隣人

 その鳥は俺を不思議そうに見つめた後、持っていた木の枝をその場においてまた飛び立ち、また木の枝を持ってくるという作業を繰り返していた。

(まさか…鳥の巣を作ろうとしてる?)

 そんなまさかと思いつつも目の前の『それ』は、明らかに鳥の巣だった。すこしずつできていく巣を俺は、なにもできず見守ることしかできなかった。

 とうとう完成した巣を見て満足したのか、それとも疲れてしまったのか、その鳥は巣の中で眠ってしまった。

 思いがけぬ隣人ができた俺は、(なにもしてこないならいいか)と軽く思っていた。


 次の日の朝、俺は大きな鳴き声に飛び起きた。なんだと思うと、鳥が鳴いている。なんだか、鶏のような習性だ。

 それにしても隣で鳴かれるとうるさくて仕方がない。

 あまりにうるさいので、ハエトリグサの部分で少し噛んで(甘噛みだよ)やった。すると鳥はこちらを見た後、鳴くのをやめてくれた。以外と頭はいいらしい。


 昼頃になると、鳥は飛び立ち、どこかに飛んでいった。おそらく食事をしに行ったのだろう。

 少しすると、小さめの獣のようなものを持ってまた巣に戻ってきた。肉食なのかと思ったのもつかの間、木の実や魚などといった様々なものを食べていった。雑食で好き嫌いはなさそうだ。


 夜になると鳥は、巣の中で気持ち良さそうに眠ってしまった。




 そんな一日が数回あって、俺はついにその鳥と意思疏通してみようと思った。

 ここ数日で鳥の頭がいいということはわかっている。

 友達くらいにはなりたいという微かな希望を持って、俺は相手にジェスチャーで話しかけた。

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