第6話 俺様、奴隷を買う!

 俺様はちょっと高級な宿屋に泊まってうまい飯を食らい、その後、なんとなく目についた奴隷商人のキャラバンに声をかけた。


 「おい、そこのお前、奴隷みせてみろ」

 「はい、どうぞご覧ください」

 そういって俺様は奴隷を見る。

 俺様の事がよくわかっている奴隷商人なのか、女奴隷を先に見せてくれた。

 亜人種族もサキュバスを攻略したことのある俺様にとって魅力的な提案とは思えない。

 ここは人間族一択だなとおもい、俺様は人間族の女奴隷をまじまじと見つめる。

 ほとんどの女奴隷は目つきが鋭く好みじゃない。

 胸だって小さいし……生意気そうだ。

 そういって眺めるのをやめてやっぱりいいと言おうと思ったその時、視界に入った一人の女奴隷が目についた。

 綺麗な金髪に青い瞳。

 おっぱいも俺様が知る中で一番デカい。

 瞳もうるうるとうるんでおり、なにか訳アリという感じ。

 うぅむ、面白い。

 「これをもらおう」

 「はっしかしこの娘は……かなり値がはりますがよろしいので?」

 「現金一括即購入だ。ガハハハハハハ!」

 「それはそれは。とても素晴らしいことでございます、えぇ」

 そして俺様は晴れて奴隷持ちというわけだ。

 気分はいいものの、親にはどうやって報告しようか。

 いや、親のことなんぞどうでもいい。 

 俺様の悪い癖だ。

 親のことを気にかけたところで死ぬときは死ぬのだ。

 俺様は後悔なく生きて見せる。

 「お前……名は?」

 「ソ…………ソフィといいます」

 か細いがとても綺麗な声だった。

 「訳アリのようだな」

 「え?」

 キョトンとする彼女を俺は高級な宿屋に連れ込む。

 「さっそくするんですか?」

 「いや、したいのはやまやまなんだが、どうにも気持ち悪い」

 「といいますと?」

 「どうも、君を今の状況のまま抱いてはいかんという俺様の勘がそう告げている」

 「勘……ですか」

 「うむ。ソフィは何かわけがあって奴隷になったのだろう。まぁ好きで奴隷になったわけではないだろうから、どこか国を追われてそれで捕まったのだろうな」

 「はい…………私は」

 そうしてぽつりぽつりと彼女は語り始める。

 遠い南の国で豊かではないけれど自然が美しい国に生まれた彼女は、戦乱の世になって彼女の国が持つ資源がかなり今後の戦争を左右するということが分かってから各国がこぞって彼女の国を襲い、民は蹂躙され、兵は疲弊し成す術もなく彼女の国はなくなったという。

 そこで王族の彼女が奴隷になったことで政権は見ず知らずの軍人のモノとなったという。

 「胸糞悪い話だ。だが俺様はそんなこと全然知らなかったぞ」

 「かなりここから遠い国の話ですから無理もありません」

 「…………そうか、お前の家族は?」  

 「たぶんもう生きてはいないかもしれない……とわかってはいるんですが」

 「だが……なんだ」

 「利用価値があるからお前が奴隷でいる間は殺しはしないと今の王が言っていてもしかしたらと思うと……私」

 そういって彼女はまた瞳をうるうるとさせている。

 「あぁ、泣くな。泣くな」

 「すいません」

 「謝らんでいい。お前は何も悪くない。ただちょっと運が悪かっただけだ」

 「そういってもらえて……なんだかほっとしました」

 そういって彼女はふっと緊張の糸が切れたように笑う。

 「笑え」

 「え?」

 「いつかお前が心の底から笑える日が来る。でもそうでなくても笑え」

 「えっと……」

 「俺様は今頃病気で死ぬはずだったのだ……だが奇跡的に助かって、こう思った」


 ——————人生に悔いなんて残しちゃいけない。

 

 彼女はその言葉を聴いてどこかはっとしたような顔をしていた。

 「お前だって不幸だし、俺様だってかつては不幸だった」

 「…………っ」

 「でも過去は過去だ。俺様がお前の家族なんて何とかして見せる」

 「なんとかってなにするんですか?」

 「わからん、これから考える。でも奴隷になっても俺様と関わった美女は皆幸せであるべきなのだ……一部例外はあるが」

 「なんですか、それ」

 彼女はこんどはどこかおかしそうに微笑んでいた。

 「うむ、今日は寝る。ソフィ」

 「はい」

 「おやすみ」

 「おやすみなさいませ。ボルクス様」

 奴隷商人から俺の名は聞いているらしいソフィは女神のように微笑む。

 「うむ」

 

 俺様はそういって美女と一緒に健全に寝る。

 そんな日があってもいいだろう。

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