第3話 ステータス

マイルームに戻った後、どうしようかと考えていると『フレンドのユリクリウスが入室しようとしています』という表示がされる。ゲームでは勝手に入れるし、勝手に中の家具のガチャを回したりとかが出来るのだが、流石に現実だとガバガバセキュリティじゃないか。入室を許可すると、ユリクリウスがスーツ姿になってマイルームに入って来た。


「おう、もう着替えてるのか」

「流石に着物は目立つからな。シアリーの制服で良いかなとも思ったけど、スーツで良いだろ」

「自分も着替えるわ。

……女性用だけどダッフルコート赤で良いかな」

「男性用持ってないならトレードするぞ?」

「いや、これは女性用でも男性用でもあまり変わらないだろ」


というわけで自分も赤色のコートに着替えるが、ごつい見た目に反して中は快適だ。動きやすさも変わったようには感じないので、バスタオルや水着でも普通に戦闘は出来るということだろう。


「で、どうする?俺は一度クエストを受けようかと考えてるけど」

「ステータスの確認が終わったら自分も行くわ。惑星ドゥームズの自由探索とかで良い?」

「お、良いな。あそこの敵は攻撃パターンがワンパターンだし、2番目の惑星だから推奨レベルも低いしな」


FUO2は、各種の惑星で大いなる闇の手先である『シャドウ』という名の敵を倒して原住民と仲良くなったり、敵対していくゲームだ。中でも惑星ドゥームズは鬼族の惑星で、角の生えた鬼が沢山いる。


そして一部の陣営は闇の手先に洗脳されており、常時戦争中である。どこもこんな感じ惑星ばかりだが、この惑星ドゥームズは昔の日本がモチーフになっており、和風建築物が立ち並ぶので一度ぐらいは実物を見てみたい。


というわけでまずはステータスチェック。転生物お決まりのステータスチェックのお時間である。ステータスオープンと叫ぶ必要はなく、FUO2のUIからキャラクター情報を選択して見る。


キャラクター名:クロワッサン

種族:ヒューマン

メインクラス:ソードマンレベル120/サブクラス:ナイトレベル120

HP:4150

MP:200

攻撃『打』:3360

攻撃『斬』:2360

攻撃『貫』:1760

攻撃『爆』:1160

攻撃『魔』:1160

近接防御:3430

遠距離防御:3320

魔法防御:3300


通常のFUO2プレイヤーのHPは、大体2000程度だ。基礎ステータスが約1000、装備の基礎ステータスで+300~500程度。それに最大で10個まで盛ることが出来る特殊能力でHPを盛り、2000を超えると敵の大技を一回は耐えることが出来るから安定する。


しかしまあ、よっぽどの課金をしていないとこの特殊能力のスロットを10個まで埋めるのは至難の業となる。そもそも素材を10スロットにするのが苦痛な上、その素材5つを使用して10%の確率で中間素材が1個出来上がる。その中間素材を5個使って更に10%を通すと、最終素材が1個出来る。


これを5回繰り返してスロットの中身を厳選した最終素材を5個作るのだが、課金で手に入る成功率アップや失敗時素材返却保証アイテムを湯水のように使えないと最早やる気が起きないほどである。あとゲーム内通貨を大量に消費するので、ほとんどの廃課金もスロットは7や8で止めている。スロット9や10にまで到達しているのは、極一部の廃課金か変態だけだろうな。


また、各種防御ステータスも普通の人は2000程度なので1.5倍はある。これによりダメージ量自体が減っている上、高騰を続けていたスロット2専用の特殊スキル「堅牢なる力」を腕、脚、胴体の3つ全てに搭載している。もはや敵の大技でも二桁ダメージに抑えることが珍しくない異常事態にまで発展していた。


当然その分、火力はおざなりだがクリティカル率を基本の5%から50%程度まで強引に上げていることで火力特化型にも負けないほどのDPSを持っている。まあスロットを5ぐらいにまで拡張している火力特化型とかとは良い勝負をするというだけで、火力特化型でスロットを8や9まで拡張している人には余裕で負けるが。


……カジュアル層は、まず3スロットを目指すように言われる。使用する属性の攻撃を100盛って、防御も50程度盛ると初心者は卒業だ。これだけで火力は底上げされるし、これ以上は費用対効果がどんどん悪くなる。この最低水準には達している上、クリティカル型に仕上げているんだから文句を言われたことはない。


一方のユリクリウスの装備は……あれ、他人の装備を見れなくなってるな。まあ良いや。ユリクリウスは火力特化型で、メインはアサシンだが武器は刀を使用する。一応スロット9まで拡張しているので変態の一人。ついでに言うと、TAで毎週上位に入賞するPSの持ち主でもある。


まあエマージェンシークエストで敵がわちゃわちゃし出すと耐久が並みのせいで死ぬが。そしてこの世界、蘇生アイテムがない。綺麗に蘇生アイテムだけアイテムバッグから無くなっている辺り、あれはご都合主義の塊なのだろう。というか一度死んだ人が体力半分で生き返るのは現実に置き換えられるわけないな。


回復アイテムの回復量も軒並み落ちているっぽいし、回復薬に頼るごり押しプレイは難しそうだ。だからまあ、簡単なクエストに行って感触を確かめる必要がある。


とりあえずはロビーに行くと、人の数は減っており各々自由に行動していたり、どうしたらいいのか分からず右往左往している人が結構いたが、自分達はまっすぐにクエスト受注カウンターへ行って惑星ドゥームズの探索クエストを受注。キャンプ船に乗り込む。


タキオン船団が、直接クエストを受注した惑星へ移動することは出来ないために、別の小さな宇宙船に乗り込んでクエストを受注した惑星へ移動する。そのための船がキャンプ船というわけだな。


「どうする?サポートロイドを連れていくか?」

「俺は要らないと思うが……まあ念のために連れていくか。推奨レベル21で苦戦するとは思えないけど」

「じゃあコッペパンとサタンちゃんで行くか」


パーティーは最大で4人だが、基本的にこういうクエストでサポートロイドを連れていく人はまずいない。ただ今回は何が起こるか分からないし、念のために連れていくことにした。まあ初戦闘、普通に戦えるかも分からないしな。


「よろしくお願いいたします、マスター」

「やっほー!サタンちゃんの登場だー!」

「あれ、サタンちゃんメイジに転職したの?」

「メイジ/ナイトで支援魔法と回復魔法だけを使う固定砲台にした」

「ああ、マルチメンバー12人の中に1人はいるとありがたい便利な奴ね」


この判断が、恐らく自分達の明暗を分けた。あっという間に惑星ドゥームズに到着し、降下しようとした直後、自分達の乗るキャンプ船は拉致され、全く別の惑星へとワープする羽目になった。

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