第27話【ダンジョン制作】まずは基礎を作ろう【1日目】


26話の71と72を変更しました

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「まず一層はこのままじゃだめだな…」


 宝玉に触れ、メニューの調整を選択する。


 さて、これからダンジョンを本格的に作ることで、一度しっかりと今のダンジョンを調整しないといけない。


 7層と低い階層数は、一見数も少なく簡単に思えるが、ダンジョンであれば話が別だ。ダンジョンの難易度は、階層数が少ないほど最初から最難関となる。


 確か今見つかっているダンジョンで、一層すらクリアできないダンジョンも何個かある。防衛という面で見れば俺もそのくらいの難易度にしてもいいかもしれないが、それでは駄目なのだ。


 FWを増やすためには、リスクとメリットを考えてメリットが高く、人が何度も通いたくなるようなダンジョンを作らなくては駄目なのである。


 その視点で見るなら娯楽施設はとてもいい。


 一層をまるまる娯楽施設として運営するとなると結構考えなければならない層となるだろうが、カジノで遊んだり、温泉で体を癒やしたり、ダンジョン内で泊まれる宿があったり、普通のダンジョンなら絶対にありえないことができるのは俺のダンジョンの強みだ。


 大々的にやるのは少しまずいかもしれないが、このダンジョン内だけで使えるチケットを現金やダンジョン産のアイテムと交換、そしてそのチケットをカジノで増やし、アイテムと交換できるというような形で運営すれば一般の人たちはあまり違法性も感じないだろう。


 っと、少し広げすぎたな。まあ、つまり人が程々に楽しめるダンジョンを作らなければならないというわけだ。


 だからといって無料でバンバン配るのも少し違う。特別だからこそ人はそれを得ようとするし、得たときの喜びは大きいものだ。


 天使はルエルやフラムを見てわかるが見た目が良い。これから召喚しようと思っている天使や大天使の見た目が、彼女達レベルとは言わずとも、彼女たちの二分の一でも有れば人々はこぞって自分の推しに会うために通ってくれるだろう。


 二層は今使っている神殿の通路を迷路のような形にして、天使を二人ペアで徘徊させる。殺傷は禁止で、障害物に隠れながらダンジョンの奥を目指す…これなら犠牲も出ないし、彼らも程よいドキドキで進むことができるだろう。


 見つかっても死ぬではなく、ダンジョンの機能である入り口に転移させる罠を利用し、入り口に戻されるというものにすれば、彼らも安心して挑戦できるだろうし…


「一層でダンジョン内の映像を放送するのもありだな…」


 人が何かを頑張っている姿というのは皆興味を持つ。ダンジョン配信者という仕事に需要があるということはそういうことだろう。


 挑戦者の様子を見れるモニターを設置すればそれ目当てに来る探索者にも期待できるな。


 渋谷のカメラみたいにそれを生放送で公開し続けるのもありだな…


 人が何かをするということは、その人にしかないドラマが生まれる。有名人が挑戦してくれて、何か大きなイベントがあればその映像を見せてくれてありがとうという感謝が生まれ、FWにもつながるはずだ。


 見つかりそうなドキドキ感、ドジッたときのやったなぁ!という面白さ、クリアしたときの感動…いいんじゃないか?


 探索者がダンボールに隠れた場合、天使達にそれを見逃させたりすれば、彼らは面白がってさらなる何かを行い、それを見た他の人たちは面白がってFWとなる。俺が何かをしなくてもFWは沢山増えることになるだろう。

 

 よしよし、構成が固まってきたぞ?


 二層は現在通路として利用していた道を下に移動させ、迷路型にし、転移の罠を設置、天使たちも召喚して、どうやって動くかを指示しないとな。


 少なめだが、宝箱などの報酬も用意して…たまにアラームの罠とかも付けておくか。


 ここは安価で何がほしいか聞いておこう。


 二層の入り口にルール説明の看板も設置しておくべきだな。


 ……と、とりあえず第二層の構図は置いておいて、まずは第一層を作ろう。


 参考資料は巨大な円形闘技場。中央に第二層への階段を配置し、周りには沢山の人が座れるような座席。座席は石で作った簡易的なものだが、まだ人もいないし問題はないだろう。


 神殿の雰囲気を崩さないような形で…モニターは昔のヨーロッパの鏡みたいな外見のほうがいいか。


 あまり何人も一気に挑戦されると困るな…入り口に天使を配置して、二層に入れるのは何名までという制限をつけてもいいかもしれない。


 大きなモニターをはめるのは…まだいいか。あとで設置することにしよう。


 全体的な形を作る。もうここまででもわりと形になっているような気がするな。とりあえずは十分だろう。


 最後にダンジョンの入り口だが…闘技場の中に設置するか。そのすぐそばに直接上がれる階段を設置作ればいいだろう。普通ならありえない形だが、この闘技場で誰かが戦うわけでもないしな。


「よし、こんなもんか」


 細部の装飾にもこだわりながらダンジョンを制作すること1時間、結構満足行く出来栄えの、白いコロシアムの見た目の第一層が出来上がる。


 観客席の出口にはカジノや温泉、宿泊施設などへ向かうことができる通路を作ろうと思う…が、今はまだ必要ないので後回しだ。


 そうして、ようやくのダンジョンとして機能する二層の制作に取り掛かる。


 とは言っても、こちらは特に難しいものではない。今まで使っていたような通路を外見はそのまま曲がり道、3本の分かれ道などにしていき、偶に隠れれる部屋などを設置していく。


 一定の間隔で柱の影に転移の罠をわかりやすいように設置。


 こちらは30分ほどで終わらせる。よし、こんなもんだろう。一、二層は大体こんなもので大丈夫だろう。


 あとは…


「フラム、ルエル、ちょっといいか?」


 部屋の端で翼に包まって落ち込んでいたフラムとパソコンで流していたロボットアニメをぼーっと見ていたルエルに声をかける。


「何でしょうか!?」


 勢い良くこちらに来るフラムと、トコトコとよってくるルエル。


「いや、今から新しい天使を召喚しようと思ってるんだが、何かアドバイスはないか?」

「────新しい……天……使………?はっ…ははっ…そうですよね。私のような愚かで無能な天使など主の配下として相応しくないですよね。新しい天使を召喚した際は私のことはゴミのように使い捨てて貰うことでようやくゴミのような私にも主の役に立つことができ…」

「あ〜、違う違う。ダンジョンの防衛用に新しい天使を召喚するって話」

「防衛用…ですか?」


 危ない危ない。あとちょっとでフラムのヘラりゲージがマックスを超えるところだったぜ…


 この2日間、自殺すると言わなくなったのでまだマシな方だが、やはり精神的に不安定だな…他の天使もこうなのだろうか?


「そうそう、それで、どの天使がいいとかおすすめを聞いておこうかなって思ってね」


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DP︰698,000 DP

FW︰150,000

『召喚』『調整』『交換』

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 現在DPに余裕はあるが、FWはあまり心もとない。


 天使によってFWの必要数が違うようなので、熾天使や智天使を召喚しなければある程度は召喚できるというのは二人から聞いたのだが、だからといって無限に天使を呼べるわけではない。


 できれば忠誠心があり、ある程度の常識を持った、会話ができ…個性的な天使を召喚したい。個性的な天使であってほしい理由はやはり数多くの人癖に刺さる天使のほうがFWを稼ぎやすいと思ったからだ。


「そうですね…実力という面で見るのであれば、天使でも大天使でも権天使でも、特に違いがあるわけではありません」

「そうなの?50,000DPも違うけど…」


 一番低いDPの天使が50,000DP、その一つ上の天使が大天使で100,000DP。権天使は150,000DPだ。


「基礎的な能力に多少の差はありますが、弱い強いと言うのは神能の有無が関係しています」

「神能?」

「私は、主によって神の炎という権能を与えられています。このような神能は、信者の数によって威力や効果が増減します。中でも上位の神能を最大限の効果で使用するには膨大な数の信者が必要です」

「へぇ、なるほど…」


 つまり、弱い天使の場合はFW消費は天使の体を維持する程度の数で十分ってことか。


「フラムを召喚したとき、FWを500,000くらい持って行かれたんだけど…何割くらいなの?」

「そうですね…全力で神能を使用したとしても、全盛期の4、5割程度でしょうか」

「4、5割…」


 あれだけFWを消費しても4、5割しか力を使えないはずなのに、軽く能力を使っただけであの威力って…やはり強すぎる。彼女がいれば大体のことは解決するだろう。


 とはいえ、ダンジョンを守るには数が必要である。フラムが言うには特に誰を召喚しても問題ないようだし…どうしようかな?


 第二層以降は全く作っていないためFWが無くなるのはまずいが、とりあえず第一、二層に配置する天使だけでも召喚しておきたい。


 たとえ人が来ても二層をクリアさせなければいいだけだ。


 ハリボテで運営を始め、あとから作っていけばいい。


 とはいえ、まだまだDPは必要なので……


「9人だな」


 二層の入り口の門番役2名、そしてダンジョンに挑むプレイヤーを見つける役5名、そして一層の巡回役2名。これが最低限だ。


 ここから娯楽施設や宿泊施設の運営、管理をする天使も召喚して、全員の仕事を交代制にしてとなると、相当な数が必要だな…


 それと1グループに1人、リーダーとして大天使を召喚する必要があるだろう。ギリギリにはなるが仕方ない。まとめ役というものはとても大切である。

 

 天使は不眠不休で働けるらしいので、新しい天使が確保できるまでは頑張ってもらわなければならないだろう。


 とは言ってもダンジョンを開放するのはまだ先の話だし、それまでに交代のメンバーは召喚できるはずなので、そこまで問題にはならない…と思いたい。


 ん〜…誰にしようかなぁ?


 聞いたことあるような名前の天使もいれば、全く聞いたことのない名前の天使もいる。


 大天使もなかなかの数だ。こういうの、全然選べないんだよなぁ…


 安価も難しいな。この数の天使を共有するのも難しいし、歴史に登場しない情報のないような天使も多いだろう。


 うーん……よし。


「直感で決めるか!」


 悩んでも仕方がない。とりあえず強そうな名前の天使を召喚していくぞ!


 そうして俺は、適当に良さそうな天使を召喚していくのであった。

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