第3話虫

 おひさまがかたむいて、夕方がちかづいてきました。

 チィチィは、昨日の夜から何も食べていないのでおなかがすいてきました。


 メガネザルは、バッタやカマキリ、コオロギなどの虫を食べます。さいわい草むらのなかで、それらの虫も見つけることができました。


 チィチィは大きい目をキョロリとさせて、ぐるりと首をまわして、離れたところから虫を見つけます。


 虫がチィチィに気づかないうちに、ピョンと跳んで一瞬で捕まえてしまいます。


 これはおかあさんに教えてもらった、メガネザルの狩りのしかたです。

 本来なら木の上からジャンプするのですが、今は地面にいるので、いつもとはちょっと違っていました。


 それでも、失敗なくどんどん捕まえては、もぐもぐと食べてしまいます。


 おなかがいっぱいになったチィチィは少し眠くなってきました。

 いつもならおひさまが出ている昼の時間は、おかあさんと木に枝につかまって寝ているはずなのです。


 それなのに、今日は早くから起き出して、家がなくなって、ひとりで別の森を目指してきたのです。


 チィチィはとても疲れてしまい、地面のへこみに座って空を見上げました。


 おひさまは西の空に沈んで、あたりがほんのり暗くなってきました。

 ようやくまぶしさがなくなって、あたりがよく見えるようになりました。


 昼に動いていた生き物が巣に帰り、チィチィたちメガネザルのように、夜に活動する生き物が動き出す時間です。


 目的の森は、もう目の前です。森までたどりつけば、木の上でゆっくり眠れるはず。

 でも疲れてしまったチィチィは、すわったまま動きたくなくなってしまいました。

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