もうゾンビアタックはやめてくれ!〜社畜魔王とポンコツ勇者〜
こーろぎガラガラ
第1話 魔王の日常
「ああ…嫌だ…!!勘弁してくれ!!!もうこんなことしたくないんだー!!誰か助けてくれ!!!」
「はいはい、もうすぐ勇者御一行が到着なされるころですから、さっさと準備してくださいね〜。」
俺は、この魔王城の主でありこの魔界全土を統べる最凶にして最悪の魔王…だったのだが、最近とんでもない人間?に日々頭を悩まされ続けている。
「あいつは一体何なんだ!!?倒しても倒しても倒しても倒しても!!!次の日にはケロッとした顔で復活して戦いを仕掛けに来やがる!!!」
「彼は、この世界の神から寵愛を受けた勇者です。
勇者は基本的に肉体が滅びることはありませんし、メンタルの方も恐らく神に弄られてるみたいですから、何度倒してもまあ無駄でしょうね〜。」
こいつは俺の側近で、名をシルヴィマ・ニア・バレンタインと言い、ヴァンパイアロードと呼ばれる魔物の上位種かつ、この魔王城のNo.2と言ってもいいほどの実力者である。
今までは、この城への侵入者の処理はコイツを含む他の部下たちに任せていたのだが、どいつもこいつも最近明らかに手を抜くようになってきて、ほぼ毎日飽きもせずに特攻してくるバカ勇者と俺が戦わざるをえない状況になっている。
「だとしてもだ!!昨日は20回も来たんだぞ!?この魔界で最も危険で生きて辿り着くことは不可能と呼ばれる魔王城の玉座の間に!!20回だぞ!!?20回!!!!ふざけるのも大概にしろぉ…!!!!」
「正確には彼らが魔王城に来たのは108回で、そのうち第三の間まで進んだのが42回、玉座の間手前まで来たのが30回、魔王様とご対面なさったのが22回ですね。全てにおいて過去最高記録ですよ〜。」
シルヴィは、まるで他人事かのように「おめでとうございます〜」なんて吐かしながら、手をぱちぱちと叩いている。
「ふざけてんのか!!!???観光スポットじゃねーんだぞうちは!!!だいたいあいつらがここにくるまでの道中で死んだのだって、トラップばっかりで部下どもに倒されたの一回もねーじゃねーか!!
警備はどうなってんだ???あいつら自分達の仕事を放棄しやがってよぉ…!!!」
「そんなこと言ったってしょうがないじゃないですか〜、彼らは魔王様が勇者達とお会いになるずーっと前から勇者達と戦い続けて、連勤も物凄いことになってましたし〜、城の門番に至っては鬱病一歩手前だったんですよ〜?部下達にも家庭があるんですから、ずっとこき使うわけにもいかないじゃない、ですか〜。」
「それもこれも…!!全部あいつらのせいだ!!!
あのゴキブリよりもしぶといクソ勇者どものせいで!!!ちくしょぉぉ…!!!!!」
「あ、玉座の間の見張りから連絡が来ましたよ〜。
勇者御一行が、到着なされたようです〜。それでは、私別の業務があるので後のことはよろしくお願いしますね♪」
「あ、ちょっ!!まっ…!!」
俺が側近を止めようとしたその瞬間、忌々しいアイツらが玉座の間の扉を派手に開けて入ってきた。
「頼もうーーー!!!魔王よ!!!!!今日こそは観念してもらうぞ!!!!」
「あたしたちが、昨日までのあたしたちだと思ったら大間違いなんだからね!!」
「な…なんどもすみません…。でも、これも使命ですので…。」
「…フン。吾輩の手にかかれば、魔王など普遍的な存在に過ぎん。」
「「「「魔王よ!!!覚悟!!!!!!」」」」
バァーン!!という効果音でも鳴ってそうな勢いで、お決まりの決めポーズをキメて、"いつもどおり変わり映えのしない様子"でアイツらは現れた。
「…よく来たな。勇者一行よ。さて、早速で悪いんだが、今日のところはお帰り頂こう。」
出会い頭に俺の全体即死呪文ブッパを受けた勇者達は、1人また1人とパタパタと倒れて行った。
「くっ…開始早々こんな手を使ってくるとは…!!卑怯なり…!!!魔王…!!!」
最後に残った勇者のような格好のリーダーらしき男も、これまたお決まりの恨み言を残してパタリと倒れた。
「…このパターン、もう6回目なんだけどな…。」
キレイな死体が四つゴロンと転がった静かな玉座の間に、俺の呟きだけが寂しく響いた。
to be continued...
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