第39話 静かに殺して、最果ての町での再会に、新たな依頼?

真夜中――アタシはカツカツとヒールを鳴らしダンジョン入り口に近い角に陣取っていた。

勇者がいるとザマァが出来ていいやね、ヒヒヒ。

丁度トイレに起きてきた所をスナイパーライフルにサイレント機能搭載して脳天を狙い撃つ。


パシュッ!


と言う掠れた音に倒れ込む勇者。

あーあ、丁度放尿してたんだろうね、汚らしいったらない。垂れ流しじゃないか。

5分後には消えるだろうが、もう一人の魔法使い――ユキコの方はどうかね?



「も――いつまで待たせんのよ。いい加減にし……っ」



おやおや、今からお楽しみだったのかい?

そいつは悪いことをしちまったねぇ?



パシュッ!



ネグリジェ姿の魔法使いの脳天にぶち当てそこで殺す。

勇者は経験値が美味いからね……ヒヒヒ。

何度でもおいで。何度でも殺してやろう。

別に魔王城にいるから殺す訳じゃない。

最果ての町にいるってんなら、そこでも狙ってやろう。

うちの可愛い曾孫を奴隷に落した罪ってのは、存外デカいんだよ。

勇者たちが消えたのを見計らい、奴らの持っていたテントの中に入り鞄を奪って火をつける。

今頃全員寝てるからね……誰も見ちゃいないさ。


バチバチと音を立てて燃え崩れるテントに背を向けて転移の腕輪で部屋に帰ると、机に奪った鞄をドカッと投げ捨て金目のものだけ奪っていく。



「ッチ、しけてるねぇ。ん?」



そう中を漁っていると、一枚の羊皮紙が出て来た。

中を開けると国王からの依頼書で、【魔王領にあるダンジョンの殲滅】と書かれている。

どうやら国が依頼したらしいねぇ……。

これ、案外使えるんじゃないかい?

まぁ、勇者たちがもう二度と来たくないって思う迄追い込んでからにするが、それでも国からの依頼なら否応なしに来るだろうよ。ヒヒヒ。

そしたら国からドッカリと金を巻き上げてやろうかね。


そう思い勇者のカバンは一応保管と言うことになった。

持っていたくもないがね。


そのまま気持ちよくグスッスリと眠ったアタシは、トッシュとタリス、トリスを連れて翌朝フォルのいる最果ての町へと向かった。

最果ての村がどれだけ発展したか見に来たのだ。

外は存外宿屋が沢山出来ていて、いい感じに乗合馬車の場所も出来ている。



「あ、キヌさんだ!」

「キヌさんおはようございます!」

「おはようさん。アンタ達は今最果ての町についたのかい?」



そう冒険者に声を掛けられると、キヌさんキヌさんと集まってくる冒険者達。



「早くコンビニで料理が食べたくて、頑張りました!」

「キヌさんは三層とかいかれたことあるんすか?」

「まだ三層行けた奴いなくて」

「ああ、三層にも店をだしてるよ。三層の中身は秘密さね」

「教えてくださいよ~~ヒントだけ、ヒントだけ!」

「おやおや? 誇り高い冒険者がそれでいいのかい? 自力で目指して欲しいねぇ?」



そういって流し目でニヤリと微笑みつつ伝えると、男どもは鼻の下を伸ばしてデレデレとしている。

夫にこれをしてもニッコリとほほ笑むだけだったが、大事に思ってくれていたからこそのあの笑顔だったんだろうね。

下心が見え隠れしている此奴らとは違う。

すると――。



「キヌ!? キヌっていったか!!!」



そういってやってきたのは勇者だ。

周囲の冒険者をかき分けてやってきた勇者はアタシに指さすと――。



「おいババア!! コンビニここでも出せ!」

「悪いねぇ。魔王様との契約でここには出せないようになってるのさ」

「ふざけんな!!」

「それはこっちの言い分さね。何様だい? 随分とレベルの低そうなガキだが」

「レベルの低いって……いや、実際60あるのも不思議なくらいレベル低いんですけどね、この勇者」

「ぶはっ! いってやんなって!」

「へぇ……そうや、種なしなんだろ?」



これには声を上げて笑う冒険者達。

勇者は顔を真っ赤にして「た、種無しだと!?」と口にしており、それがさらに笑いを誘ったよう。



「種無し勇者、悪いけどアタシにはアタシの事情ってもんがあるんだよ。大人の事情ってやつがね。そこを脳たりんなアンタじゃ理解ができないだろうが、キヌマートは魔王領のダンジョンにしか作らない。これで話は終いだね」

「ま、待て!!」

「ああ、魔王様がお怒りになって勇者たちは入れないんだっけ? 残念だねぇ?」

「待てよ!! いくら払えば何か売ってくれるんだ!」

「知ったこっちゃないね。ガキには付き合ってられないよ」



そういって背中を見せた途端剣を抜き取り襲ってきたが――。



「我! キヌ様を守る者ゆえ!」


バチイイイイイイン!!!


「へぎいいいい!!」


頭の上にいたトリスの平手が勇者の頬を直撃し、高速回転しながら地面に叩きつけられた。

顔面は腫れあがり鼻血と口から血を流している。



「此奴!! キヌ様を殺そうとしやがったぞ!!」

「勇者の風上にもおけねぇ!!」

「全員でぼこっちまえ!!」

「ひっ! や、やめろおおお!!」

「ははははは!! 身ぐるみ剥いで素っ裸で木に吊るしてやるといい!」

「そうしてやろうぜ!!」



こうして勇者は身ぐるみはがされパンツもないまま縄で締め上げられ木に吊るされた。

後は泣きながら「許してください」「生意気言いました」「許してください」と次第に大人しくなったので「一日このままにしてやんな」と言うと、下半身丸出しのまま一日木に吊るされることになり、後で探しに来た魔法使いにでも助けて貰うだろうよ。


さて、そんな騒ぎはあったが、町は十分に発展したように見えるし、元村長の元へと向かうと――。



「キヌ様、ようこそいらっしゃいました」

「久しいね村長。いや、もう町長かい?」

「ははは! そうなりますな。今日は何用で参られましたか?」

「勇者が好き勝手してないか見に来たのさ。勇者の権限だなんだと振りかざされたら煩いだろう?」

「ええ、それはもう」

「そこで、連絡用の魔道具があるだろう。それを使ってこの最果ての町での勇者の現状を伝えてくれると嬉しいねぇ。場合によっては締め上げに来れるからね」

「それはありがたい。是非そうさせて頂きます」



こうしてそれだけを伝えると「今後も精力的に頼むよ」とだけ言い残し、フォルとトッシュの待つ家に帰ると、二人はイチャイチャしていた。

年の差はかなりあるが、獣人にとっては相性のいい相手を番いと見るらしく、フォルにとって、そしてトッシュにとってお互いが自分の番だと分かったらしい。



「さて、アタシは予定が終わったから先に帰るが、トッシュはまだフォルとイチャイチャしてていいからね?」

「そ、そんな……」

「では、トッシュ様にお夕飯を作って差し上げます!」

「わぁ!!」

「んふふ、仲良くするんだよ?」



そう言い残すとアタシはダンジョンへと戻り、自室へと戻るとモーダンが部屋にやってきた。

すると――。



「今、何ていったんだい?」

「はい、ドワーフ王国から依頼で……酒の取引をして欲しいと」

「ふむ……」

「魔王様、どうしましょうか?」



どうやら、また面倒なことになりそうだねぇ。



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