【脱稿済み完結保障】転移魔王の、人間国崩壊プラン！ 魔王召喚にされて現れた大正生まれ１０４歳のババアの、堕落した冒険者を作るダンジョンに抜かりがない！

第32話 魔王領にダンジョン出現！！ 冒険者は討伐せよ！！

――冒険者side――

【魔王領にダンジョンが出現！！　レベルの高い冒険者は直ちにダンジョンを破壊せよ！！】――そうお達しが来た時は驚いた。

魔王はもうあの愚者のような勇者に倒された筈だ。

それなのに、何故ダンジョンが！？

考えられることは二つ。

一つ、新しい魔王が誕生したか。

一つ、人為的に作られたダンジョンか。

どちらにせよ悪い事この上ない状況だ……。

直ぐに俺たちギルの町に行った冒険者は荷造りをして、最果ての村へと向かった。

そこは閑散としている村だったはずなのに、今は必死に宿屋の建築にあたっている。

何故――そう思った時、一人の男性が俺たちに歩み寄ってきた。

「魔王領のダンジョンを調べに行くのか？」

「あ、ああ！　だがこの最果ての村は閑散としていた筈だ。それなのにこの建築ラッシュは一体」

「魔王様からのご命令だそうだ。今後この村は活性化するだろうからと、いくらかの金貨を手渡してくださったそうでな。現在急いで宿屋の建築をしている」

まさか！！

魔王がこの村に来て俺達冒険者の為に宿屋を用意しろなど言う筈がない！！

そう何度も口にしたが、「事実だ」としか言わず、小さく息を吐いて一枚のチラシを俺達に配った。

そこには愛してやまない、何故いなくなったのか……【期間限定の不可思議な店・キヌマート】の書かれた紙だったのだ。

「魔王領にあるダンジョンでは……期間限定ではなく常時店をオープンしますうううううう！？」

「なんだってえええ！！！」

「あの、あのキヌマートがあるのか！！」

騒めく冒険者たち。

これは一刻も早くいかねば！！

しかし何故キヌマートが魔王領に！？

いや、そんなことはどうでもいい。魔王に脅されたと言うのなら理解も出来る！！

俺たちは急ぎ向かおうとしたが、なんと、デュラハンの相乗り送迎馬車まで用意されていて、一人金貨１枚で乗せて行ってくれるらしい。

恐ろしいデュラハンに金貨を一枚手渡し、相乗り送迎馬車に全員がギチギチに３つの馬車に乗り込むと意外とすんなり馬車は動き始めた。

その時、デュラハンの強さをマジマジと感じた訳だが――１台の相乗り乗合馬車を冒険者をギュウギュウに詰めて２体のデュラハンが引っ張っていく。

しかも次第にスピードアップして揺れる馬車に必死にしがみつく。

普通ならば魔王城まで数日かかると言われている道のりを、一時間でついてしまったのだから呆然とすると、急ぎ馬車から降りてダンジョンへ――と思った矢先、透明な壁にあたって中に入れない！！

「受付はこちらでーす」

「う、受付だと？」

更に騒めく冒険者達。

俺も声のした方を見ると、ギルドのような作りになっていて、幾つものカウンターがあり、冒険者はそこで何かの登録をしないといけないらしい。

「【魔王城カード】？」

「はい、こちらでは冒険者のギルドカードのように、【魔王城カード】を持っている者のみが入れます。更に言えば、ダンジョン内でモンスターを殺そうとすれば、もしくは殺した場合、二度とこのダンジョンには入れなくなります」

「なっ！！」

更に騒めく冒険者達。

魔物を倒さないで何をしろというのだ！？

そうダンジョンの透明な壁を見たその時――誰かが「おい、見ろ！！」と叫んだ。

そこにはあの時の【期間限定の不可思議な店・キヌマート】の店が！！

「キヌマートもまた、この【魔王城カード】がないと買えません。ご説明を受けますか？」

「是非頼む！！！」

こうして俺達ギルの町の冒険者たちはいち早く到着したこともあり、色々と詳しくダンジョンの事を知ることが出来た。

買い物やカジノがある事や、美味しい料理店がある事、ポイントを溜めねば第三層には行けない事。第四層にはボスがいるが、そこまで到達できる者が果たしているのかどうか等語られ、冒険者たちは滾った！！

滾ったがまずは腹ごしらえだ！！

キヌマートがあるのに何も買わないという手は一切ないのである！！

「また、キヌマートのご注意点ですが」

「おお、注意点があるのか」

「はい！　お好きなだけ買っていいそうです！　アイテムはすぐに魔法で補充されるそうなので、奪い合い無くお買い上げくださいとのことでした」

「「「「おおおおおお！！！」」」」

「説明は以上です！」

こうして一人、また一人と署名して登録を行い、用意が出来た者たちは扉の前で待つように言われ、女性が立っている場所にてウズウズしている。

皆早くキヌマートに入りたいのだ！！！

「再度言いますが、規定を破ったものは一人金貨５００枚を支払わないとダンジョンに入れなくなります！　そこだけはご注意くださいませ！」

「「「分かった！」」」

こうしてドアが自動で開くと、【魔王城カード】を持つ俺たちは我先にと中に入っていったのである。

持っていないものは弾き飛ばされ中に入ることは出来なかった。

なるほど、この【魔王城カード】がないと、そもそも出入りが出来ないのだな！！

何はともあれキヌマートだ！

あんなにも、女よりも会いたかったキヌマート！！

中に入ると以前より広くなった店内に驚きつつ、籠を手にすると一気に欲しいものを詰め込んでいく！！

「温めて行かれますか？」

「はい！」

俺の気持ちは既に温まれ過ぎて、沸騰寸前だった！！！

温めが終わり急ぎ外に出てパッケージを開けて啜るパスタ！！

「うまい！！！」

これだ、この味だ！！

最早キヌマートの周りは冒険者が座り込んだり立ったまま食事をしていて、異様な光景が出来ていた事に気づかなかった――すると。

「君達冒険者には、あちらの席が見えていないのかね？」

「あﾞ？」

「キヌマートのキヌ様が、冒険者が床でなんて食べないようにと、ゴミをその辺に捨てないようにと用意したスペースが見えないのかと聞いているんだ！」

そう言ってやってきた同じ服装をしたリザートマン達。

なに？　キヌマートのキヌ様が用意した食べるスペースだと？

その言葉に各々立ち上がり確かに椅子と机があり、ゴミ箱らしきものまで置いてある。

至れり尽くせりだな……。

「キヌ様からのお言葉だ！　食べ散らかしたりゴミをその辺に捨てるようなら、キヌマートを撤退させるとの仰せだ！」

「なんだって！！」

「ゴミはゴミ箱に！！」

「「「はい！！」」」

「イートインスペースをご活用ください。それでは良いダンジョン生活を」

そう言って去っていったリザートマン達にあっけにとられつつも、俺たちは食事をするスペースに座り再度食べ始める。

キヌさんは、この美味さでやはり大事に扱われているんだな。

そして、ダンジョン内をゴミだらけにしたくないんだ。

まるで母親だな……。

クスリと笑い食べるパスタ。

ミートソースが口の周りにベッタリとついているが、手拭きを貰っているのでそれを使い口を拭く。

「さて、腹ごしらえも終わった。見て回ろうか……このダンジョンとやらを！」

「「「おう！！」」」

こうして俺たちは――カジノの中へと消えていったのである。

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