鉄ヲタでも恋はしますよ

新金運転所

第1話 いつもの朝

 ピ ピ ピ ピピッ ピピッ


 俺は腕を伸ばしてアラームを止め、時計を見ると6:00を示している。「ふぁぁ~、もう朝か。今日は金曜だから今日一日乗り切れば明日は休みだな」


 俺、上野 つばさは高校二年生。身長は170cmで平均的だし体重も60kgだから平均値内の下の方。学校の成績も全教科平均なら80点台なので学年順位は真ん中辺りをウロウロする程度だし、だいたいが学校のレベルだって高校受験の時に調べたら必要偏差値は55とやはり平均的。まぁ顔の造りは他人様の評価次第だからどうにもならんが自分的には可もなく不可もなしと思っている。なので俺には常に『平均』って言葉が付き纏うのだが、決して嫌いな言葉では無く『モブキャラ』を自認する俺にとっては案外と性に合うんだな。


 未だ眠気から抜けないままリビングへと降りて行く。我が家は二階建ての一軒家で、それほど大きな家ではないが二階には三部屋在って真ん中が俺の部屋だ。一階は1LDKと風呂と洗面台、トイレなのでリビングは結構広く真ん中に大きめなテーブルが在り食事は其所で摂る。

「父さん、おはよう」

「翼か、おはよう」

 リビングに行くと既に父が作業服で朝食を食べていた。

 父、上野 康彦やすひこ。見た目は「ロマンスグレーの素敵なおじ様」って感じだがなかなかの苦労人である。父さんが10歳の頃に両親(俺の祖父母)と兄妹を事故で失って一人ぼっちになってしまったそうだ。その後は祖父の弟夫婦、父から見れば叔父夫婦に引き取られたそうだがこの叔父とかいうヤツが人間的にはクズと言える人で父はかなり酷い扱いをされたそうだ。祖父の少ない遺産も「これはお前の養育費と学費だ!」と言って父には一銭も渡さなかったと聴いた。父さんはそれでも公立の工業高校迄は行かせてもらったけど卒業すると祖父の旧知である町工場の社長に迎え入れてもらい、尞住まいから父の結婚を機に下請けって形で独立をさせてもらったという。


 俺はリビングからキッチンに入り食パンをトースターにセット、自分のマグカップにインスタントコーヒーを入れてお湯を注ぐ。


「翼は相変わらず朝はパンだな。朝は米を食わないともたないぞ」

「朝は簡単で良いんだよ。昼は母さんの弁当でしっかり食べるから。で、母さんは?」

「あぁ、事務所へ行ったわ。何でも昨日中に片付ける書類が終わらなかったとか…あ、帰って来た」

 リビングの入口を見ると母さんが入って来た。


 母、上野 愛子あいこ。息子の俺が言うのも何だけど結構な美人だ。どちらかと言えば可愛いと言うより綺麗系な顔立ちで性格は明るく、コミュ力も高い。俺が小さい頃は「何で父さんみたいな平凡な人と?」って思っていたのだが、母さんも父さんとは違う方向で苦労してきた様だ。母さんの実家も我が家と同じく町工場を営んでいるのだが、母さんは四人姉弟妹の長女。祖父母は仕事が忙しく「お姉ちゃんなんだから弟妹の面倒は見るのが当然」と言われ続けたとかで、小学生や中学生の頃は友人と遊びたいのを我慢していたそうだ。しかし、そんな我慢も嫌気のHPがMaxに達して祖父母の反対も説得もスルーして中卒で町工場の事務員として就職。其所で父さんと出逢い父さんの猛アタックで16歳の時に結婚して一年半後に俺が産まれたって事らしい。だから母さんは未だ30代前半の若い母親なんだけど…『上の子が下の子を面倒見る』って事だけは刷り込みの様に残り、俺は未だに言われ続けている。

「母さん、おはよう」

「翼も起きてたのね。お弁当出来ているから忘れずにね」

「ほ~い」と言葉を交わすと登校の準備をする為に自室へ戻り、部屋着から制服に着替えて鞄の中を再確認。


「忘れ物無し!」と指差確認して鞄を持って階段の所へ来ると下から「光を起こしてね~」と母さんから声を掛けられた。腕時計を見ると少しだけ余裕が有るので自室の隣部屋の扉をノックするが…反応が無い。


「あいつ、また未だ寝てるな」と思いながら扉を半開きにして顔だけ中に入れると確かに絶賛爆睡中のヤツ。


「お~い、ひかり!」

「………」

「もう7時近いぞ!早く起きて朝食食べないと遅刻するぞ!」

「…うぅ…あ、お兄ちゃん」

「寝惚けてないで早よ起きろ!俺は電車の時間があるから行くぞ」

「行ってらっしゃ~い……」

 ありゃ未だ半分以上は寝てるな。そう思いながらリビングで「父さん行って来ます」「気を付けてな」「母さん行って来ます。ひかりに声掛けたけど、まだあやしいから後でもう一回見て」「分かったわ、行ってらっしゃい」


 玄関で通学用の靴を履き、もう一度「行って来ま~す」と言って駅へ向かった。









 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 作者より

 全くの素人が「ノリと勢い」だけで描いた作品です。どの程度の量になるのかは作者本人にも解りませんが、出来れば完結できる様に頑張ります。仕事の都合上、更新は週1~2回程度ですが、宜しくお願い致します。



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