第六話 カインside
俺の名前はカイン。転生者だ!
それも転生先は、前世で途中までは好きだった漫画『光の勇者ブレイブ』。
この作品は登場する女キャラのビジュアルが好みだったから最後まで読んだが、それ以外はありきたりなストーリーだ。
題名の通り、ブレイブって名前の主人公が最終的に魔王を倒して勇者になるっていうよくある話で、正直ブレイブには何の魅力も感じられねー。
だからこそ思う。
普通、こういうのは主人公に転生するパターンだろうが!
なんでこんな名前すら出ていないモブに転生してるんだよ!
そう、カインという名前のキャラなんて漫画では登場していない。かませ犬や悪役として登場することすらない完全なるモブ!
――ふざけやがって! しかも主人公のブレイブが育つ村に生まれるとかなんなんだ! ニアミスじゃねぇか!
それに村って何なんだよ……せめて貴族とか裕福な家に生まれたかったぜ……まったくよぉ!
だけど、そんな不幸に俺が傷心して少し経った頃、村にいたヒロインであるアリシアを見てふと思ったんだ。
原作知識というチートがある俺は、漫画に登場する女の子達なら、その性格や、好きなもの、嫌なものまでも知っている。その中には悩んでいる女の子達もいた。それを解決したりしてあげたら、ブレイブより先に自分の好きだった女キャラといちゃいちゃ出来るんじゃね?って。
思えば、主人公のブレイブは情けない奴だった。みんなを守ろうとしている正義感だけは強い奴だったが、普通に守れていない。
何人か主要な味方キャラが死んでたし。
もちろんその後、ブレイブが味方の死がきっかけで覚醒していたが、そもそも俺はブレイブが好きじゃない。
――あー、味方の死をトリガーに覚醒ね……はいはいテンプレテンプレ、としか思わなかった。
むしろ、もっと早くに覚醒してれば味方死ななかっただろ、と思っていたぐらいだ。
作中で、死んだキャラの中には、俺がビジュアルが好きだった敵キャラの女キャラもいた。
それが悔しくして仕方がなかったので、二次創作で自分をモチーフにしたキャラに何度救わせて、鬱憤を晴らした時期もある。
何が主人公だ。全てを守るとか言ってる癖して、たくさん手から零してしまう情けない奴だ。あんな奴に世界が救えるんなら、俺でも出来る。
誰しも自分の人生の主人公、だという言葉を聞いたことがある――ブレイブは主人公に相応しくないと俺は思っている。だったら俺が成り代わってしまえばいい。原作知識というチートがある俺こそが真の主人公なんだ!
前世であった転生チート主人公になることを俺は、決めた。
あらためて転生チート主人公について考える――
前世で見た小説の中で異世界もの――特に漫画やゲームに転生する小説が好きだったが、この知識ありの転生ものには、3つの種類がある。
一つは、原作の主人公に転生して、助けられなかったヒロインを救済していく物語。
二つ目に、悪役キャラ――ボス、かませ犬かは別れるが、己の運命を変えていく物語。
三つ目に、モブキャラに転生して、原作主人公をざまぁして、成り上がる物語。
俺は三つ目を目指せばいい訳だ。
大抵の場合、そうした作品の転生した者達は原作を遵守しようとする。そして後々に、この世界は漫画じゃない。目の前にいる人達は、キャラじゃなくて、実際に生きている人なんだということに気づいて、結局原作を崩壊させる。
結局、崩壊させるんだし、早くてもいいかなって思ったから、早速俺はアリシアと仲良くなって適当なこと言って、ブレイブから離しておいた。
何せ俺は、アリシアの一番仲のいい友達だしな、所詮は幼いガキ。すぐに言うことを聞いてくれたぜ。アリシアはまだ小さなガキだが、いずれは漫画で見たカワイコちゃんになるから我慢しなきゃな。こういうのって光源氏計画って言うんだっけ?
それにしても、あっさり原作崩壊した時には笑ったもんだ! 世界の修正力だっけか? はっ、そんなもんまったく無かったな! 楽勝すぎww
悪いなブレイブ!
あ、でも安心してくれ!原作知識があるんだ、お前なんかより、俺の方が余程上手くやれるだろうから、代わりに俺が勇者になってハーレムを作る!
――――――――――――――――――――――
そうして俺流のやり方で漫画の一部を終わらせて一時の空白期間に入った今、作ったハーレムの中からなんとなしに選んだ女の子達と共に旅行に出掛けていた俺だったが、立ち寄った街の冒険者ギルドで主人公“ブレイブ”と出会った。いや、もう主人公じゃないな。俺が主人公だ。
俺は堂々と自分のパーティーメンバーを見せつけてやる。
彼女達の内二人は、お前が救えなかった命だ。
目の前にいなかったからどうしようもない、知り合っていなかった。そんなことは関係ない。
俺はお前が本来救えない出来なかったことをやり遂げたという、いい証拠だ。
俺は原作での知識で、登場した達のこれから展望が分かっている。
それを活かさない手はない。
こうしたら、強くなれるとアドバイスのようにして伝えることで、彼女達は原作を先取りして強くなった。
俺はたしかに弱いかもしれないが、まわりがTUEEEをすればいいのだ。
ブレイブの元へ近付いた俺は、奴に話し掛けた。
「久し振りだな、ブレイブ。
まさかこんな王国の中央部から外れた街にいるなんて思わなかったぜ」、と。
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