでしょうか。「哀れみや同情」で「お涙ちょうだい」にしたのでは、魂魄こんぱくに向かい合っていないと思います。その経緯から、主題歌のテーマを「しあわせ」としたと私は信じております。


 そこで、『しあわせについて』のタイトルですが、私は万人に向けてのものだと思います。


 さて、歌詞について読み進めたいと思います。

 冒頭、⦅しあわせですか⦆と疑問形で「しあわせ」を打ち出してきます。建築だとすれば、要はべた基礎きそにして、「しあわせ」に自問自答するかのようでもあり、遠く空の上のあなた、私の愛するあなただけではなく、多くのあなた方へと投げかけているようでもあります。私が学生の頃有志で演劇をしたのですが、脚本を書いた友人は「繰り返すと伝わりやすい」と仰っておりました。さだまさしさんも繰り返しの効果を狙ったのでしょうか。


 また、歌詞に繰り返しもよく見られます。⦅しあわせですか⦆を二度、⦅何より⦆を二度、⦅みんな⦆を二度、番外的に⦅いいのに⦆を韻を踏んで二度、一番の冒頭だけでも繰り返されています。サビでは、「分かりやすさのリフレイン」よりも「作り手のメッセージ性」の作文力へ様相を変えます。


 さだまさしさんの数多ある作品群の中で、ヒットした売れたとはどういうことだろうかと考えます。タイアップの歌は売れやすいでしょう。『親父の一番長い日』(1979年10月12日発売・15枚目)や『雨やどり』(1977年3月10日発売・8枚目)などのしれっと出したシングルが大当たりとか、『案山子かかし』(1977年11月25日発売・10枚目)や『デイジー』(1987年2月10日発売・30枚目)など、後年になり見直された歌など、芽の出方は作品の数程あります。かの『精霊流し』(1974年4月25日発売・2枚目)は、長崎ではなく、東海地方からラジオの風向きで売れたそうです。


 そして、私はまだ花岡姓の頃でした。東京の大きな山野やまの楽器がっきにギターケースと楽譜を求めに行ったのですが、そのときに細長いシングルとして、『しあわせについて』を店舗入り口で見かけました。消費税が導入され、消費税率3パーセントで風を切ったのは、1989年4月1日からです。その際にメリットとして「間接税の重かったものは安くなる」とうたわれたのもですが、一時的なもので販売側も値上げしてきましたね。その新パッケージがCDですと、縦長でケースの半分を折って使えるものでした。『しあわせについて』は、1982年5月25日発売でしたから、約7年後のことです。それでも細長いCDを手にした記憶があるのだから不思議です。


 ◆


 さて、次も映画の作品について書かせていただきます。


 うさぎも大好きさだまさし!

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