優柔不断の罪
元々その為にあなたという存在が生まれたとはいえ、私としてはだからといって絶対それに従わなくてはならないものとは思っていなかった。
あなたが望むなら期待も責任も義務も全て無視して、己のものでは無いと振り払って、外の世界へ飛び出して行ったっていいと思っていた。
だけれども、あなたは本当に皆が望む理想の存在として生まれて来てしまった。皆、あなたに期待してそうすることを疑わなかった。それがどんなに惨いことかも知らないで。
そしてあなたは、優しかったから期待に応えてやって、望みを叶えてあげて、理想を演じてやっていた。
さいごまで、あなたの全部を皆のために消費して。
声高にこんな考えを言えば、攻撃されて排斥されて、あなたほどの武も知も縁も持たない私はきっと生きていけないと、そう思った。
こっそり言ったって、あなたの周りには虫が多かったから。
どちらにせよ、口に出せばどんなに隠れていたって誰かの耳には入る、そんな地だ。
だから私は保身に走って黙っていた。
だけど今、そんなこと関係ないと、しがらみや恐れなんか無視して全て言えば、伝えればよかったと。そう思う。後悔しているのだ。
届かなくなる前に、私はこの想いも考えも本当のことも、この地の秘密も言えばよかったと。
いつも私はそう。手遅れになってから後悔する。そんなんだからこうして、閉じられた扉にすがりついて泣き喚く羽目になるのだ。
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