第8話

「エリス?」

「(ビクッ!!)」


 釣り上げられた魚が地面ではねたような反応をしたエリスはギギギ……となりそうな油をさしていないロボットのように振り向いた。


「ク、クク、クロくん、どうしたの?」

「その言葉、そっくりそのまま返すよ」

「わた、わたし……私は……魔法を見てたよ?見てた!」

「そこ魔法の棚だったっけ?」


 たしかそこは……どう見せるかみたいな、神官が説法に使うようなやつじゃなかったっけ?

 ああ!喋り方の参考にするためか、まぁ俺のためだけに時間使わせるわけにもいかんしな……それは恥ずかしいよな、俺が自分磨きの方法とか読んでるところ村の同世代の奴らに見られたら数日引きこもるわ。


「…………魔法だよ?」

「そうか、なんかあった?マクイラさんが今日は終わりにして夕食の準備をするって。もう少ししたら呼びに来るから借りる本は持っていこう」

「後で行くね……はいこの本」

「おっ、ありがとうな」


 あなたの魅力に相手を気づかせる方法


「(パッパッ)」

「これちが……あれ?」


 弱点看破魔法


 絶対違ったけど……あの一瞬で入れ替えられた?これが勇者の力……とは関係ないか。にしてもこれはすごい魔法だな。ゲームでよくあるやつだろ?使い方は真贋魔法みたいなもんだろう。えーと……うーん……まぁなんとなくは分かるな。これどこまで使えるんだろう。そのへんの本に使ってみるか


 デート100選

 弱点 火・炎・水・氷


 だろうね、本だもん。


「お、覚えた?」


 後ろに本を隠しながら聞いてくるエリス。これ人間にも使えるのかな?


「うん、使えるよ。これ人間にも使えるのかな?」

「使えたよ、あっ、ううん!わかんない!」


 あっさり使えたって言ったな、もしかして俺に使った?エリスすごい目をそらしてる。下手な口笛を吹くな、一応書庫だぞ。絶対に目を合わせようとしないな……。じーーーーっ……おっ、ちょっと目があった。


「さ、先行ってて!」

「ふーん……」


 えい!弱点看破!


 エリス

 弱点 クロ


「えっ?」

「?…………!!」


 エリスの弱点が俺?なんだそ(スッ)




「クロくん、おきて、夕飯だよ」

「え、ああ……」


 あれ?俺何してたっけ……?記憶がない……


「俺何覚えたんだっけ?」

「えっ、ちょっとまってね!弱点看破だよ」

「そうだったっけ……?」

「倒れた時に頭を打ったのかも……治癒魔法をかけるから目を閉じて……」


 目を閉じる必要があるのか……?倒れたときにはかけてくれなかったんだろうか……。ああそうだ!看破魔法を覚えたんだ!なんで忘れてたんだ?


「ねぇクロくん!思い出した?」

「ああ、思い出したよ」

「クロくんが本を探してる時に分けてあった本がったよね?覚えてる?」

「分けてあった本……あったっけ?」

「魔法の本が2冊なかった?」

「いやどうだったかな……?記憶はないし見てないんじゃないかな」

「そう……もう一度治癒魔法をかけるね♪」


 なんの指標だったんだ?忘れてるとまずいのか?魅力的に見せる魔法と異性にモテる魔法だ!


「思い出した?」

「ああ……うん……」

「クロくんも男の子なんだね♪」


 何だこの屈辱感は……そもそも俺はなんで倒れたんだ……?看破魔法を覚えてどうしたんだっけ……?エリスが……なんで一緒に戻ろうとしなかったんだっけ……?看破魔法をエリスに……?

 いや、そんなことをするのは良くない絶対にしちゃいけない。

 そう誓った俺を見るエリスはどこか妖艶で、そして満面の笑みを浮かべていた。


「クロくん、じゃあご飯食べよ♪」


 ふと見たエリスの机にあった制約魔法関連の本が気になったが俺は夕食に行くことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る