第41話 彼氏が欲しい

「プレゼントを選ぶに当てって、加奈の好みをある程度理解しよう~!」


 歩いている最中、突然水瀬はテンション高く拳を高々と上げる。

 ネットで調べたものだが、プレゼントの種類は主に2つに分けられるらしい。

 相手が好きなものを渡すか、自分が好きなものを渡すか。


 例えば、渡す相手がアイドル好きであったらそのアイドルのグッズを渡せば絶対に喜んでくれる。

 自分の好きなアーティストなどをCDなどを渡せば、好きな人の好きなものだから興味は示してくれるだろう。


 俺はあまり自分の好きなものに自信がないので、加奈の好みのものを渡したい。

 そのために水瀬に付いて来てもらって、お店まで案内してもらってるんだ。


「あいつは可愛いもの全般が好きだろ」


「まさかの即答⁉」


 何も迷わず答える俺に、目を見開く水瀬。


「まぁ、彼氏なんで」


 と、その丸くなった目に俺はドヤ顔を見せつける。

 プレゼントするものが分からなくても、好みくらいなら把握している。

 何気に一緒にいる時間は多いからな。自然と分かってくるものだ。


「いいねぇ~恋人がいる人って。毎日が充実してて」


「そんな言うなら作ればいいじゃん。あれだけモテてるんだから」


「いやいや、私のこの性格を出せる人は学校には……」


「……いないな」


 そうか。おしとやか系でモテていたとしていざ付き合って素が出たらおしまいだ。

 それに恋人は心を許せる関係の代名詞とも言える。

 それなのに本当の自分を隠すのは本末転倒だ。


「こんな私を好きになってくれる人なんているのかな?」


「世の中広いからな。一人くらいはいるとは思うぞ」


「許容してくれる人でもいいから目の前に現れて欲しいものだよ……」


「難しい話だな」


「あぁ~! 私も『彼女ですから』キラッ。とか言ってみたい~!」


 隣で一人芝居をしたと思えば、地団駄を踏み始める水瀬。

 これまで散々いじり散らかしていたのにいきなり嫉妬か。

 感情の起伏が激しいやつだな。


 もしかしたら、羨ましいから俺たちにちょっかいかけてたのか?

 自分より妹の方が早く彼氏ができて妬いているのか。

 でも、俺と加奈をくっつけたのは水瀬なわけだし、言ってしまえば自業自得。


「私も好きな人はいたんだけどな」


「え、いたの?」


 ポツリと呟いた水瀬の言葉に反応してしまう。

 初耳だ。そういえば水瀬の恋愛話を一度も聞いたことがない。


 この際詳しく話を聞いてみたい。いつも俺と加奈だけが水瀬に話しているからな。このままだと不公平極まりない。

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