第11話 朝日奈とデート⑤
「朝日奈。俺たちはどうする?」
「そうですね。最後にプリクラを一緒に撮りませんか?」
「もちろん。いいよ」
「ありがとうございます」
結局、シューティングゲーム中に朝日奈を嫉妬させることには失敗した。
朝日奈はシューティングゲームに夢中になっていて、藤宮が俺に密着しているところは見ていなかった。
(まぁ、朝日奈を嫉妬させるのはついでみたいなものだから失敗しでも何の問題もない)
今日の本来の目的は朝日奈にデートを楽しんでもらって、朝日奈の好感度を上げることなのだから。
「それにしても、すっかりとシューティングゲームにハマってたな。楽しかったか?」
「はい。楽しかったです」
「どんどん上手くなってたな」
「藤宮先生の教え方が上手でしたからね」
ゲームが苦手と言っていた朝日奈の上達ぶりは凄かった。
それだけ藤宮の教え方が上手だったのか、それとも朝日奈にシューティングゲームのセンスがあったのか、おそらく前者だろうな。
藤宮の教え方は的確で本当に分かりやすかった。
「さすが教師って感じだったな」
「そうですね」
「まぁ、服装は教師っぽくないけど」
「な、永海さんは藤宮先生みたいな服がお好きなんですか?」
朝日奈は少し緊張したような口調でそう聞いてきた。
(お? これはもしかして嫉妬か?)
てっきり気にしていないかと思っていたが、意外とそうでもないのかもしれない。
「そうだな。藤宮先生みたいな大人っぽい服も好きだけど、朝日奈が今日着ているような可愛らしい服も好きだぞ」
そう言って、俺は朝日奈の手を握った。
「何でそんなこと聞くんだ?」
「そ、それは・・・・・・。な、何でもありません。今のは、忘れてください」
朝日奈は顔を真っ赤にして下を向いた。
〈私はなんであんなことを聞いたのでしょうか?〉
どうやら朝日奈は自分が嫉妬をしていることに気がついていないようだった。
☆☆☆
プリクラコーナーに到着した。
俺たちはちょうど空いていたプリクラ機の中に入った。
「プリクラ撮るのなんて久しぶりだ」
「そうなんですか?」
「まぁな」
向こうの世界では何十年も撮ってないし、こっちの世界では最後に撮ったのは五歳の時だったと思う。
五歳の時に両親と一緒に撮ったのがおそらく最後だ。
恋人はもちろん友達のいなかった俺にはプリクラを撮る機会はなかった。
「今のプリクラって凄いんだな。俺なんかでもイケメンになるのか」
「全くの別人になりますよね」
「それは元の俺はブサイクってことか?」
「ち、違いますよ。誰もそんなこと言ってないじゃないですか!?」
朝日奈は慌てて首を横に振った。
もちろん朝日奈がそんなことを思っていなことくらい分かっている。
「それに永海さんは、か、カッコいいと思います」
「お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃありませんってば」
「なんか同じようなこと入学式の時にも話したよな」
「そういえば、そうですね。本当にお世辞じゃないですからね?」
〈永海さんはカッコいいです。少なくとも私からしたら誰よりもイケメンさんです〉
「分かってるよ」
そんな朝日奈の心の声を聞いてしまってはお世辞と思うわけがない。
「朝日奈が俺のことを好きだってこともな」
「な、何言ってるんですか!? わ、私が永海さんのことを好き!?」
「あれ? 違ったか? てっきり、俺のことを好きだからデートに誘ってくれたのかと思ってたけど」
「それは……分かりません。恋というものをしたことがないので」
「じゃあ、これから俺に惚れさせてやるよ」
「ふふ、何ですかそのセリフ。永海さんは漫画の主人公だったんですか?」
「朝日奈にとっての主人公にはなりたいかもな」
「永海さんがそんなにキザなことを言う人だとは知りませんでした」
ツボに入ったのか今までに見たことがないくらい朝日奈は笑っていた。
キザなセリフを言ってしまうのは向こうの世界の名残だ。
向こうの世界ではヒロインたちにキザなセリフを言いまくっていた。
昔の俺だったら絶対に言わないだろうなというセリフをたくさん言ってきた。
だから、向こうの世界での名残が残ってついキザなセリフを言ってしまった。
朝日奈にハマったみたいだからよかったけど、ハマらなかったらスベっていただろう。
「まぁ、出会ってまだ四日目だからな」
「そうですね。お互いまだまだ知らないことだらけですもんね」
「そうだな。俺も朝日奈がキザなセリフが好きだって知らなかったし」
「私も永海さんがキザなセリフを言う人だとは知りませんでした」
俺と朝日奈はお互いの顔を見つめ笑い合った。
「てことでプリクラ撮るか」
「そうですね。撮りましょう」
プリクラ台にお金を入れ撮影がスタートした。
指示されたポーズをお互いにして何種類かの写真を撮った。
撮影が終わり、写真に写った俺と朝日奈を見ると、二人とも今日一番良い笑顔をしていた。
☆☆☆
ゲームセンターを後、朝日奈を家まで送り届けるために朝日奈の家に向かって俺たちは歩いていた。
「永海さん。今日は急なお誘いにも関わらず、一緒にお出かけをしてくださりありがとうございました」
「お出かけじゃなくて、デートだろ」
「そうでしたね」
「こっちこそありがとうな。朝日奈と一緒にデートできて楽しかった。ハンバーグも奢ってくれてありがとな」
「いえ、もともとは永海さんが私を助けてくれたお礼ですので」
「朝日奈は今日のデート楽しかったか?」
「はい。とても楽しかったです」
「そりゃあ、よかった」
朝日奈が楽しんでくれたのならそれ以上のことはない。
心の声を聞くまでもなく朝日奈の浮かべている笑顔が嘘をついていないという何よりの証拠だ。
「あの、もしよかったら、また私とデートをしてくれませんか?」
「もちろん。朝日奈からのデートの誘いなら断らないよ」
「ありがとうございます。では、またデートに誘わせてもらいますね」
「いつでも誘ってくれ。俺からたまにデートに誘ってもいいか?」
「もちろんです。永海さんからのデートのお誘いお待ちしていますね」
俺が狙っているハーレム候補は他にもいるが、とりあえず今のところは朝日奈の好感度を100にしてしまおうと思っている。
今日一日で朝日奈の俺に対する好感度はかなり上がっていた。
朝日奈の今の俺に対する好感度は92だった。
「ところで、ここまで送ってもらって何なんですが、永海さんのご自宅はどちらにあるのですか?」
「ん? 俺の家か? 反対方向だな」
「え、そうなのですか? すみません。もっと早く聞いておけばよかったですね」
「気にするな。俺が朝日奈と少しでも長く一緒にいたいと思ってわざと言わなかっただけだから」
「それは私もそうですけど……帰りは家の者に永海さんのお家まで送らせますね」
「そこまでしてもらわなくてもいいけど、せっかくならそうしてもらうかな」
「はい」
それから二十分くらい他愛もない話をしながら歩いていると朝日奈の家に到着した。
☆☆☆
次回更新4/17(水)7時
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