第18話

「エリス」

「お、おはよう……クロくん……」

「おはよう、魔法は何かあったか?」

「図書館が焼け落ちたから残ってないかもしれないって」

「そうか」


 困ったね。本当にできることが少ない中でこれは……魔法と違ってあっさりなんとかなるようなものでもないだろうしさ。


「この後はどうする?」

「?」

「何処か行く予定はあるか?出来たか?」

「ないよ?」

「そうか……」

「うん」

「自警団を再編するまで残って街を守ろうと思うんだがどうだろう?」

「いいよ」


 案外あっさりと決まったな。嫌がる時はもうすこし沈黙があるし大丈夫そうだな。


「ク、クロくん!」

「どうした?」

「せ、聖剣なんだけど……」


 そっちから話してくれるのか、なんで秘密にしてたんだろうな。


「勝手に……出てきたっきり消えないの……」

「勝手……?聖剣召喚してなかったか?」

「一か八か……やってみた……」

「出来ないとか出来たとかじゃなくてそもそもないのか?」

「本来は……取りに行く必要があるとか……なんか言ってた」


 なんか……か、俺が立ち会ってないか呆然としてたときだろうな。エリスもいっぱいいっぱいでダメだったんだろうな。


「じゃあ聖剣は取りに行かなくていいのか?」

「ここにあるし……」

「ん?普通の剣になったのか?」

「派手で目立つから……無理やりこうした……」


 魔法か?聖剣の能力か?まぁそれはいい。


「じゃあ誰かと聖剣を取りに行くみたいな約束はしてないんだな?」

「うん、してないよ……覚えてないけど……」


 覚えてないところが不安だが……まぁいいだろう。


「じゃあここでしばらく過ごすでいいんだよな?」

「うん、だからいいよ……」


 そうと決まれば、何するんだろうな……?




「2人で話し合った結果、自警団再編までは残ることにしました」

「ありがとうございます……!ありがとうございます……!」

「それで、えーと……お名前を聞いてませんでしたが」

「あ!失礼いたしました学術都市行政区長の……いえ、臨時市長のグレゴリーです」

「市長、しばらくお世話になります」

「いえ、こちらこそ……お世話になります……」


 偉い人だったな、偉い人になってしまったのかもしれないが。そりゃあ困るよな、市長達が死んでるとか。


「冒険者になって活動したほうがよろしいでしょうか?私はジョブ無しで……」

「勇者様のお付きなら問題ないのではないでしょうか……?そちらには疎いのですが……」

「まぁ一応取っといたほうがいいかなぁと……勇者の肩書が通用するのかわからないでしょうし」

「……まぁ確かにそうですね……一応頼みたいことは直接頼みに行きますが冒険者組合を通す必要がある時はそちらで指名します。指名したことも組合に依頼出したこともないのでよくわかりませんが……」

「とりあえず……そちらでほそぼそ仕事をしておきます」


 やっぱ柄悪いのに絡まれたり、ハプニングが多いのかね?大問題としてエリスを連れていけるかってのがあるな。



「……代理じゃダメ……?」

「ダメじゃねぇかな」


 ほらな?

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