第38話 プレゼント

『付き合って一か月記念にプレゼントをあげたいと思ってるんだけど――』


金曜日の夜11時を回った頃、俺は自室のベッドに座りながらとある人に電話を掛けていた。


『……ほう、詳しく』


『俺、女子へのプレゼントとか分からないから、アドバイスとか貰えたら助かるなと』


『加奈にプレゼントねぇ……よし! お姉ちゃん頑張る!』


電話した相手は水瀬。一番加奈のことを知っている頼もしい人物だ。

変なことを教えられる可能性ももちろんあるが、それよりも有益な情報を教えてくれる方に賭けている。


この前のお詫びのプレゼントは……まぁ最終的にはよかったし。

それは関係ないとして、姉妹に聞いて損はないだろう。身近な人に聞くのが一番信頼性がある。


『それで、どんなのがいいと思う?』


『うーん……加奈は壮馬くんがくれたプレゼントならなんでも喜ぶんじゃない?』


『そうかもしれないけどさ、センスないとか思われてたらヤダし』


『そうだね~、センスなかったらドン引きされるかもね』


『だからこうして聞いてるんだよ』


『最初は何をあげようとしてたの?』


『ぬいぐるみ、とか指輪とか残るものがいいかなーって』


『それ、絶対にやめてね』


『え、ダメだった?』


『流石にドン引き、キモい』


声のトーンを低くして言う水瀬に、俺の肩は竦む。

色々ネットで調べた結果がこれなのに。そんな引かれるプレゼントなのか?

ぬいぐるみは確かに子供っぽいとは思ったが、指輪は自信があった。


プレゼントをする時に指にはめてあげたりしたら最高にロマンチックだ。

いや……ダメだ。最近起きることがラブコメ過ぎて現実を見れてない。

よく考えると身の丈に合ってなさすぎるだろ……


『だから教えて欲しいんだよ。センスがない俺に』


『加奈が喜びそうなものなんて身近にあるよ?』


『ホントか?』


『うんうん。コンビニにも売ってるやつ』


水瀬の言葉に食いつく俺。


『正方形の箱に入ってて』


『うんうん』


『安いやつだと10個くらい入ってるかな?』


『うんうん……ん?』


『高いと3個くらいしか入ってなくてすぐなくなると思うけど品質は最高』


『おい』


『コンドームっていうやつなんだけど』


『シバくぞ』


やはりこいつに聞いた俺がバカだった。

誰が一か月記念にコンドームなんかをプレゼントするかよ。だったら高級な大人用玩具とかに……って、ダメだ。俺までおかしくなってる。


やはり、一人で悩んで決めるしかないか。それか彼女持ちの友人に助けを求めるか。

一番加奈のことを知っている人間がこれじゃ話にならないもんな。


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