第43話 喋れるドラゴン

「おい、なんだ……チアリーダーの服に水着、白衣……どういう経緯で使うつもりなんだ!」

「趣味に決まっているでしょ! そんなにジロジロ見ないで!」

「おい、なんだ! この箱は?! 押したら馬鹿でかいものになって、危うく圧死する所だったぞ!」

「それは馬なし馬車だって! 馬がなくても運転できるの!」

「なんだ、それは……おいおい、この液体はなんだ? まさか人の頭を混乱させる非合法な酒じゃないだろうな!」

「違うわ! 酔い止めよ、酔い止め薬!」

「酔い止めだと……スンスン……うーん、梅の香りだが、あまり良い臭いはしないな……おい、待て。なんだこのお菓子は! これも非合法じゃないだろうな?!」

「だから違うって! 食べたら身体から火が出たり、雪を降らしたり、透明化させたりできるごく普通の食べるグミだわ!」

「どこがグミだ! 完全に非合法じゃないか!」

 何やってんだ、あの馬鹿姉は。

 余計な事をペラペラと喋って、ますます怪しまれるでしょうが。

 この騒動に並んでいた人達も何だなんだと見ていた。

 うわぁ、凄い騒ぎになっちゃった。

 白と赤の鎧が念入りにポシェットの中身を調べていた。

 特に何枚もある金貨をじっくり見ていた。

「この金貨はどこのでしょう? まさか贋金にせがね?」

「調べてみよう」

 赤い鎧はそう言うと、ライトに金貨をあてた。

 そして、モニターを白い鎧と一緒に見ていた。

「うん、純金ですね。間違いない」

「これは……メタメターナ国産の金だ」

「メタメターナ……メタメターナ?!」

 すると、突然赤と白い鎧が急に声を上げて互いの顔を見合わせた後、私の方を向いた。

「失礼ですが、お名前は?」

「えっと……メタだけど?」

 私が名前を言うや否や、白い鎧が指先を板に押してポチポチ鳴らした。

 すると、私の顔が現れた。

 赤と白い鎧がモニターに映る私と交互に見比べていた。

「間違いないです。本物です。しかも『王女』と書かれています」

「という事はあのメタリーナ様のご親族……」

 そう呟いたかと思えば、さっきまで乱雑に扱っていたポシェットの中身を丁寧にしまうと、「どうぞ」と優しい声で差し出してきた。

 困惑しながら受け取った。

 いきなりの態度急変に気持ち悪くなったが、ふとムーニーにもらった無地の紙をポケットから取り出して見せた。

「あの……これも」

「あ、少々お待ちください」

 赤い鎧がたくましい声からひ弱な声に変わると、例のごとくライトをあてた。

 そして、モニターに確認した後、白と赤い鎧はハッと声を漏らしていた。

「あー、なるほど……そういう事でしたか」

「観光だったんですね。早とちりしてしまいました」

 やたらペコペコと頭を下げている赤と白い鎧は私を丁重に関所の出口まで案内してくれた。

「こちらをお忘れですよ」

 白い鎧はそう言って、無地の紙が入った封筒を渡してきた。

 ありがとうと受け取った時、未だにロリンが来ていない事に気づいた。

「あの……私の隣で大騒ぎをしていた白色の長い髪をした女性がいたはずなんですけど、あの……私の姉なんで、通してくれますか?」

 私がそう頼むと、白い鎧は「かしこまりました!」と飛ぶように走って行った。

 そして、五分も経たないうちにリュックを背負ったロリンがやってきた。

 赤い鎧も一緒だった。

「あなた方がメタメターナ国の王族とは知らず、大変無礼な扱いをしてしまったことを深くお詫びします」

 そう言って深々と頭を下げた後、赤い鎧は私に耳打ちするように小声で「くれぐれもメタリーナ様にはこの事はご内密に……」と言ってきた。

 なるほど、こいつらはよっぽど長女が怖いんだな。

 どうやら私達と長女の関係を詳しくは知らないようだし、せっかくだから優遇な立場を味わっておこう。

「そうね。メタリーナお姉様には言わないでおくわ」

 私が両腕を組んで偉そうな口調で言うと、赤と白い鎧はハハーと頭を下げていた。

 うん、何だかいい気持ち。

 ロリンは私の態度に目を丸くしていたけど。

 私は彼らに別れを告げて、勝手に開くドアを通っていった。

「カートゥシティへようこそ〜〜〜!!」

 いきなり目の前にピンク色の小さなドラゴンが大声で挨拶をしてきた。

 私は「うわっ!」とビックリして尻餅をついてしまった。

「イタタ……一体何なの?」

 私はお尻を擦りながら立ち上がると、ロリンが目をランランと輝かせながらピンク色のドラゴンのほっぺを摘んでいた。

「へぇ〜! 人の言葉の話せるドラゴン……ロボットなのか魔法か……解剖して色々調べて……」

「ふひぃーーー!! たふけてくらはいーー!!」

 ピンク色ドラゴンがロリンに漂う変態のオーラを察したのだろう、ジタバタ暴れて助けを求めてきたので、私は「やめなさい!」と奪うように取った。

「……で、あなたは誰なの?」

 私がそう聞くと、ピンク色ドラゴンは「僕はポイドラゴンのポーイ。この国の通貨さ」と赤くなった両頬を擦りながら答えた。

「通貨? 通貨ってこれのこと?」

 私は金貨を取り出してみせると、ポーイは「おおっ! おっかねもっち〜!」と嬉しそうに近寄って金貨を奪った。

 そして、あろう事か丸呑みしてしまった。

「ぬわあああああ!!」

 私はポーイの体を揺すって吐き出させようとしたが、彼は「ちょ、ちょちょちょっと! お、落ち着いてください!」と頭をグラグラ揺らしながら答えた。

 私は一旦止めて「なに?」と睨んだ。

 ポーイはフゥと息を吐いたあと「僕のお腹を見てください」と小さな指でさした。

 私とロリンは彼のまんまるなお腹を見てみると、『10万ポイ』と書かれていた。

「10万ポイ……これは何の数値なの?」

「ポイはこの国の通貨の単位です。僕はお財布みたいなもので、ものを買ったり食べたりする時に僕のお腹にライトをあてれば、勝手に支払われるんですよ」

 うーんと、つまり、どういうことなの?

 いまいち理解できていないので、難しい顔をして首を傾げていると、ロリンは「なるほど!」と晴れやかな顔をした。

「つまり、さっきメタちゃんから貰った金貨でこの国の通貨に両替したのね。

 そして、あなたを使えば別の硬貨でお釣りを貰ったりしなくて済むってことね」

「その通りでっぐっ?!」

 ポーイがパチパチと拍手をしていた時、ロリンが急に彼の両頬を掴んだ。

「喋れるお財布なんて見たことが無い……一体どういう技術を使えばこういうのがふぎゃっ!」

 ロリンの目がドンドンおかしな眼差しを向けてきたので、後頭部をパーンと叩いて落ち着かせた。

 その拍子に彼女の両手から離れたポーイは逃げるように私の背中に隠れた。

「あの人、いつもあんな感じなんですか?」

 ポーイが震えながらボソッと私に聞いてきたので、私は「うん。発明になると超がつくほどの変態になるの」と小声で返した。

「な、なんて恐ろしい人なんだ……」

 ポーイは青ざめた顔でロリンを見ていた。


↓宣伝の妖精からのお知らせ

皆さん、こんちには。

チュピタンです。

早口ですが、そろそろ次のゲームが始まりそうなので、早速いきますね。


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危機一髪でしたが、何とか関所を突破する事ができましたね!

かわいいドラゴンも登場して、カートゥシティがどんな所なのか、もっと知りたいです!


おっ、そう言っているうちにファンファーレが鳴り響きました。

 

何やら、テーブルクロスに引かれたテーブルが運ばれてきました。

その上に、二枚のトランプが置かれています。

一体なにをするのでしょう?


『パンパカパーーン☆ ようこそ、第二ステージへ☆』

『といっても、君だけしかいないけど……まぁ、いいや☆ 早速ルール説明だ☆』

『一発で覚えられるくらいチョーー簡単☆ このテーブルにあるトランプの中からジョーカーを見つけてね☆』

『もし外したら、めちゃ痛い拷問を受ける事になるよ☆』

『では、スタート☆』


うーん、二枚のうちの一つがジョーカー……これは難題ですね。

ヒントらしきのもないので、どちらを選んでいいか分かりません。


『残り時間じゅうびょーう☆ きゅう、はち……』 


えぇ、時間制限あるの?!

うーん……あ、そうか。


このゲームの鍵は……テーブルクロス引きじゃあああい!!


『にぃーー……うぇ?!』


せいっ! おっ、やっぱりもう一枚あった!


『な、なぜバレた?!』


あなたは『このテーブルにあるトランプの中から選べ』と言っただけで、別に『テーブルの上にある二枚の中から』とは言っていない。

つまり、今見えているトランプ以外がジョーカー。

このテーブルで隠せる場所と言ったらテーブルクロスの下しかない!


どれどれ……ほら、ジョーカー!

私の勝ちぃ!!!


『くぅうううううう!!!! 糞がぁあああああ!!!』

『時間制限を設けたら、絶対に焦って二枚のうちの一つを選ぶと思ったのに……クソッタレ!』


さぁ、早く私を開放して!


『フンッ! まだステージはあるよ!』

『さぁ、来るんだ!』


えー、まだあるの?

次も簡単なのがいいけど。

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