逢瀬

薔薇の生垣に隠れて

密かに静かに

しかし情熱を込めて


二人の恋は許されないから

二人は幼く力がないから


こうしてひっそり

つかの間の逢瀬をするのだ

そばにいられない時のぶんまで


離れがたいと

二人はきっと比翼連理なのだと信じて

ままならぬこの世を呪う


秋の昼下がり

薔薇の香りが胸に染みる

二人だけの秘密だと笑いあって

この恋は永遠なのだと信じたくて

時よ止まれと、心が叫ぶ


鐘の音が鳴った

ああ、もう時間なのだ


別れを惜しんで

抱き合って


そして


ふたりはそっと

くちづけをした


蜂蜜のように甘くて

初めて知った煙草の味のように苦く

青い草花と、秋の香りの深い


柔らかく心に突き刺さる

恋の味、だった

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